くるみの栄養と効果効能・調理法・保存法
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くるみの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、くるみに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
くるみとは
くるみは、クルミ科クルミ属の木。一般的に私たちが口にするくるみは、その核果の種子を加工したものです。漢字では「胡桃」、英語では「Walnut(複数形で「ウォールナッツ」)」と表記します。
くるみの歴史は古く、紀元前7,000年頃から食べられてきました。原産地はイランで、地中海を渡ってヨーロッパに伝わり、中国、朝鮮を通じ日本に渡ります。
くるみの世界的な生産地は、アメリカのカリフォルニア州と中国。日本に輸入されるくるみはこの二国で作られたものです。次いでトルコ、フランス、インドと続きます。日本国内では、長野県や東北地方で栽培されています。
スーパーなど店頭には1年中並びますが、旬は9〜10月の秋の時期です。輸入されるくるみはほとんどがローストされた状態ですが、生のくるみも出回っています。
くるみの品種・種類
くるみの主要な品種・種類について解説します。
オニグルミ(和グルミ)
オニグルミは日本原産のくるみで、和グルミとも呼ばれます。梅干しの種よりも堅い殻、1個あたりの重さが約10gと小ぶりなサイズ、そして実が少ないのが特徴です。
西洋グルミに比べて油分が少ないため、コクはありつつもしつこくない味わいがあります。
ペルシャグルミ(西洋グルミ)
ペルシャグルミはヨーロッパ東南部や西洋アジアを原産とするくるみで、西洋グルミとも呼ばれます。日本には明治はじめにアメリカより導入され、栽培が始まりました。
殻はオニグルミに比べて非常に薄く、割りやすいのが特徴です。実の大きさにはばらつきがあります。
テウチグルミ(カシグルミ)
テウチグルミは、中国が原産地のくるみです。ペルシャグルミの変種と言われています。
テウチグルミの栽培は江戸時代から始まったとされており、現在では長野県や東北地方で栽培されています。
くるみに含まれる成分・栄養素
くるみ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
参考までに、アーモンドの成分表を並記しています。
食品名 | 単位 | くるみ いり | アーモンド いり 無塩 |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 674 | 608 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 2820 | 2542 |
水 分 | g/100 g | 3.1 | 1.8 |
たんぱく質 | g/100 g | 14.6 | 20.3 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 13.1 | -19 |
脂 質 | g/100 g | 68.8 | 54.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 70.5 | -54.2 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 6.87 | -4.13 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 10.26 | -35.09 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 50.28 | -12.65 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | - |
炭水化物 | g/100 g | 11.7 | 20.7 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 2.8 | -5.9 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.6 | 1.1 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 6.9 | 10 |
食物繊維総量 | g/100 g | 7.5 | 11 |
灰 分 | g/100 g | 1.8 | 3.1 |
ナトリウム | mg/100 g | 4 | Tr |
カリウム | mg/100 g | 540 | 740 |
カルシウム | mg/100 g | 85 | 260 |
マグネシウム | mg/100 g | 150 | 310 |
リン | mg/100 g | 280 | 480 |
鉄 | mg/100 g | 2.6 | 3.7 |
亜鉛 | mg/100 g | 2.6 | 3.7 |
銅 | mg/100 g | 1.21 | 1.19 |
マンガン | mg/100 g | 3.44 | 2.46 |
ヨウ素 | µg/100 g | - | - |
セレン | µg/100 g | - | - |
クロム | µg/100 g | - | - |
モリブデン | µg/100 g | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | - | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | - | 7 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | - | 2 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 23 | 9 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 2 | 1 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 1.2 | 28.8 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0.3 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 23.6 | 0.7 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 2.6 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 7 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.26 | 0.03 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.15 | 1.04 |
