鮭の栄養と効果効能・調理法・保存法
10408views
鮭の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、鮭に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
鮭とは
鮭(salmon)は、サケ科サケ属の魚の総称です。シャケと呼ばれることもあります。
鮭は、切り身やフレーク、缶詰として多く出回っているほか、おにぎりの具材としても人気で、日本人には馴染み深い魚です。
身がピンク色をしているため赤身魚というイメージを持たれがちな鮭ですが、実は白身魚で、赤い色はアスタキサンチンという色素成分によるものです。
鮭には、川で生まれたのちに海で数年間回遊し、産卵のために生まれ故郷の川に帰ってくる習性があります。日本で多く出回っている白鮭は、9~11月にかけて川に戻ってくるため、鮭の旬は秋です。
鮭は一般的には身や皮を食べる魚ですが、卵はいくらや筋子として、内臓は塩辛などの珍味として食べることもできるため、ほぼ全身が可食部と言えます。
鮭の品種・種類
サケ属に分類される魚のなかで、日本でよく食べられている種類の特徴を説明します。
白鮭
単に「鮭」というと白鮭のことを指していることが多く、日本で古くから食べられてきた魚です。白鮭は、漁獲する時期によって「秋鮭」「時鮭(ときしらず)」「鮭児(けいじ)」など呼び名が変わります。比較的カロリーが低く、ダイエットにも向いた食材です。
紅鮭
紅鮭は、産卵前になると身が鮮やかな紅色に染まる種です。鮭は身の赤みが強いほどおいしいとも言われており、紅鮭は高級品に分類されます。
身の紅色は、強い抗酸化作用のあるアスタキサンチン由来のもので、栄養価の高さでも注目されています。
銀鮭
銀鮭は、肌目が銀色で背中に黒点がある鮭です。他の品種よりも成長が早く、養殖ものも多く出回っています。
脂のりが良いのが特徴で、弁当のおかずやおにぎりの具材としてよく利用されていますが、カロリーはやや高めです。
キングサーモン
キングサーモンは、別名「マスノスケ」とも呼ばれる世界最大級の鮭です。鮭のなかでも脂肪分が多い種類でカロリーも高めですが、味が非常に良く、ソテーやスモークサーモンなどにして食べられます。
カラフトマス
カラフトマスは、全長40~60cmほどの小型の鮭で、身が柔らかく脂が多いのが特徴です。主にサケ缶や塩マスなどの加工品として出回っており、卵は筋子として食べられます。地域によっては「サクラマス」「アオマス」と呼ばれることもあります。
サクラマス
サクラマスは、北海道や東北地方で桜の時期に多く漁獲される鮭です。河川に残留するサクラマスはヤマメと呼ばれます。サケ科の魚類のなかでは漁獲量が少ない品種ですが、富山県の名産である「鱒寿司」に使われるのはサクラマスです。
ニジマス
ニジマスは、北アメリカ原産とされるサケ科の魚です。チリで養殖された品種は「サーモントラウト」や「トラウトサーモン」の名で販売されています。養殖ものは生食にも向いていて、寿司ネタや刺身としても人気です。
鮭に含まれる成分・栄養素
鮭100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | ぎんざけ 養殖 生 | ぎんざけ 養殖 焼き | しろさけ 生 | しろさけ 水煮 | しろさけ 焼き | しろさけ 新巻き 生 | しろさけ 新巻き 焼き | しろさけ 塩ざけ | べにざけ 生 | べにざけ 焼き | べにざけ くん製 |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 204 | 257 | 133 | 152 | 171 | 154 | 198 | 199 | 138 | 177 | 161 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 854 | 1075 | 556 | 636 | 715 | 644 | 828 | 833 | 577 | 741 | 674 |
水 分 | g/100 g | 66 | 56.7 | 72.3 | 68.5 | 64.2 | 67 | 59.5 | 63.6 | 71.4 | 63.4 | 64 |
たんぱく質 | g/100 g | 19.6 | 25.2 | 22.3 | 25.5 | 29.1 | 22.8 | 29.3 | 22.4 | 22.5 | 28.5 | 25.7 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | - | - | 18.3 | -21 | -23.9 | -18.8 | -24.1 | -18.4 | -18.6 | -23.6 | - |
脂 質 | g/100 g | 12.8 | 15.8 | 4.1 | 4.7 | 5.1 | 6.1 | 7.9 | 11.1 | 4.5 | 6 | 5.5 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 9 | 11.4 | 3.4 | 3.8 | 4.1 | 4.4 | 5.5 | 10 | 3.7 | 4.9 | 4.4 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 2.23 | 2.84 | 0.66 | 0.76 | 0.82 | 0.98 | 1.22 | 2.56 | 0.81 | 1.06 | 0.97 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 3.5 | 4.38 | 1.64 | 1.89 | 2.01 | 1.83 | 2.32 | 4.41 | 1.75 | 2.29 | 2.04 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 2.92 | 3.73 | 0.91 | 1.02 | 1.14 | 1.43 | 1.74 | 2.58 | 1.03 | 1.3 | 1.23 |
