エリンギの栄養と効果効能・調理法・保存法
6978views
エリンギの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、エリンギに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
エリンギとは
エリンギ(king trumpet mushroom / king oystermushroom)は、ヒラタケ科ヒラタケ属のきのこで、肉厚でコリコリとした食感があり、食べごたえがあるのが特徴です。
エリンギの原産地はヨーロッパ地中海沿岸。ヨーロッパ南部や中央アジアなど広い地域で自生しており、ヨーロッパでは古くから食用として親しまれてきました。
エリンギはエリンギウムというセリ科の植物に生えることから、イタリアでは「エリンギ」と呼ばれ、日本でもその呼び名を使っています。
日本には自生しないきのこで、市場に流通しているエリンギは人工的に栽培されたものです。そのため旬はなく、季節を問わず通年市場に流通しています。
エリンギに含まれる成分・栄養素
エリンギ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
生食・ゆで・焼き・油炒めと各調理状態のエリンギの成分表を並記しています。
食品名 | 単位 | エリンギ 生 | エリンギ ゆで | エリンギ 焼き | エリンギ 油いため |
廃 棄 率 | % | 6 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 19 | 21 | 29 | 55 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 80 | 89 | 120 | 230 |
水 分 | g/100 g | 90.2 | 89.3 | 85.3 | 84.2 |
たんぱく質 | g/100 g | 2.8 | 3.2 | 4.2 | 3.2 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 1.7 | -2 | -2.6 | -2 |
脂 質 | g/100 g | 0.4 | 0.5 | 0.5 | 3.7 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 0.2 | -0.3 | -0.3 | -3.5 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.04 | -0.05 | -0.06 | -0.28 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.04 | -0.05 | -0.05 | -2.03 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.12 | -0.15 | -0.17 | -1 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 6 | 6.5 | 9.1 | 8.1 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 3 | -3.3 | -4.5 | -3.8 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0.2 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 3.2 | 4.7 | 5.2 | 4.1 |
食物繊維総量 | g/100 g | 3.4 | 4.8 | 5.4 | 4.2 |
灰 分 | g/100 g | 0.7 | 0.5 | 1 | 0.8 |
ナトリウム | mg/100 g | 2 | 2 | 3 | 3 |
カリウム | mg/100 g | 340 | 260 | 500 | 380 |
カルシウム | mg/100 g | Tr | Tr | Tr | Tr |
マグネシウム | mg/100 g | 12 | 10 | 17 | 13 |
リン | mg/100 g | 89 | 88 | 130 | 100 |
鉄 | mg/100 g | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 0.3 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.6 | 0.7 | 0.9 | 0.7 |
銅 | mg/100 g | 0.1 | 0.09 | 0.15 | 0.11 |
マンガン | mg/100 g | 0.06 | 0.06 | 0.11 | 0.07 |
ヨウ素 | µg/100 g | 1 | - | - | - |
セレン | µg/100 g | 2 | - | - | - |
クロム | µg/100 g | 0 | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 2 | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 1.2 | 2.6 | 3.1 | 1.4 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | -0.5 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | -1.1 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | (Tr) |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | -4 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.11 | 0.08 | 0.18 | 0.13 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.22 | 0.16 | 0.31 | 0.24 |