ナイアシン | mg/100 g | 1 | 3.9 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.49 | 0.08 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 91 | 48 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.67 | 0.26 |
ビオチン | µg/100 g | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - |
重量変化率 | % | - | 96 |
備考 | 廃棄率: 殻つきの場合 55 % |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
くるみの効果・効能
くるみに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
オメガ3(不飽和脂肪酸):悪玉コレステロール値を下げる
くるみは、ナッツの中で最も多くオメガ3脂肪酸を含んでいます。オメガ3は体内で合成することができない必須脂肪酸で、不足すると皮膚炎などを発症する恐れがある栄養素です。
オメガ3を摂取することで、悪玉コレステロール値や中性脂肪値を下げたり、血管を若々しく保ったり、糖尿病や肥満、がんなどの生活習慣病を予防したり、といった効果が期待できます。
葉酸:胎児の発育リスクを予防
葉酸は水溶性ビタミンで、ビタミンB群の1種です。ビタミン12とともに赤血球を作ることから「造血のビタミン」と呼ばれています。
葉酸には、DNAの形成に関わる物質SAM(S-アデノシルメチオン)を増やして胎児の発育リスクを予防するという効果があるため、妊娠中の方は特に積極的に摂取したい成分です。
さらに、心不全・心筋梗塞・脳梗塞・認知症などの病気を予防する効果も期待できます。
トリプトファン:自律神経の調整・睡眠の質の向上
トリプトファンは、人が体内で作り出すことができない必須アミノ酸の1種です。人の感情や睡眠に深く関係する脳内物質「セロトニン」は、トリプトファンが代謝される過程で分泌されます。
トリプトファンを摂取することでセロトニンを作り出し、自律神経を整えたり、ストレスを軽減させたり、睡眠の質を高めたりといった効果が期待できます。
食物繊維:便秘の予防・改善
くるみに多く含まれている不溶性食物繊維は、便のかさを増やして腸を刺激し、便秘を予防・改善する効果があります。
また、消化に時間がかかるため満腹感を得やすく、食べすぎ防止も期待できます。
ポリフェノール:生活習慣病の予防
くるみに含まれるポリフェノールは、強い抗酸化作用のある成分です。
抗酸化作用により、活性酸素の発生を抑制し、動脈硬化やがんなどの生活習慣病を予防したり、細胞が酸化してさびつくのを防いで美肌づくりを促進したり、といった効果が期待できます。
ミネラル:骨を丈夫に形成する・貧血予防・免疫システムを正常に機能させる
くるみには、マグネシウム・銅・亜鉛などの必須ミネラルが豊富に含まれています。
マグネシウムは丈夫な骨を形成したり、血流を整えて高血圧を予防したり、精神を安定させる働きがある栄養素です。銅はヘモグロビンの合成に必須のミネラルで、貧血予防に効果があります。
亜鉛は、免疫システムを正常に機能させる、皮膚や粘膜を正常に保つ、味覚と嗅覚を正常に機能させるといった効果があります。
くるみの食べ方
くるみの栄養素を損なわない調理方法や食べ方などを解説します。
生のくるみの調理方法
あまり一般的ではありませんが、くるみは生で食べることも可能です。
ただし生のくるみには、タンパク質の消化を妨げる酵素抑制物質が含まれており、これを取り除くために、殻を剥いた状態でボウルに張った水に2時間程度浸けておく必要があります。
この手順を「浸水(ソーク)」といいます。時間が経つと、水が黄色や茶色に変わってくるので、これが酵素抑制物質が中和されたサインです。
くるみの摂取目安量と食べる際の注意点
くるみの1日の摂取量の目安はひとつかみ(およそ7粒・28g)です。
くるみは基本的にいつ食べても問題がありませんが、消化に時間がかかるため寝る直前は控えるようにしましょう。
また、素焼きではなく塩や砂糖が添加された加工品は、食べ過ぎると塩分過多、カロリーオーバーになる危険性があるため、食べる量には注意が必要です。
またくるみには不溶性食物繊維が豊富に含まれているため、食べ過ぎると便がかたくなり、便秘が悪化してしまう恐れがあります。
また、約7割が脂質でできているため、過度に食べると吹き出物や肌荒れを引き起こします。
くるみの保存方法
くるみの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存:1ヵ月
冷蔵保存する場合は、くるみが酸化しないようにしっかりと袋の空気を抜いて、密閉できる袋に入れて冷蔵庫で保存します。
保存期間は1ヶ月ですが、ローストされた状態のくるみは脂質が酸化しやすいため、できる限り早めに食べ切るようにしましょう。
冷凍保存:1ヵ月
冷凍する場合も冷蔵保存と同様で、くるみを入れた冷凍用保存袋の中の空気を抜いた後、ほかの食材に匂い移りを防ぐために、大きめの袋で二重にしてから冷凍庫へ入れます。
冷凍での保存期間は約1ヶ月です。