セラミドの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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セラミドの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
セラミドとは
セラミド(ceramide)は、皮膚の表皮においてバリアを形成するうえで重要な役割を果たす、スフィンゴ脂質の一種です。
主に角層(角質層)に存在し、皮膚が保湿バリアや微生物の侵入を防ぐ抗菌バリアといった機能を発揮する上で欠かせない成分であり、乾燥・紫外線・細菌・アレルギー源などの刺激から肌を守ります。
そのため、セラミドの合成障害が生じるとアトピー性皮膚炎などを引き起こす可能性があります。
なお、皮膚の保湿やバリア機能を維持する以外に、細胞の増殖や自律的な死(細胞死、アポトーシス:apoptosis)を制御する細胞間の情報伝達物質としても働くことから、細胞死のメッセンジャー(messengers of cell death)とも呼ばれます。
経皮摂取(肌に塗ることによる摂取)が可能なため、化粧水などの化粧品に配合されていることが多いですが、経口摂取(食品からの摂取)も可能です。
なお、化粧品や健康食品に配合されるセラミドは、セラミドの前段階であるグルコシルセラミド(glucosylceramide)の形態をとります。角層に含まれる計12種のセラミドは、すべてグルコシルセラミドから産生されます。
グルコシルセラミドとは
グルコシルセラミドは、セラミドにグルコース(ブドウ糖)がグリコシル結合したスフィンゴ糖脂質の一種です。
主に、イネ科植物イネの種子から生じる米ぬかや米胚芽などから抽出されますが、米以外にトウモロコシや大豆、こんにゃく、小麦、キノコ類、ビートなどにも含まれています。
グルコシルセラミドは化粧品・健康食品・サプリメントなどの原材料として広く利用されていますが、化学的な構造は原料によって異なります。
なお、セラミドに結合する糖がガラクトースになったものをガラクトシルセラミドと呼びますが、こちらは人体内で脳や腎臓など一部の臓器に含まれるものです。
セラミドの種類
セラミドは、その構造や原料によっていくつかの種類に分けられます。化学的な分類だけでなく、一般的なセラミドの分類についてもあわせて解説します。
ヒト型セラミド
人の体内にある12種類のセラミド、およびそれに化学的に近い構造を持つセラミドのことを、ヒト型セラミドと呼びます。
また、ヒト型セラミドに近い構造を持ったセラミドのことを、その製造方法からバイオセラミドとも呼びます。バイオセラミドは、酵母などを利用して化学的に培養されます。
ヒト型セラミドは体内のセラミドに似た構造を持つことから、肌へのなじみがよいとされていますが、その主な作用や効果は種類によって異なります。具体的な効果は、下記表の通りです。
ヒト型セラミドの種類と効果
名称 | 主な作用・効果 |
セラミドEOP(セラミド1) | 細胞間脂質の結合強化によるラメラ液晶構造安定化(バリア機能強化・維持) |
セラミドNG・セラミドNS(セラミド2) | 水分保持機能およびその持続性強化バリア機能強化 |
セラミドNP(セラミド3) | バリア機能強化 |
セラミドAG(セラミド5) | 水分保持機能およびその持続性強化バリア機能強化 |
セラミドAP(セラミド6Ⅱ) | バリア機能強化 |
植物性セラミド
米ぬか・米胚芽トウモロコシ・大豆・小麦・ビートなど、植物から抽出したグルコシルセラミド(グルコセレブロシド)のことを、一般に植物性セラミドといいます。
ヒト型セラミドがスフィンゴ脂質であるのに対し、植物性セラミドはグルコースが結合したスフィンゴ糖脂質です。
そのため、植物性セラミドは一般的な議論ではセラミドに含まれる場合があるものの、ヒト型セラミドとは別の物質と考えた方がよいでしょう。
動物性セラミド
