かりんの栄養と効果効能・調理法・保存法
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かりんの旬や原産地、含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
かりんとは
かりん(花梨/Chinese quince)はバラ科カリン属の果物です。生のままでは硬くザラザラしており渋みもあるため、美味しく食べることはできません。薬用や香りを楽しむのが主な使い方です。
かりんの原産地は中国で、実は古くから薬用として、花や葉は観賞用として用いられています。日本には平安時代に唐より伝来し、全国各地で庭木として植えられました。「かりん=(お金を)借りん=借金をしない」と考えられ、特に商売人の家では縁起物とされていました。
かりんの旬は10月頃の秋の時期。全国各地で栽培されていますが、最も多く生産しているのは長野県で全体の1/3を締めています。次いで山形県、香川県と続きます。
かりんに含まれる成分・栄養素
かりん100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | かりん 生 |
廃 棄 率 | % | 30 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 68 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 285 |
水 分 | g/100 g | 80.7 |
たんぱく質 | g/100 g | 0.4 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | - |
脂 質 | g/100 g | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | - |
飽和脂肪酸 | g/100 g | - |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | - |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | - |
コレステロール | mg/100 g | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 18.3 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.9 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 8 |
食物繊維総量 | g/100 g | 8.9 |
灰 分 | g/100 g | 0.5 |
ナトリウム | mg/100 g | 2 |
カリウム | mg/100 g | 270 |
カルシウム | mg/100 g | 12 |
マグネシウム | mg/100 g | 12 |
リン | mg/100 g | 17 |
鉄 | mg/100 g | 0.3 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.2 |
銅 | mg/100 g | 0.09 |
マンガン | mg/100 g | 0.05 |
ヨウ素 | µg/100 g | - |
セレン | µg/100 g | - |
クロム | µg/100 g | - |
モリブデン | µg/100 g | - |
レチノール | µg/100 g | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 38 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 200 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 140 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 11 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.6 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.01 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.03 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.3 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.04 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 12 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.31 |
ビオチン | µg/100 g | - |
ビタミンC | mg/100 g | 25 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 |
アルコール | g/100 g | - |
硝酸イオン | g/100 g | - |
テオブロミン | g/100 g | - |
カフェイン | g/100 g | - |
タンニン | g/100 g | - |
ポリフェノール | g/100 g | - |
酢酸 | g/100 g | - |
調理油 | g/100 g | - |
有機酸 | g/100 g | - |
重量変化率 | % | - |
備考 | 廃棄部位: 果皮及び果しん部 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
かりんの効果・効能
かりんに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
アミグダリン
かりんには、アミグダリンという咳止めに良い成分が含まれています。アミグダリンは、体内で分解されてベンズアルデヒドという成分に変わり、ウィルスや細菌が喉の粘膜に入ってきた際に殺菌効果を発揮します。
喉の粘膜を殺菌して保護することによって、炎症を抑えて咳を止める効果が得られるのです。
ポリフェノール
かりんは、タンニンなどのポリフェノールを多く含んでいます。ポリフェノールは強い抗酸化作用があり、活性酸素を除去して動脈硬化・がん・老化・免疫低下などの生活習慣病を予防する効果があります。
また、美容面にも効果的で、紫外線ダメージなどによって生まれた活性酸素を抑制して美肌を保つのに役立ちます。
ビタミンC
ビタミンCは水溶性のビタミンで、骨・皮膚・血管・歯など体のさまざまな部分の構成に必須であるコラーゲンの生成に関わっています。
コラーゲンが生成されることによって、肌にハリを与えてシワを予防したり、傷の治りを早くしたり、毛細血管を丈夫にして壊血病を防いだり、といった効果があります。
また、皮膚のメラニン色素を抑制してシミ・そばかす・日焼けを予防したり、免疫力を高めて風邪や感染症を予防したりするのに効果的です。
カリウム
かりんに含まれるカリウムは、人体に必須のミネラルで、細胞内液の浸透圧を維持したり、調整したり、水分を保持したり、体外に排出したりする働きがあります。
この働きによって、高くなりすぎた血圧を下げて心血管疾患・脳卒中・冠動脈性心疾患などの高血圧を起因とする生活習慣病を予防する効果があります。
心筋の活動を健康に保つ働きもあり、血の巡りを良くして体内にある過剰な水分(ナトリウム)を排出してむくみを予防・改善する効果を発揮する。
食物繊維
かりんにはペクチンという食物繊維が多く含まれています。ペクチンは腸内の有害物質を吸着して便のカサを増やし、腸のぜん動運動を促して体外に排出する働きがあります。
また、腸内の善玉菌である乳酸菌を増やして腸内環境を整え、便秘や下痢の予防や解消に効果を発揮します。
かりんの食べ方
かりんは生のままでは硬く渋みがあるため、ジャムやはちみつ漬け、果実酒などに加工して食べられるのが一般的です。
加工するメリットは、食べやすくするだけではありません。かりんに含まれる咳止め成分アミグダリンには毒性が含まれているため、生で食べると青酸中毒を引き起こす可能性があるのです。
アミグダリンの毒性は、加熱・加糖・アルコール漬けにより分解されるので、加工調理して食べる分には問題ありません。
ただし、アミグダリンは特に種に多く含まれているため、加工したものであっても種は取り除いた方が良いでしょう。
かりんの保存方法
かりんの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
常温保存
生のかりんを常温保存する際は、新聞紙で1つずつ包み、直射日光が当たらない冷暗所で保存します。冷蔵保存する必要はありません。常温での保存期間は3週間〜1ヶ月です。
冷凍保存
冷凍保存する際は、かりんを水でよく洗って皮を剥いて種を取り除きます。冷凍用保存袋に薄く平らになるように入れて、冷凍庫で保存しましょう。
また、加工しやすいようにピューレ状にして冷凍保存することもできます。水洗いしたかりんの皮を剥き、種を取り除いたら、フードプロセッサーなどでピューレ状にしましょう。ピューレ状にしたかりんは、冷凍用保存袋に小分けして冷凍庫で保存します。
冷凍したかりんの保存期間も、3週間〜1ヶ月です。
解凍方法
冷凍したかりんは自然解凍して利用することができます。生のまま冷凍したものは変色しやすいので、そのまま加熱調理に利用するのがおすすめです。
冷凍する前に加熱調理を施しておけば、加熱後に加熱する必要なく、そのままソースなどに利用することができます。