梨の栄養と効果効能・調理法・保存法
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梨の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、梨に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
梨とは
梨はバラ科ナシ属の木になる果実。英語では「pear」といいます。梨全体の約90%は水分でできています。
原産国は中国と言われており、日本には弥生時代に伝えられました。梨には大きく分けて東洋系(日本梨と中国梨)と西洋系(西洋梨)があり、古代からヨーロッパで栽培されていた西洋梨が日本に伝わってきたのは明治時代です。
梨の旬は、品種によって異なります。早生種は7月ごろから出回り、晩生種は12月ごろまで出回り、最盛期は8〜10月です。国内では主に千葉県、茨城県、福島県、茨城県などで生産されています。
梨の品種・種類
日本国内で一般的に市販されている日本梨は、果皮の色によって「赤梨」と「青梨」の2種類に分けられます。以下では、それぞれの代表的な品種を紹介します。
赤梨:果皮の色が黄褐色
赤梨は、果皮の色が黄褐色をしているのが特徴です。
幸水(こうすい):たっぷりの果汁、柔らかい果肉、強い甘み
幸水は、日本梨の約40%を占める人気の品種です。大きさは250~300gで扁円形をしており、お尻の部分がへこんでいます。
果汁がたっぷりで甘みが強く、果肉に柔らかさがあるのが特徴です。7〜9月に旬を迎えます。
豊水(ほうすい):甘みと酸味のバランスが良い
豊水は、300~400gほどの比較的大きな品種です。
柔らかい果肉とたっぷりの果汁、甘みの中にある酸味が特徴で、幸水に比べて日持ちします。収穫時期は8月下旬〜9月上旬、出荷時期は9月上旬〜同月下旬です。
新高(にいたか):大ぶりで上品な甘みと香り
新高は、サイズが450~500gと大型の品種です。
みずみずしい触感、豊かな風味、少なめの酸味が特徴。上品な香りと甘みがあり、「梨の王様」と呼ばれています。贈答品としても利用される梨です。
青梨:果皮の色が淡い黄緑色
青梨は、果皮が淡い黄緑色をしています。
二十世紀:シャリシャリとした食感がある
二十世紀は、鳥取県のブランド梨として有名な品種です。大きさは約300gで、整った丸い形をしています。
果汁が多く、シャリシャリとした食感、バランスの良い甘みと酸味が特徴です。旬は9月上旬〜同月下旬です。
梨に含まれる成分・栄養素
梨100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | 日本なし 生 | 日本なし 缶詰 | 中国なし 生 | 西洋なし 生 | 西洋なし 缶詰 |
廃 棄 率 | % | 15 | 0 | 15 | 15 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 43 | 78 | 47 | 54 | 85 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 180 | 326 | 197 | 226 | 356 |
水 分 | g/100 g | 88 | 80.5 | 86.8 | 84.9 | 78.8 |
たんぱく質 | g/100 g | 0.3 | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.2 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 0.2 | - | -0.1 | -0.2 | - |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.02 | -0.02 | -0.02 | -0.06 | -0.02 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.02 | -0.02 | -0.02 | -0.07 | -0.02 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 11.3 | 19.1 | 12.7 | 14.4 | 20.7 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 8.3 | - | - | -9.2 | -16.7 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.3 | 0.7 | 0.4 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0.7 | 0.6 | 1.1 | 1.2 | 0.6 |
食物繊維総量 | g/100 g | 0.9 | 0.7 | 1.4 | 1.9 | 1 |
灰 分 | g/100 g | 0.3 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.2 |
ナトリウム | mg/100 g | Tr | 4 | 1 | Tr | 1 |
カリウム | mg/100 g | 140 | 75 | 140 | 140 | 55 |
カルシウム | mg/100 g | 2 | 3 | 2 | 5 | 4 |
マグネシウム | mg/100 g | 5 | 4 | 5 | 4 | 4 |
リン | mg/100 g | 11 | 6 | 8 | 13 | 5 |
鉄 | mg/100 g | 0 | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | Tr | 0.1 | 0.1 |
銅 | mg/100 g | 0.06 | 0.04 | 0.05 | 0.12 | 0.05 |
マンガン | mg/100 g | 0.04 | 0.02 | 0.03 | 0.04 | 0.03 |
