あさりの栄養と効果効能・調理法・保存法
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あさりの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、あさりに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
あさりとは
あさりはしじみと同じ二枚貝の一種です。しじみが淡水域や汽水域に生息しているのに対し、あさりは内湾の干潟や砂浜などの海水域を生息地としています。海の浅瀬に生息していることから、「浅蜊」の名がついたという説もあります。
あさりは古くから日本の近海に生息し、日本の食文化に根づいてきました。縄文時代の貝塚からはあさりの貝殻が多く出土されています。
現在も全国各地で収穫されているあさりですが、国内でもっとも漁獲量が多いのは愛知県です。特に三河湾や六条潟はエサとなるプランクトンが豊富で、上質なあさりが獲れます。
一般的な旬は3月から6月で、この時期は潮干狩りが盛んです。旬時期のあさりは産卵を控えているため、栄養をたっぷり含み身が膨らんでいます。関東以南のあさりは秋にも産卵期があるため、9月から10月に二度目の旬を迎えます。
国内でのあさりの漁獲量は年々減少しており、今では海外からの輸入品に頼っている状況です。流通のメインとなっているのは、中国産や韓国産のあさりです。
あさりの品種・種類
あさりは漁獲される地域によって見た目が異なります。ここでは一般的なあさりに比べ、特徴的な見た目の品種を紹介します。
北海あさり
北海道で採れるあさりを北海あさりと言います。ほかの地域で採れるあさりに比べ、目立った模様がなくベージュのような色味です。
サイズが大ぶりなため、「横綱アサリ」とも呼ばれます。
ウチムラサキ貝
「大あさり」という名称で呼ばれるあさりは、ウチムラサキ貝と言います。貝の内側が紫色のため、その名がつきました。
10cmもの大きさに成長するうえに殻が分厚いため、ずっしりとした重みがあります。産地として名高い愛知県と三重県では、浜焼きが盛んです。
あさりに含まれる成分・栄養素
あさり100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
あさりにはカルシウムやマグネシウム、亜鉛、鉄などのミネラルが多く含まれています。ミネラルは体内で合成できないため、食品から積極的に摂取したい栄養素のひとつです。
ビタミンも豊富に含んでおり、特に際立っているのがビタミンB12です。貝類のなかでトップクラスの含有量を誇ります。
ほかにも疲労回復成分として有名なタウリンが含まれるなど、あさりはサイズが小さくても栄養価が高いことがわかります。
食品名 | 単位 | あさり 生 | しじみ 生 | はまぐり 生 | あさり 缶詰 水煮 | しじみ 水煮 | はまぐり 水煮 | あさり 缶詰 味付け | あさり つくだ煮 |
廃 棄 率 | % | 60 | 75 | 60 | 0 | 80 | 75 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 30 | 64 | 39 | 114 | 113 | 89 | 130 | 225 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 126 | 267 | 162 | 477 | 471 | 371 | 544 | 941 |
水 分 | g/100 g | 90.3 | 86 | 88.8 | 73.2 | 76 | 78.6 | 67.2 | 38 |
たんぱく質 | g/100 g | 6 | 7.5 | 6.1 | 20.3 | 15.4 | 14.9 | 16.6 | 20.8 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 4.5 | 5.7 | 4.4 | -15.4 | 12 | -10.6 | - | - |
脂 質 | g/100 g | 0.3 | 1.4 | 0.6 | 2.2 | 2.7 | 1.5 | 1.9 | 2.4 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 0.1 | 0.6 | 0.3 | 0.9 | 1.2 | 0.6 | 0.9 | 1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.02 | 0.24 | 0.09 | 0.34 | 0.45 | 0.19 | 0.24 | 0.32 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.01 | 0.14 | 0.05 | 0.21 | 0.27 | 0.11 | 0.23 | 0.21 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.04 | 0.19 | 0.13 | 0.31 | 0.46 | 0.29 | 0.38 | 0.47 |
コレステロール | mg/100 g | 40 | 62 | 25 | 89 | 130 | 79 | 77 | 61 |
炭水化物 | g/100 g | 0.4 | 4.5 | 1.8 | 1.9 | 5.5 | 2.9 | 11.5 | 30.1 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
