かぶの栄養と効果効能・調理法・保存法
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かぶの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、かぶに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
かぶとは
かぶ(蕪)は、丸く太る根が特徴の、アブラナ科アブラナ属の野菜です。かぶの葉は、春の七草の一つ「スズナ」として、日本人には古くから親しまれてきました。「かぶら」「かぶな」と呼ばれることもあります。
10月~12月ごろが旬の秋冬の野菜で、千葉県や埼玉県が名産地です。
原産地は、アフガニスタンや地中海沿岸と考えられています。世界中でさまざまな品種が栽培されていますが、西洋かぶはターニップ(Turnip)と呼ばれ、スープなどによく用いられています。
消化酵素のアミラーゼをはじめ、ミネラル・ビタミン・食物繊維などが多く含まれる栄養豊富な食材です。妊娠中の女性にうれしい鉄や葉酸も含んでいます。
根の部分を食べるイメージが強いかぶですが、葉にもビタミンやβカロテンなどの栄養素が多く含まれています。葉付きのかぶを手に入れたら、捨てずに食べてみてください。
かぶの品種・種類
かぶには非常に多くの品種があり、全国各地で伝統野菜として栽培されてきたものもあります。代表的な品種をピックアップし、味や見た目の特徴を紹介します。
小かぶ
直径5~8cmほどの白く丸いかぶは、小かぶに分類されます。「金町小かぶ」や「みやま小かぶ」が有名です。
皮が柔らかく、皮ごとおいしく食べられるのが特徴。漬物や煮物など、あらゆる料理に使いやすい小ぶりなかぶです。
中かぶ・大かぶ
中かぶは直径7~14cmほど、大かぶは直径15cm以上のかぶです。
果肉の食感はなめらかですが、大きなかぶは繊維質が多く表皮は硬い傾向があります。そのため、基本的には皮を剥いてから調理します。
聖護院かぶ
聖護院(しょうごいん)かぶは、京都など関西地方を中心に栽培されている、京野菜の一種です。
1個当たり2~5kgほどと重量感のある大きなかぶで、主に京都の特産品「千枚漬け」の材料に使われています。
赤かぶ
赤かぶにはさまざまな品種があり、皮・果肉・茎・葉などが赤~赤紫色のものを総称しています。漬物にしたり、生のまま食べることの多いかぶです。
滋賀県の「万木(ゆるぎ)かぶ」、山形県の「温海(あつみ)かぶ」、長崎県の「長崎赤かぶ」などがあります。
黄かぶ
黄かぶは、皮と果肉が黄色いかぶで、ターニップ(西洋かぶ)の一種。根は直径6~7㎝ほどで、小かぶと同じくらいのサイズです。
ほんのり甘くホクホクとした食感が特徴で、シチューやスープなど煮込み料理の具材としてよく使われます。
あやめ雪かぶ
あやめ雪かぶは、根の上部が紫色なのに対し下半分が白いグラデーションカラーで、見た目も美しい品種です。
果肉が柔らかく食べやすいため、甘酢漬けなどの漬物やサラダに最適。強い甘みもあります。
日野菜
日野菜(ひの菜・ひのな)は、大根のような細長い形をした滋賀の伝統野菜です。根の部分の長さは20~25cmほど。地上に出ている部分は赤紫色で、地中の部分は白くなっています。
独特の辛味とパリッとした硬めの食感が特徴で、さくら漬けなどの漬物によく利用されます。
かぶに含まれる成分・栄養素
かぶ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | かぶ 葉 生 | かぶ 葉 ゆで | かぶ 根 皮つき 生 | かぶ 根 皮つき ゆで | かぶ 根 皮むき 生 | かぶ 根 皮むき ゆで | 塩漬 | ぬかみそ漬 |
廃 棄 率 | % | 30 | 30 | 9 | 0 | 15 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 20 | 22 | 20 | 21 | 21 | 22 | 23 | 28 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 84 | 92 | 84 | 88 | 88 | 92 | 96 | 117 |
水 分 | g/100 g | 92.3 | 92.2 | 93.9 | 93.8 | 93.9 | 93.7 | 90.5 | 89.5 |
たんぱく質 | g/100 g | 2.3 | 2.3 | 0.7 | 0.7 | 0.6 | 0.6 | 1 | 1.5 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | -2 | -2 | 0.6 | -0.6 | 0.5 | -0.5 | -0.8 | - |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.2 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | - |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.02 | - |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | (Tr) | (Tr) | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 | - |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.04 | -0.04 | -0.05 | -0.05 | -0.05 | -0.05 | -0.1 | - |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 3.9 | 4.4 | 4.6 | 4.7 | 4.8 | 5 | 4.9 | 5.9 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | - | 3 | -3.1 | 3.5 | -3.6 | - | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.3 | 0.5 | 0.3 | 0.5 | 0.3 | 0.5 | 0.5 | 0.5 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 2.6 | 3.2 | 1.2 | 1.3 | 1.1 | 1.2 | 1.4 | 1.5 |
