寒天の栄養と効果効能・調理法・保存法

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寒天

寒天の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、ゼラチンとの違い、寒天に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

寒天とは

寒天(agar)は、天草やオゴノリなどの海藻を加工して作られた食品です。これらの海藻には寒天質が含まれており、冷凍および解凍させることで寒天ができあがります。

寒天が誕生したのは江戸時代です。きっかけになったのはところてんと言われています。

ところてんは海藻類の寒天質を冷やし固めたもの。ある日、ところてんを外に放置していたところ、寒さで凍った後に日中の日差しで自然乾燥が進み寒天が生まれました。

つまり、ところてんと寒天は製法が違うだけで原料は同じということです。

寒天とゼラチンとの違い

寒天とよく混同される食品としてゼラチンがあります。

ゼラチンは牛や豚などの骨や皮から作られる加工品です。海藻を原料とする寒天とは性質が大きく異なります。

食物繊維が豊富な寒天と違い、ゼラチンの主成分はタンパク質。ちなみにゼラチンには食物繊維は含まれず、整腸作用は期待できないので注意してください。

ゼリーなどのデザートにした際は食感が異なります。寒天は歯切れがよく滑らかで、ゼラチンはぷるぷるとして口どけがよいのが特徴です。

寒天の品種・種類

寒天は原材料による大きな違いはありませんが、加工によって種類が異なります。

粉寒天

粉寒天は、天日干しした寒天を、さらにアルカリ処理で粉状にしたもの。全国各地の工場で作られている寒天です。

糸寒天や角寒天と違い、水に浸し柔らかくする工程が必要ありません。計量が簡単で、水にも溶けやすいので調理の時短にも役立ちます。

糸寒天

糸寒天は糸状に乾燥させた寒天です。岐阜県で主に作られています。

糸状のままサラダやスープとして活用したり、火にかけ煮溶かしたりなど活用方法はさまざまです。水に浸け、柔らかくしてから使用します。

角寒天(棒寒天)

角寒天は、寒天を天日干しして、棒状にした加工品です。主な生産地は長野県茅野市。必要量をちぎって、水で柔らかく戻した後に使用します。

寒天のなかでも食物繊維量が特に豊富なタイプですが、一方でわずかにカロリーが高めです。

寒天に含まれる成分・栄養素

寒天100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

カロリーが低く食物繊維が豊富なため、しばしばダイエット食品として活躍する寒天。しかし、実は寒天の主成分は炭水化物です。

低カロリーの秘密は、炭水化物のなかでも食物繊維がほとんどを占めているため。保水力の高い食物繊維は、胃で膨らみ満腹感も与えてくれます。まさにダイエットの補助食品として心強い味方と言えるでしょう。

寒天に含まれる栄養素の多くは食物繊維ですが、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル類も含有しています。