食物繊維総量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
灰 分 | g/100 g | 3 | 1.2 | 2.8 | 2.4 | 1.8 | 2.3 | 2.8 | 8.7 |
ナトリウム | mg/100 g | 870 | 180 | 780 | 390 | 100 | 490 | 640 | 2900 |
カリウム | mg/100 g | 140 | 83 | 160 | 9 | 66 | 180 | 35 | 270 |
カルシウム | mg/100 g | 66 | 240 | 130 | 110 | 250 | 130 | 87 | 260 |
マグネシウム | mg/100 g | 100 | 10 | 81 | 46 | 11 | 69 | 44 | 79 |
リン | mg/100 g | 85 | 120 | 96 | 260 | 200 | 190 | 180 | 300 |
鉄 | mg/100 g | 3.8 | 8.3 | 2.1 | 29.7 | 14.8 | 3.9 | 27.8 | 18.8 |
亜鉛 | mg/100 g | 1 | 2.3 | 1.7 | 3.4 | 4 | 2.5 | 3.2 | 2.8 |
銅 | mg/100 g | 0.06 | 0.41 | 0.1 | 0.29 | 0.61 | 0.23 | 0.24 | 0.18 |
マンガン | mg/100 g | 0.1 | 2.78 | 0.14 | 1.24 | 7.3 | 0.3 | 1.23 | 0.94 |
ヨウ素 | µg/100 g | 55 | - | - | - | - | - | - | - |
セレン | µg/100 g | 38 | - | - | - | - | - | - | - |
クロム | µg/100 g | 4 | - | - | - | - | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 9 | - | - | - | - | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 2 | 25 | 7 | 3 | 57 | 12 | 3 | 26 |
α-カロテン | µg/100 g | 1 | 13 | 0 | - | 29 | 0 | - | 25 |
β-カロテン | µg/100 g | 21 | 97 | 25 | - | 220 | 50 | - | 190 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 | 1 | - | - | 1 | - | - | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 22 | 100 | 25 | 35 | 230 | 50 | 36 | 200 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 4 | 33 | 9 | 6 | 76 | 16 | 6 | 43 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0.2 | 0 | 0 | 0.6 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.4 | 1.7 | 0.6 | 2.7 | 3.9 | 2.8 | 2.3 | 1.4 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | Tr | 2 | Tr | 3 | 5 | 1 | 4 | 4 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.02 | 0.02 | 0.08 | Tr | 0.02 | 0.15 | Tr | 0.02 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.16 | 0.44 | 0.16 | 0.09 | 0.57 | 0.27 | 0.06 | 0.18 |
ナイアシン | mg/100 g | 1.4 | 1.5 | 1.1 | 0.8 | 1.5 | 1.6 | 1.2 | 1.1 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.04 | 0.1 | 0.08 | 0.01 | 0.04 | 0.05 | 0.01 | 0.09 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 52.4 | 68.4 | 28.4 | 63.8 | 81.6 | 20.3 | 36.1 | 14.5 |
葉酸 | µg/100 g | 11 | 26 | 20 | 10 | 37 | 23 | 1 | 42 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.39 | 0.53 | 0.37 | 0 | 0.35 | 0.45 | 0 | 0.4 |