ナイアシン | mg/100 g | 6.1 | 4.2 | 9.1 | 6.8 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.14 | 0.1 | 0.17 | 0.13 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 65 | 20 | 53 | 36 |
パントテン酸 | mg/100 g | 1.16 | 1.02 | 1.66 | 1.31 |
ビオチン | µg/100 g | 6.9 | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | 3.3 |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 76 | 65 | 89 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
エリンギの効果・効能
エリンギに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
ビタミンD:骨を丈夫にする・免疫力を高める・心を安定させる
エリンギは、きのこ類の中でも上位に入るビタミンDの含有量を誇ります。
ビタミンDには、カルシウムの効率的な吸収を助け骨を丈夫にする、筋肉機能の維持をサポートし骨粗鬆症のリスクを軽減する、細菌やウィルスを殺す抗菌ペプチドを作り免疫力を高める、脳内物質であるセロトニンの分泌量を増やして心のバランスを整える、などの効果があります。
ビタミンB群:代謝を助ける
エリンギには、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6といったビタミンB群が多く含まれています。ビタミンB群それぞれの効果効能は次の通りです。
ビタミンB1
ビタミンB1はブドウ糖をエネルギーに変換する代謝に必要な栄養素であり、「疲労回復のビタミン」と呼ばれています。
ビタミンB2
ビタミンB2は、口内炎や肌荒れ、ニキビを予防するほか、皮膚・毛髪・爪など全身の発育を促す働きがあり、「発育のビタミン」「成長のビタミン」と呼ばれています。
ビタミンB2が不足すると成長障害を引き起こすため、成長期の子どもや妊娠中の方は十分な摂取が推奨されています。
ビタミンB3(ナイアシン)
ビタミンB3(ナイアシン)は、水溶性のビタミンです。
ビタミンB3を摂取することで、皮膚や粘膜の炎症を防ぐ、アルコールを分解して二日酔いを防ぐ、血行を促進して冷え・頭痛・肩こりを解消する、花粉症などのアレルギー症状を改善する、などさまざまな効果を発揮します。
ビタミンB6
ビタミンB6は、タンパク質の代謝を促して丈夫な皮膚・粘膜・髪・歯・爪の生成を助ける、セロトニンやアドレナリンなどの神経伝達物質の合成に関わり精神を安定させる、赤血球のヘモグロビンの合成に関わり貧血を予防する、コレステロール値を下げて動脈硬化を予防する、などの効果があります。
不溶性食物繊維:便秘の予防と解消
エリンギには、不溶性食物繊維が多く含まれています。不溶性食物繊維は、胃や腸の水分を吸収して便のカサを増やし、腸を刺激することで便秘の予防と解消に役立ちます。
アスパラギン酸:疲労回復・体調不良を予防
アスパラギン酸は、アミノ酸の一種です。
アスパラギン酸には、クエン酸回路に働きかけて疲労のもととなる乳酸が蓄積するのを防ぐ、体内の細胞内液と細胞外液のバランスと調整して体調不良を予防する、身体に有害なアンモニアを体外へ排出することで疲労蓄積や免疫力の低下を予防する、といった効果があります。
カリウム:血圧を下げる・むくみを解消
カリウムは細胞の浸透圧を調整して水分を保持したり、過剰なナトリウムを排出したりする働きがあります。
この働きによって、過剰なナトリウムが原因で引き起こされる高血圧を予防したり、血流の巡りを良くしてむくみを予防したりする効果があります。
また、筋肉や心筋の活動を正常に保つ働きもあります。排便に必要な腹筋や消化に必要な大腸を動かす筋肉を正常に機能させるので、便秘を予防・解消するのに効果的です。
エリンギの食べ方
エリンギの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
エリンギの調理方法
エリンギに含まれるビタミンDは脂溶性の栄養素のため、油で炒めたり、揚げ物にしたり、ドレッシングと一緒に食べたりすると、効率的に摂取することができます。
また、エリンギにはビタミンB1やビタミンB2、ビタミンB6などのビタミンB群が多く含まれています。ビタミンB群は水溶性で水に溶け出す性質を持っているため、ホイル焼きにしたり、汁ごと食べられるスープなどにすると栄養素を無駄なく摂取できるでしょう。
エリンギを調理する際の注意点
エリンギに限らず、きのこ類は水洗いしてしまうと特有の風味が落ちてしまうだけでなく、水気から傷みやすくなってしまいます。
保存する際も調理する際も、水洗いはせず、汚れが気になる部分はキッチンペーパーで優しく拭き取るようにしましょう。
エリンギを食べる際の注意点
エリンギには微量の青酸化合物が含まれています。十分に加熱して食べれば体内の酵素で分解されるため問題ありませんが、加熱が十分でないと食中毒を引き起こす可能性があります。
エリンギの保存方法
エリンギの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
常温保存
エリンギは気温や湿度など、周囲の環境の影響を受けやすいため、常温保存は避け、冷蔵庫や冷凍庫で保存します。
冷蔵保存
冷蔵保存する場合、まず湿気がこもりやすいパックや袋から取り出します。エリンギを数本まとめてキッチンペーパーで包み、ポリ袋や保存袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。
冷蔵保存での保存期間は約1週間です。
冷凍保存
より長持ちさせる保存方法は冷凍です。冷凍保存する場合、まず石づきがあれば切り落とします。調理しやすい大きさにカットして、冷凍用保存袋に入れます。
この時なるべくエリンギ同士が重ならないように詰めることで、バラバラに凍らせることができ、調理がしやすくなります。最後に、冷凍保存袋を平たい状態にして冷凍庫に入れます。
冷凍保存での保存期間は、約1ヶ月です。