食品名単位てんぐさ 角寒天てんぐさ 寒天てんぐさ 粉寒天牛乳寒天
エネルギー(kcal)kcal/100 g154316565
エネルギー(kJ)kJ/100 g64413690271
水 分g/100 g20.598.516.785.2
たんぱく質g/100 g2.4Tr0.21.1
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g-1-0.1-1
脂 質g/100 g0.2Tr0.31.3
トリアシルグリセロール当量g/100 g-0.1--0.2-1.2
飽和脂肪酸g/100 g-0.04--0.05-0.79
一価不飽和脂肪酸g/100 g-0.02--0.02-0.29
多価不飽和脂肪酸g/100 g-0.06--0.08-0.04
コレステロールmg/100 gTr004
炭水化物g/100 g74.11.581.712.2
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g--0.1-12.1
水溶性食物繊維g/100 g----
不溶性食物繊維g/100 g----
食物繊維総量g/100 g74.11.5790.5
灰 分g/100 g2.8Tr1.20.2
ナトリウムmg/100 g130217015
カリウムmg/100 g5213051
カルシウムmg/100 g6601012038
マグネシウムmg/100 g1002394
リンmg/100 g3413932
mg/100 g4.50.27.3Tr
亜鉛mg/100 g1.5Tr0.30.1
mg/100 g0.02Tr0.04Tr
マンガンmg/100 g3.190.041.01-
ヨウ素µg/100 g-21816
セレンµg/100 g-001
クロムµg/100 g-1390
モリブデンµg/100 g-051
レチノールµg/100 g00013
α-カロテンµg/100 g-00-
β-カロテンµg/100 g-00-
β-クリプトキサンチンµg/100 g-00-
β-カロテン当量µg/100 g0002
レチノール活性当量µg/100 g00013
ビタミンDµg/100 g0000.1
α-トコフェロールmg/100 g000Tr
β-トコフェロールmg/100 g0000
γ-トコフェロールmg/100 g0000
δ-トコフェロールmg/100 g0000
ビタミンKµg/100 g00Tr1
ビタミンB1mg/100 g0.01Tr00.01
ビタミンB2mg/100 g00Tr0.05
ナイアシンmg/100 g0.100.1Tr
ビタミンB6mg/100 gTr000.01
ビタミンB12µg/100 g000.20.1
葉酸µg/100 g0012
パントテン酸mg/100 g0.46000.19
ビオチンµg/100 g-00.10.6
ビタミンCmg/100 g000Tr
食塩相当量g/100 g0.300.40
アルコールg/100 g----
硝酸イオンg/100 g----
テオブロミンg/100 g----
カフェインg/100 g----
タンニンg/100 g----
ポリフェノールg/100 g----
酢酸g/100 g----
調理油g/100 g----
有機酸g/100 g----
重量変化率%----
備考別名: まくさ(和名)、棒寒天細寒天(糸寒天)を含むエネルギー: 暫定値別名: まくさ(和名)角寒天をゼリー状にしたもの角寒天2.2 g使用エネルギー: 暫定値別名: まくさ(和名)試料: てんぐさ以外の粉寒天も含むエネルギー: 暫定値杏仁豆腐を含む
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

寒天の効果・効能

寒天に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

便秘解消にも役立つ不溶性食物繊維

寒天に多く含まれる食物繊維は、消化・吸収されずに大腸まで届く栄養素です。食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分けられ、それぞれ作用が異なります。

不溶性食物繊維は水に溶けない食物繊維です。保水機能にすぐれ、摂取すれば便の体積を増やす材料となります。さらに腸のぜん動運動を促進するため、摂取すれば便秘解消が期待できる栄養素です。

ある研究では、被験者に一定期間ゼラチンで作ったゼリーと寒天で作ったゼリーを与えて経過を観察したところ、寒天摂取期間に排便の頻度と量が増加したという結果が出ています。

コレステロールと血糖値低下に水溶性食物繊維

水溶性食物繊維には糖の吸収を阻害する作用が期待されています。血糖値の急激な上昇を抑えるので、ダイエット効果だけでなく糖尿病の予防として注目を浴びている食物繊維です。

また、コレステロールから生成される胆汁酸の排泄を促進することから、血中コレステロール値の低下にも一役買っていると考えられています。

ラットを使った実験では、水溶性食物繊維のなかでも難消化性デキストリンを投与したところ、 空腹時血糖値ならびに血中コレステロール値の低下が確認されました。

なお、別の実験でも同様の効果が見られており、摂取以前の総コレステロール値が高い被験者のほうがその低下率は大きいとされています。

ミネラル類の生理活性作用

寒天に含まれるミネラル類のなかでも特に豊富に含まれるのは、カルシウムとマグネシウムです。

カルシウムは骨や歯の形成に役立つ栄養素で、心筋収縮作用のサポートや血液凝固を促す働きもあります。

一方、マグネシウムは骨の形成に関わり、カルシウムと化学的性質が似ている成分です。他にも筋肉の収縮や血圧調整などの生理活性作用を持ちます。

デキストリンがミネラルの吸収促進

近年まで食物繊維はミネラル類の吸収を阻害すると考えられていましたが、その一般論は覆りつつあります。

むしろ、水溶性食物繊維のデキストリンは、大腸でミネラルの吸収を促進するという研究が発表されました。

デキストリンを摂取すると便の体積が増え、腸内細菌の代謝物である短鎖脂肪酸量が増加。腸内phを低下させ、腸内環境が善玉菌の好む酸性へと傾くことでミネラルの吸収率があがると考えられています。