食物繊維総量 | g/100 g | 2.9 | 3.7 | 1.5 | 1.8 | 1.4 | 1.7 | 1.9 | 2 |
灰 分 | g/100 g | 1.4 | 0.9 | 0.6 | 0.6 | 0.5 | 0.5 | 3.4 | 3 |
ナトリウム | mg/100 g | 24 | 18 | 5 | 6 | 5 | 4 | 1100 | 860 |
カリウム | mg/100 g | 330 | 180 | 280 | 310 | 250 | 250 | 310 | 500 |
カルシウム | mg/100 g | 250 | 190 | 24 | 28 | 24 | 28 | 48 | 57 |
マグネシウム | mg/100 g | 25 | 14 | 8 | 10 | 8 | 9 | 11 | 29 |
リン | mg/100 g | 42 | 47 | 28 | 32 | 25 | 26 | 36 | 44 |
鉄 | mg/100 g | 2.1 | 1.5 | 0.3 | 0.3 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.3 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.3 | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.2 |
銅 | mg/100 g | 0.1 | 0.08 | 0.03 | 0.03 | 0.03 | 0.02 | 0.03 | 0.04 |
マンガン | mg/100 g | 0.64 | 0.41 | 0.06 | 0.07 | 0.05 | - | 0.05 | 0.09 |
ヨウ素 | µg/100 g | 6 | - | - | - | 0 | - | - | - |
セレン | µg/100 g | 3 | - | - | - | 0 | - | - | - |
クロム | µg/100 g | 2 | - | - | - | 0 | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 16 | - | - | - | 1 | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 2800 | 3200 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 41 | 46 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 2800 | 3200 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 230 | 270 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 3.1 | 3.3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 340 | 370 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.08 | 0.02 | 0.03 | 0.03 | 0.03 | 0.03 | 0.02 | 0.25 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.16 | 0.05 | 0.03 | 0.03 | 0.03 | 0.03 | 0.03 | 0.04 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.9 | 0.2 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | 0.5 | 0.7 | 2.8 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.16 | 0.14 | 0.08 | 0.05 | 0.07 | 0.06 | 0.08 | 0.19 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 110 | 66 | 48 | 49 | 49 | 56 | 48 | 74 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.36 | 0.24 | 0.25 | 0.22 | 0.23 | 0.21 | 0.39 | 0.46 |
ビオチン | µg/100 g | 2.7 | - | - | - | 1 | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 82 | 47 | 19 | 16 | 18 | 16 | 19 | 28 |