ヨウ素 | µg/100 g | 0 | - | - | 0 | - |
セレン | µg/100 g | 0 | - | - | 0 | - |
クロム | µg/100 g | 0 | - | - | 0 | - |
モリブデン | µg/100 g | Tr | - | - | 1 | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | - | - | 0 | - |
β-カロテン | µg/100 g | 0 | - | - | 0 | - |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 | - | - | 0 | - |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.2 |
β-トコフェロール | mg/100 g | Tr | 0 | Tr | Tr | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.02 | Tr | 0.02 | 0.02 | 0.01 |
ビタミンB2 | mg/100 g | Tr | 0 | 0.01 | 0.01 | 0.02 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0.2 | 0.3 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.01 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 6 | 3 | 6 | 4 | 4 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.14 | 0 | 0.14 | 0.09 | 0 |
ビオチン | µg/100 g | 0.5 | - | - | 0.3 | - |
ビタミンC | mg/100 g | 3 | 0 | 6 | 3 | Tr |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - | - |
備考 | 廃棄部位: 果皮及び果しん部 | 試料: ヘビーシラップ漬液汁を含んだもの (液汁 40 % )ビタミンC: 酸化防止用として添加品あり | 廃棄部位: 果皮及び果しん部 | 別名: 洋なし廃棄部位: 果皮及び果しん部 | 別名: 洋なし試料: ヘビーシラップ漬液汁を含んだもの (液汁 40 % )ビタミンC: 酸化防止用として添加品あり |
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
梨の効果・効能
梨に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
アスパラギン酸(アミノ酸):疲労回復・体調を整える
「アスパラギン酸」は、アスパラガスから発見されたアミノ酸の一種です。アスパラギン酸は、クエン酸回路に働きかけ、疲労のもとになる乳酸の分解を助けます。
乳酸は筋肉疲労の原因になるだけでなく、大量に蓄積されると冷えや頭痛を引き起こす恐れがあります。
また、アスパラギン酸には体液のバランスを整えて、体調不良を予防する効果もあります。人間の体は約50〜70%が水分でできており、そのうち約2/3が細胞内液、残りの約1/3が細胞外液です。
細胞内液と細胞外液のバランスが整っていれば体調は安定するのですが、日常で受けるストレスや病気によって細胞内のビタミンやミネラルが消費さえると体液のバランスが崩れ、体調不良を引き起こします。
ソルビトール:便秘解消に効果的
梨は、果物のなかでも特にソルビトールの含有量が豊富な果物です。
ソルビトールは糖アルコールの一種で、便を柔らかくする性質があります。そのため便通を促進し、腸内環境を整える効果があります。
カリウム:血圧を下げる、むくみを予防する
梨は、必須ミネラルの1つであるカリウムを豊富に含んでいます。
カリウムは、細胞の浸透圧を調整して血圧を下げる、筋肉や心筋の働きを正常に保つ、体内にある過剰なナトリウム(水分)を排出してむくみを予防する、などのさまざまな効果があります。
カリウムは汗といっしょに流れ出てしまうので、夏の暑い日に汗をかいた時などは、水分補給とともに梨を食べると良いでしょう。
食物繊維(リグニン):便秘を予防・改善する
梨に含まれる難消化性食物繊維のリグニンは、消化されにくい性質を持っています。
腸を刺激してぜん動運動を助ける働きがあり、ソルビトールと同じく便秘の予防や改善に効果があります。リグニンは果肉の細胞に蓄積することで細胞が厚くなり、「石細胞(せきさいぼう)」になります。
梨を食べる際の注意点
梨特有のシャキシャキ感を生んでいる「石細胞」には、腸の動きを刺激して便通を促す効果があるため、梨を食べすぎるとお腹がゆるくなって腹痛や下痢になる可能性があります。
梨の1日の摂取量の目安は、1/2個(200g)です。
梨の保存方法
梨は傷つきやすく、デリケートな果物です。購入後は適切な方法で保存しましょう。梨の風味や栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存:約2週間
梨は常温保存に適していません。保存する場合は、冷蔵するようにしましょう。
まず、乾燥を防ぐためにキッチンペーパーや新聞紙で梨を1個ずつ包みます。キッチンペーパーの上からラップで全体を包み、保存袋に数個まとめて入れます。
ヘタの部分を下、お尻側を上にして、冷蔵庫で保存します。冷蔵での保存期間は約2週間です。
冷凍保存:約1ヶ月
長期保存する場合は、冷凍で保存しましょう。洗った梨をくし切りにして、皮と芯を取り除きます。
数切れをラップの上に並べ、ぴったりと包みます。冷凍用保存袋に入れ、冷凍庫で保存します。冷凍保存なら、約1ヶ月保存することができます。