キヌアの栄養と効果効能・調理法・保存法

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キヌア

キヌアの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、キヌアに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

キヌアとは

キヌアはヒユ科アカザ亜科アカザ属の植物で、直径2mm程度の疑似穀類(擬穀物)です。健康効果の高い栄養素を豊富に含む、スーパーフードの代表格としても知られています。

キヌアの原産地は、南米のコロンビアからボリビアにかけてのアンデス山脈一帯。

人類との歴史は古く、紀元前7,000〜5,000年頃には現地の人が自然に生えている野生種のキヌアを食べ、紀元前4,000〜3,000年頃には栽培が始まったとされています。

たんぱく質・ミネラル・脂質・食物繊維が豊富で、必須アミノ酸9種類を全て含むキヌアは、「穀物の母」と呼ばれ、インカ帝国の重要な食料として食されていました。

それから約5,000年後の1993年、NASA(アメリカ航空宇宙局)のレポートで、「ある食物だけで、人間に必要なすべての栄養素を摂取することは不可能。だがキヌアなら、それが可能かもしれない」と発表され、再び注目を集めることに。

また、キヌアは水を含むと膨張しやすい特徴があり、少量でも満腹感が得られます。

白米を食べるよりもお腹いっぱいになりやすいので、食べすぎ防止に繋がり、ダイエットや美容にも効果的です。

キヌアの品種・種類

キヌアの種子は、品種によって赤・白・黒など異なる色をしています。色の違いによる栄養素の差はありませんが、食感や風味にわずかな違いがあります。

赤いキヌア

赤いキヌアは白いキヌアと比べると噛みごたえがあるため、料理に食感のアクセントを加えたいときに選ぶと良いでしょう。

鮮やかな赤色を彩りに活かして、デザートに用いる方法もあります。

白いキヌア

白いキヌアは、ほかの品種に比べて控えめな苦味と柔らかい食感が特徴です。

白米に混ぜて炊いたり、スープや煮込み料理に入れても味を変えずに楽しむことができます。

黒いキヌア

黒いキヌアは赤いキヌアと同様、噛みごたえがあります。

揚げ物の衣に混ぜると、食感だけでなく色合いまで楽しむことができます。

キヌアに含まれる成分・栄養素

キヌア100gに含まれる栄養素は、下記表の通りです。

食品名単位キヌア 玄穀
エネルギー(kcal)kcal/100 g359
水 分g/100 g12.2
たんぱく質g/100 g13.4
脂 質g/100 g3.2
トリアシルグリセロール当量g/100 g2.7
飽和脂肪酸g/100 g0.33
一価不飽和脂肪酸g/100 g0.77
多価不飽和脂肪酸g/100 g1.52
炭水化物g/100 g69
水溶性食物繊維g/100 g1.5
不溶性食物繊維g/100 g4.7
食物繊維総量g/100 g6.2
ナトリウムmg/100 g35
カリウムmg/100 g580
カルシウムmg/100 g46
マグネシウムmg/100 g180
リンmg/100 g410
mg/100 g4.3
亜鉛mg/100 g2.8
mg/100 g0.47
マンガンmg/100 g2.45
ヨウ素µg/100 g2
セレンµg/100 g3
クロムµg/100 g3
モリブデンµg/100 g23
β-カロテン当量µg/100 g12
ビタミンDµg/100 g0
α-トコフェロール(ビタミンE)mg/100 g2.6
β-トコフェロール(ビタミンE)mg/100 g0.1
γ-トコフェロール(ビタミンE)mg/100 g4
δ-トコフェロール(ビタミンE)mg/100 g0.1
ビタミンKµg/100 gTr
ビタミンB1mg/100 g0.45
ビタミンB2mg/100 g0.24
ナイアシン当量mg/100 g3.9
ビタミンB6mg/100 g0.39
ビタミンB12µg/100 gTr
葉酸µg/100 g190
パントテン酸mg/100 g0.95
ビオチンµg/100 g23.1
ビタミンCmg/100 g0
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

キヌアの効果・効能

キヌアに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

たんぱく質:肝機能や神経機能の向上や身体組織修復に効果的

体を健全な状態に維持するうえで大切な栄養素であるたんぱく質は、約20種類のアミノ酸から構成されています。

そのうち9種類のアミノ酸は人間の体では作ることができず、この9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼びます。

植物性食品は、9種類のアミノ酸を含んでいてもバランスが悪いことが多いのですが、キヌアは9種類すべての必須アミノ酸をバランス良く含んでいる点が優れています。

必須アミノ酸は、肝機能の改善や向上・神経機能補助・血糖コントロール・身体組織修復・鎮痛作用・幸せホルモン「セロトニン」の材料となり心のバランスを取る・貧血の予防など、心身の健康にさまざまな効果があります。

カルシウム:丈夫な骨を作る

キヌアには、カルシウムが豊富に含まれています。

火を通して食べられる状態にしたキヌア100gと同量の白米を比較すると、白米に含まれるカルシウムが5mgであるのに対しキヌアは47mgと、およそ10倍近い差があります。