馬や牛など、動物の脳や脊髄から抽出したセラミドを、動物性セラミドといいます。
動物性セラミドも植物性セラミドと同様にスフィンゴ糖脂質であり、グルコースではなくガラクトースが結合したガラクトシルセラミド(ガラクトセレブロシド)です。
こちらも、セラミドに糖が結合した物質であるため、セラミドそのものではない点に注意しましょう。
なお、2000年以前は牛の脳由来のガラクトシルセラミドが主に利用されていましたが、狂牛病の発生以降、馬由来のガラクトシルセラミドが主流となりました。
疑似セラミド
疑似セラミド、あるいは合成類似セラミドとは、化学的にヒト型セラミドに似た構造の物質を合成したものです。
セラミドとは異なるため、化粧品などに配合される際は「ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド」など、化学名で記載されます。
大量生産が可能なため安価ですが、ヒト型セラミドと同様の作用が期待できるかは不明です。一部の研究論文では、アトピー性皮膚炎の乾燥皮膚に対する有用性が高いことが示唆されています。
セラミドと類似成分との違い
セラミドと混同されやすいその他の保湿成分や美容成分との違いについて解説します。
コラーゲン
コラーゲン(collagen)は、タンパク質の一種です。繊維状をしていて、体組織にハリや弾力を与え健康的に保つ働きがあります。
人の体に含まれるタンパク質のうち、コラーゲンは約30%を占めており、そのうち40%が皮膚に、20%は骨や軟骨に、残りが血管・内臓・じん帯・腱などさまざまな組織に存在します。
皮膚の約70%もの割合を占めており、健康的な肌を保つために欠かせない栄養素です。一方で、経口からのコラーゲン摂取が本当に有効かどうかは、十分に証明されていません。
ヒアルロン酸
ヒアルロン酸(hyaluronic acid)は、保水力が高く皮膚のみずみずしさを保つために重要な成分です。保水力の高さは、ヒアルロン酸1gで6Lもの水分を保持できるほど。
コラーゲンがタンパク質の一種であるのに対して、ヒアルロン酸はムコ多糖類と呼ばれる糖質の一種です。
経口摂取によるポジティブな効果はほとんど確認されておらず、主に注射によって肌の真皮層に届けることで効果を発揮します。
コンドロイチン
コンドロイチン(chondroitin)は、ヒアルロン酸と同じくムコ多糖類の一種です。
軟骨に含まれるプロテオグリカンを構成する重要な成分で、関節が柔軟に動くために不可欠とされています。
グルコサミン
グルコサミン(glucosamine)は、ヒアルロン酸を構成する2種類の糖のうちのひとつです。
軟骨・皮膚・爪・じん帯など人体のさまざまな臓器・組織に存在していて、クッションのような働きを果たします。
コンドロイチンとともに、軟骨の主成分であるプロテオグリカンを構成する重要な成分のひとつです。
プラセンタ
プラセンタ(placenta)は単独の成分名ではなく、動物の胎盤、および胎盤から抽出したエキスとその成分群のことを指します。
胎盤とは、妊娠中の母体と胎児の臍帯(へその緒)をつなぐ器官です。
動物性プラセンタ・海洋性プラセンタ・植物性プラセンタなどいくつか種類がありますが、一般的に健康食品などで用いられるプラセンタは、哺乳類のものを指します。
ヒト由来のプラセンタもありますが、こちらは医薬品として用いられるため食品には使えません。
プラセンタは、主に下記の栄養を含みます。
- アミノ酸
- タンパク質
- 糖質
- ビタミン
- ミネラル
- 成長因子
特に重要なのが成長因子で、細胞の成長・増殖を促すほか、新陳代謝を促進するといった働きがあります。
しかし、哺乳類のプラセンタの経口摂取によって得られる効果は十分に証明されておらず、安全性への懸念も指摘されています。
セラミドの効果・働き
セラミドの持つ効果・効能・働きについて解説します。
肌のバリア機能を強め乾燥などによるダメージを防ぐ
セラミドは、肌が人体を守るために十分なバリア機能を形成するために、必須の成分です。