ビオチン | µg/100 g | 22.7 | - | - | - | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 1 | 2 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 2.2 | 0.4 | 2 | 1 | 0.3 | 1.2 | 1.6 | 7.4 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - | 78 | 64 | - | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
あさりの効果・効能
あさりに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
カルシウムやマグネシウムで骨を強化
あさりは骨に良い成分が多く含まれています。ひとつはカルシウムで、骨の形成に関わるミネラルです。カルシウムが欠乏すると骨が十分に育たず、骨粗鬆症を招きます。
同じくミネラルのマグネシウムも骨の強化に重要です。マグネシウムは体内で炭酸水素マグネシウムやリン酸マグネシウムとなり、骨の成長を支えています。
妊婦や女性の貧血予防に
あさりはビタミンB12の含有量が多い食品です。ビタミンB12は血液細胞を正常に保つために欠かせない成分で、欠乏すると巨赤芽球性貧血を引き起こします。
さらにあさりには鉄が多く含まれるため貧血予防に効果的です。特に妊娠時期は鉄欠乏性貧血が起きやすいため、鉄が豊富なあさりを積極的に摂取しましょう。
タウリンが生活習慣病を予防
タウリンとは、タンパク質の分解過程で生成されるアミノ酸の一種です。疲労回復成分として栄養ドリンクなどにも含まれますが、ほかにも期待されている作用が多くあります。
例えば肝臓や心臓の働きを助けたり、視機能改善をサポートしたりなどの作用です。コレステロールの低下作用やインスリンの分泌促進作用もあり、高血圧をはじめとした生活習慣病予防に役立つと考えられています。
亜鉛が子供の成長に
人間の生命活動に重要なのが亜鉛です。全身の細胞に存在する栄養素で、DNAの合成や免疫システムの維持に役立ちます。味覚や嗅覚にも関わっている成分です。
特に子供の身体が正常に成長するために必要不可欠なので、積極的な摂取が必要と言えるでしょう。
あさりの食べ方
あさりの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
おいしいあさりの見極め方
新鮮なあさりを選ぶには、殻に注目しましょう。黒々としていてツヤがあるあさりは鮮度が高い傾向にあります。一方、茶色っぽいあさりは古くなってしまっている状態です。
貝殻の模様がはっきり見えるあさりや殻がぴったりと閉じられているあさりも新鮮なので、しっかり見極めるようにしましょう。
あさりの砂抜き方法
あさりは海水に近い塩分濃度の水で砂抜きをおこないます。用意する塩水は水500mlに対し塩大さじ1杯程度が目安です。
あさりの頭が少し出るくらいの量で塩水を入れたら、2時間から3時間ほど放置しましょう。暗い場所のほうが砂を吐き出しやすいので、上にアルミホイルなどをかぶせるとなお良し。砂抜きが完了したら、軽くこすり洗いをしてから調理に移りましょう。
煮汁ごと食べるのがベスト
あさりには水溶性の栄養素が多く含まれるので、加熱調理したときに栄養がしみ出てしまいます。お味噌汁やスープなど煮汁ごと食べられる料理にすれば、栄養をあますことなく摂取できるでしょう。
あさりは水から煮ると出汁がよく出ますが、煮過ぎると身が硬くなってしまうので注意してください。
組み合わせ次第で栄養効率アップ
あさりの栄養素を効率よく摂取するなら、組み合わせる食品を吟味すると良いでしょう。
例えばあさりのカルシウムを効率よく摂取するなら、きのこと一緒に食べるのが得策。きのこはビタミンDを多く含み、カルシウムの吸収を促進してくれるからです。
ビタミンCは鉄の吸収率を上げてくれるので、トマトやブロッコリーとの組み合わせもおすすめできます。
中毒症状の危険性
あさりをはじめとした二枚貝は、有毒のプランクトンを食べると毒性を持ってしまうことがあります。毒化したあさりを人間が食べた場合、下痢や麻痺などの中毒症状が起きるため注意が必要です。特にあさりは麻痺性貝毒の事例が多く、最悪の場合は命に関わります。
貝の毒は熱に強く、加熱しても消えません。通常、毒化したあさりは出荷が規制されるため店頭に並びませんが、潮干狩りで獲ったあさりは気を付けましょう。
あさりの保存方法
あさりの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
あさりは傷みやすいので、できれば購入したその日に食べ切ってしまうのがベストです。どうしても保存する場合は以下の方法があります。
冷蔵保存
冷蔵保存の場合は塩水につけた状態で保存しましょう。砂抜きのときと同様に、水500mlに大さじ1杯程度の塩を入れた塩水につけたら、ラップをして保存します。
ただし、3日程度しか保存できないので、長期で保存したい場合は冷凍保存がおすすめです。
冷凍保存
冷凍保存は砂抜きをしてからおこないます。
水を入れずに保存袋へ入れたら、そのまま冷凍庫に入れましょう。冷凍保存の期間は1ヶ月程度が目安です。
調理に使う場合は解凍せずにそのまま加熱調理しましょう。味噌汁に使う際は水からではなく、沸騰したところに入れるのがおすすめ。急な温度変化で貝の口が開きやすくなります。