カルシウムには、骨や歯を作る主成分となるほか、筋肉の収縮を助けたり、血液の凝固作用を促したり、精神を安定させたりと、心身に大切な働きがいくつもあります。

植物性エストロゲン:更年期障害や乳がんのリスクを軽減する

植物性エストロゲンとは、大豆に含まれているイソフラボンと同じ成分で、女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをする成分です。

エストロゲンが減少してしまうと、更年期障害・骨粗鬆症・動脈硬化・乳がんなどのリスクが高くなってしまうため、植物性エストロゲンを豊富に含むキヌアは、これらの発症リスクを軽減する効果が期待できます。

水性・不溶性食物繊維:便秘解消に効果的

キヌアに豊富に含まれている不溶性食物繊維には、水分を保持し、便のかさをまして排便を促す働きがあります。

また、腸を刺激して便秘を予防したり、腸内に発生した毒素の排出を促進する水溶性食物繊維もバランス良く含まれているため、キヌアは便秘解消に効果的な食材です。

キヌアとアマランサスの違い・栄養素の比較

キヌアによく似た食品として、アマランサス(アマランス)という植物があります。

アマランサスはキヌアと同じ疑似穀類で、さまざまな栄養を豊富に含んでいることから、スーパーフードの一種としてキヌアと同じく近年注目を集めています。

キヌアとアマランサスを栄養面で比較すると、カロリーや脂質、食物繊維やたんぱく質もほぼ同量です。

しかしビタミンはキヌアの方が多く、なかでも胎児の神経管の形成において重要な葉酸が豊富。1日1食(100g)食べるだけで、妊婦の葉酸推奨必要量である400μgのうち、半分の量を摂取することができます。

キヌアとチアシードの違い・栄養素の比較

キヌアと同じスーパーフードとして注目のチアシードは、1mm程度のゴマのような見た目をしており、水に漬けるとゲル状に10倍以上に膨らみます。

キアヌもチアシードも、食物繊維やたんぱく質、抗酸化物質を豊富に含んでいる点は同様です。

カルシウム・鉄・マグネシウム・マンガン・亜鉛などミネラルを比較すると、チアシードの方がより多く含んでおり、大さじで1〜2杯食べるだけで1日に必要な分量を摂取することができるでしょう。

キヌアの調理方法

キヌアの栄養素を損なわない洗い方や調理方法を解説します。

キヌアの洗い方

まず、キヌアをボウルか網目の細かいザルに入れて水洗いします。

キヌアの表面には「サポニン」という成分が付着しています。これは虫が嫌がる成分で、本来は天然の防虫剤としての役割をしています。

口に入れても体に害はありませんが、これを洗い流さないと苦味を感じてしまいます。キヌアは洗うとサポニンが泡立ってくるので、この泡がなくなるまで丁寧に洗ってください。

もし水洗いが面倒だと感じる場合は、すでにサポニンが洗浄された状態で販売されているキヌアがあるので、そちらを使いましょう。

キヌアのおすすめの食べ方

キヌアはお米の代わりに主食として食べることができます。

キヌアをそのまま炊き上げたり、お米に混ぜて炊き上げたり、リゾットにしたりすることで、栄養価が高く少量で腹持ちの良いダイエットメニューになります。

また主食以外にも、茹でたキヌアをサラダや揚げ物の衣に混ぜたり、スープや煮込み料理、パンケーキに混ぜてもおいしく食べることができます。

キヌアの炊き方

キヌアの炊き方として一番手軽なのは、炊飯器を使う方法です。

炊飯器にキヌアと同量の水(キヌア2合に対し水2合)を加えて炊飯スイッチを押すだけ。このときに、料理酒大さじ1を加えると、柔らかく食べやすい食感に仕上がります。

米と一緒に炊く場合は、お米3に対しキヌア1の比率にすることでバランス良く炊き上がります。

また、フライパンで炊く方法もあります。

まずオリーブオイルをフライパンで温めて、キヌアを入れて軽く混ぜ合わせます。炒めすぎると焦げて苦くなってしまいますので注意してください。

オリーブオイルとキヌアを混ぜ合わせたら、キヌア1に対して水2を加えて沸騰させます。

沸騰したら火を弱火にして蓋をし、約15分加熱。火を止めたら蓋はそのままにして、約5分蒸らします。その後は水気を切って完成です。

キヌアの茹で方

キヌアを茹でる場合は、まず水を張った鍋にキヌアを塩をひとつまみ入れます。

火をかけて沸騰したら弱火にし、約15分加熱してください。茹で上がったら味見をし、固いと感じるようなら蓋をして蒸らします。

キヌアの保存方法

最後に、キヌアの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

キヌアは未開封であれば、冷暗所もしくは冷蔵庫での保存が可能です。パッケージに記載されている賞味期限以内に食べきるようにしましょう。

キヌアは栄養価が高い穀物なので、虫が寄ってくる可能性があります。もしなかなか使い切れない場合は、炊いたり茹でたりしてから保存するのが良いでしょう。

炊いた後・茹でた後の保存には、冷蔵と冷凍の2つの方法があります。

白米と同じように、炊いたキヌアを一食ずつラップに包んで、冷蔵庫・冷凍庫に入れます。冷蔵は2〜3日、冷凍は2〜3週間保存することができます。

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