バリア機能を強め、外部からの刺激を防ぐことによって、肌の赤み・小じわ・ひびわれ・粉ふき・皮むけ・肌荒れといったあらゆる肌トラブルを予防・改善します。
水分が逃げにくい肌をつくり美肌に
セラミドは、バリア機能を高めるだけでなく水分の保持という面からも美肌に効果的です。
肌表面の細胞間の隙間をふさいだり、角質層の細胞間の隙間をふさいだりすることで、皮膚から水分が蒸散するのを防ぎうるおいを保ちます。
乾燥はしみ・しわ・くすみなどの原因などにもなることから、保湿作用は肌トラブルの予防に加えて美肌にも効果的と言えるでしょう。
セラミドが不足・欠乏すると起こる症状
セラミドが不足・欠乏すると起こる症状は次の通りです。
- 乾燥肌
- 敏感肌
- アトピー性皮膚炎
セラミドが不足・欠乏する主な原因は加齢によるものですが、そのほかにも、過度な洗顔や生活習慣の乱れからくるターンオーバーの乱れなどが起因している場合もあります。
また重篤なセラミド欠乏症としては、グルコシルセラミドから角層のセラミドの生成ができず、結果として皮膚の透過バリア形成不全で死に至る可能性も。
こちらは、遺伝性のスフィンゴ糖脂質代謝異常症のゴーシェ病のうち、酵素活性がない、あるいは残存酵素活性がきわめて低いゴーシェ病2型において起こる可能性があります。
セラミドを摂取すると起こる副作用
経皮摂取・経口摂取問わず、セラミドを摂取したことによって起こる副作用は報告されていません。
ただし、化粧品からの経皮摂取にせよ、健康食品やサプリメントからの経口摂取にせよ、そのほかの成分が原因となって副作用を引き起こすリスクはあります。
肌へ直接塗布する化粧品を使用する際に不安がある場合は、二の腕の内側など敏感な部位へ少量塗布して、パッチテストしましょう。
食品の場合も同様に、副作用が不安な場合は、摂取量未満の少量を試食してから使用を検討してください。
セラミドの1日の摂取目安量
セラミドは体内で合成される成分であり、外部から摂取することが必須である必須栄養素ではないため、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020 年版)では1日あたりの摂取目安量を設けられていません。
一方で、食品安全委員会の資料によると、グルコシルセラミドの1日あたり摂取量を1.8mgに設定した飲料の安全性試験において、感冒・湿疹・接触性皮膚炎などが報告されています。また3倍量で行った過剰摂取試験においては、感冒・肩こり・胃痛・腹部膨満感などが報告されました。
いずれも軽度かつ一過性の症状であったことから同資料内では「関連なし」もしくは「多分関連なし」とされているものの、同様の症状が認められた場合には摂取を中断した方がよいでしょう。
なお、上記安全性試験に用いられた食品に含まれるグルコシルセラミドは、こんにゃく芋から抽出したものでした。
セラミドを効率よく摂取する方法
セラミドを摂取する方法は、大きく分けて「経皮摂取(肌へ塗る)」か「経口摂取(口から摂取する)」の2種類です。
セラミドを補給したい部位がハッキリしている場合は、セラミド配合の保湿クリームや化粧水などを利用して経皮摂取するとよいでしょう。
特定の部位でなく、全身への作用を期待したいなら健康食品やドリンク、サプリメントによる経口摂取がおすすめです。
過剰摂取による副作用の報告はほぼありませんので、経皮摂取と経口摂取を組み合わせてもよいでしょう。
ただしその場合は、セラミド以外の配合成分にも注意してください。
参考文献
肌の水分を逃しにくくする「グルコシルセラミド」の力|化粧品・食品(トクホ)の研究-ポーラ化成工業
セラミドとその代謝産物の皮膚における役割|公益社団法人日本生化学会
Characterization of Overall Ceramide Species in Human Stratum Corneum|PubMed.gov
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