食塩相当量 | g/100 g | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2.8 | 2.2 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | Tr | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | 0.1 | - | 0 | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 93 | - | 87 | - | 89 | 80 | 77 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
かぶの効果・効能
かぶに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
胃もたれや胸焼けを解消するアミラーゼ
かぶに多く含まれる消化酵素のアミラーゼ(ジアスターゼ)は、でんぷんやグリコーゲンの消化を助け、胃もたれや胸焼けを防ぎます。大根や長芋にも豊富な栄養素です。
ただし、加熱に弱いので、消化器官の調子を整えたいときは、かぶを生のまま食べるのがおすすめ。柔らかいかぶならサラダとして食べられますし、大根のようにすりおろして食べることもできます。
カリウムで高血圧の改善・予防
かぶは、カルシウム・マグネシウム・カリウムなどの必須ミネラル類がたっぷり含まれている野菜です。
なかでも、高血圧や脳卒中の予防に効果的と言われているカリウムが特に豊富なのがポイント。カリウムにはナトリウムを体外に出す働きがあり、塩分の摂りすぎが一因となる疾患の予防に効果があると考えられています。
かぶには、根・葉どちらにも多くのカリウムが含まれています。塩分の摂取量が気になるときは、かぶを丸ごと食べてみてください。
妊婦にうれしい葉酸・鉄などの栄養素
かぶには、妊娠中にしっかりと摂取しておきたい、葉酸・鉄・ビタミンB12などの栄養素が豊富に含まれているのも特徴です。
葉酸は血を作るビタミンとも言われており、健康な胎児の発育に大切な成分です。鉄は不足すると貧血を引き起こし、妊娠中には通常時と比べて約2倍の摂取目安量が推奨されています。
葉酸や鉄は、かぶの葉と根どちらにも含まれていますが、特に葉に豊富に含まれています。
ビタミンCなど抗酸化物質が豊富なかぶの葉
かぶの葉には、ビタミンC・β-カロテンなどの抗酸化物質をはじめとした、さまざまな栄養素がたっぷりと含まれています。
ビタミンCは、野菜やフルーツに多い水溶性の栄養素で、強い抗酸化作用を持っています。アンチエイジング・美肌作用・免疫力アップなどさまざまな効果が期待できます。
かぶの葉に含まれるビタミンCの量は、根の約2倍と豊富。ほか、βカロテン・カルシウム・カリウム・葉酸なども含有しているので、葉も捨てずに食べるようにしましょう。
かぶの食べ方
かぶの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
かぶの洗い方
茎の付け根の部分は、泥やゴミなどの汚れがたまりやすいため念入りに洗いましょう。
流水で洗うだけでは取り切れないことも多いので、水をはったボウルにかぶを泳がせ、汚れを浮かせるときれいになります。それでも取れない汚れは、竹串など細いものを使って掻きだしましょう。
かぶの調理方法
かぶは、サラダ・漬物・煮物・炒め物・スープなど、あらゆる料理に使える便利な根菜です。
加熱する場合は蒸すのがおすすめ。蒸し加熱したかぶの甘み・柔らかさは、そのほかの加熱方法より優れているという研究結果も出ています。
かぶは串切りにして、蒸し器や電子レンジで蒸すことができます。蒸したかぶは、味噌やマヨネーズなどの調味料ともよく合います。
かぶの食べ方
葉・茎・根すべての部分に栄養素が豊富な野菜なので、なるべく丸ごと食べられるレシピにアレンジしましょう。サラダや漬物、スープが簡単に作れて、料理が苦手な方にも向いています。
食べきれないかぶの葉は細かく切り、醤油・砂糖・酒などの調味料と煮詰めて常備菜にしておくこともできます。
かぶを調理する際の注意点
かぶに含まれるアミラーゼは消化を助けてくれる栄養素ですが、加熱すると効力が弱まってしまいます。
そのため、胃の調子が気になるときは、かぶを生のまま食べるのがおすすめです。柔らかく新鮮なかぶは、薄切りにしてサラダとして楽しむことができます。
かぶを食べる際の注意点
小さなサイズのかぶは皮ごと食べられますが、大かぶの多くは繊維質で硬い皮をもっているため、そのままではおいしく食べられない可能性があります。
そのため、皮の硬い大かぶを食べる際は、調理前に皮を剥いておきましょう。皮を剥くことで、舌触りが良くなり食べやすくなります。なお皮が剥きづらい場合は、根の先端から茎へむかって剥くか、先に等分にしておくと良いでしょう。
かぶの保存方法
かぶの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
葉が付いたままにしておくと水分が抜けやすくなるので、かぶを購入したらすぐに葉と根を切り分けるようにします。
切り離した根は、ポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保管してください。長期保存したい場合は、漬物にしたり干すこともできます。
葉は傷みやすいのですぐに調理するのがベターですが、水で濡らした新聞紙に包んでポリ袋に入れておけば、冷蔵庫で数日なら保存できます。
かぶを冷凍する場合、葉・根ともに塩ゆでしてから冷凍すると日持ちし、凍ったままの状態で料理に使えて便利です。