寒天の食べ方

寒天の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

寒天の洗い方

糸寒天、角寒天の場合は使用前によく洗ってからたっぷりの水につけましょう。お好みに合わせて10~30分ほど浸したら、下処理は完了です。粉寒天の場合は下処理いらずでそのまま料理に使えます。

溶かす場合は、必ず沸騰したところに寒天を混ぜましょう。寒天は常温でも固まるので、温度が低いとダマになってしまう可能性があります。

寒天の調理方法

寒天を調理するには、種類ごとの凝固力に注意しましょう。一般的には粉寒天4g程度が、角寒天の1本分(8g)に相当します。糸寒天の場合は24~28本でだいたい角寒天1本と同等です。

調理方法には、大きく分けて次の2つがあります。

寒天を溶かして使う

1つは煮溶かして使う方法です。例えば、溶かしたものを冷やし固めれば寒天ゼリーができます。炊飯器にお米と一緒に入れて炊くのもおすすめです。お米に甘みとツヤが出て、おいしく炊き上げられます。

煮溶かす場合は粉寒天がもっとも使いやすいです。細かくちぎれば角寒天や糸寒天も同様に使えます。

戻した寒天をそのまま使う

柔らかく戻した角寒天や糸寒天をそのまま料理に活用する方法です。例えば、糸寒天やちぎった角寒天は、サラダの具材として活用できます。糸寒天ならお味噌汁やスープの具にしてもいいですね。

ただし、熱が加わり続けると溶け切ってしまうので、食感を活かして調理したい際は注意してください。

寒天をダイエットに活用する方法

料理に寒天を入れると、かさ増し効果で満腹感を得やすくなるため、食べすぎを防ぐことができます。

ダイエットとして活用するのであれば、食事前に寒天ゼリーなどとして食べると1日の摂取カロリーを抑えられるでしょう。ただし、寒天は水分を吸収するので、水分をしっかり取りながら食べることが大切です。

また、料理に混ぜこんでもかさ増し効果が得られます。気軽に試せるのは、ハンバーグや餃子のタネに混ぜこむ方法です。寒天自体に味がないので使いやすく、さらに熱で溶ける性質のおかげでジュ―シーな仕上がりになります。

寒天を調理する際の注意点

食物繊維が豊富な寒天ですが、他の栄養素はそれほど多く含まれていません。そのため調理する際にはタンパク質や脂質、ビタミン類などが含まれた食材と合わせるようにしましょう。

カロリーが低いからと言って、寒天ばかり摂取していると他の栄養素が不足し、かえって不健康になってしまう可能性もあるので注意してください。

寒天を食べる際の注意点

寒天は食物繊維を多く含む分、食べすぎると過剰に整腸作用が働く危険性があります。人によっては下痢や腹痛を引き起こしてしまうので注意しましょう。

食物繊維の摂取目安量は成人男性で1日21g、成人女性で1日18g以上です。食物繊維は他の食材にも含まれる栄養素ですから、バランスをよく考えて摂取するようにしましょう。

寒天の保存方法

寒天の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

乾燥寒天は長期保存が可能

水で戻していない乾燥状態の寒天は、直射日光と高温多湿を避け保存しましょう。冷蔵庫ではなく、常温保存で構いません。乾物なので年単位で長期保存が可能です。

調理済みの寒天は保存がきかない

すでに水でふやかした状態の寒天や、火を加えて調理済みの場合は長期保存ができません。冷蔵庫に入れ、2~3日で食べきってください。

調理済みの寒天を冷凍保存すると、解凍の際に水がしみ出て滑らかな食感が損なわれる場合があります。冷凍保存にはあまり向いていないと考えられるので注意してください。

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