コレステロール | mg/100 g | 60 | 88 | 59 | 78 | 85 | 70 | 95 | 64 | 51 | 76 | 50 |
炭水化物 | g/100 g | 0.3 | 0.4 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
食物繊維総量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
灰 分 | g/100 g | 1.3 | 1.9 | 1.2 | 1.2 | 1.5 | 4 | 3.2 | 2.8 | 1.5 | 2 | 4.7 |
ナトリウム | mg/100 g | 48 | 61 | 66 | 63 | 82 | 1200 | 830 | 720 | 57 | 72 | 1500 |
カリウム | mg/100 g | 350 | 460 | 350 | 340 | 440 | 380 | 480 | 320 | 380 | 490 | 250 |
カルシウム | mg/100 g | 12 | 16 | 14 | 19 | 19 | 28 | 44 | 16 | 10 | 16 | 19 |
マグネシウム | mg/100 g | 25 | 34 | 28 | 29 | 35 | 29 | 36 | 30 | 31 | 39 | 20 |
リン | mg/100 g | 290 | 320 | 240 | 250 | 310 | 230 | 300 | 270 | 260 | 340 | 240 |
鉄 | mg/100 g | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | 1 | 1.7 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.8 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.6 | 0.8 | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.4 | 0.6 | 0.4 | 0.5 | 0.7 | 0.5 |
銅 | mg/100 g | 0.05 | 0.07 | 0.07 | 0.08 | 0.08 | 0.07 | 0.08 | 0.05 | 0.07 | 0.08 | 0.07 |
マンガン | mg/100 g | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.02 | 0.03 | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.01 |
ヨウ素 | µg/100 g | 4 | - | 5 | 6 | 5 | - | - | - | - | - | - |
セレン | µg/100 g | 28 | - | 31 | 34 | 41 | - | - | - | - | - | - |
クロム | µg/100 g | 0 | - | 1 | 2 | 3 | - | - | - | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 0 | - | 0 | 0 | 0 | - | - | - | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 36 | 37 | 11 | 13 | 14 | Tr | Tr | 24 | 27 | 35 | 43 |
α-カロテン | µg/100 g | - | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - |
β-カロテン | µg/100 g | - | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | - | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - |
β-カロテン当量 | µg/100 g | Tr | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 36 | 37 | 11 | 13 | 14 | (Tr) | (Tr) | 24 | 27 | 35 | 43 |
ビタミンD | µg/100 g | 15 | 21 | 32 | 34.3 | 39.4 | 21 | 25.3 | 23 | 33 | 38.4 | 28 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 1.8 | 2.7 | 1.2 | 1.1 | 1.4 | 0.7 | 1 | 0.4 | 1.3 | 1.8 | 1.2 |
β-トコフェロール | mg/100 g | Tr | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | Tr | Tr | Tr | Tr | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | Tr | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.15 | 0.13 | 0.15 | 0.15 | 0.17 | 0.18 | 0.22 | 0.14 | 0.26 | 0.27 | 0.23 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.14 | 0.19 | 0.21 | 0.23 | 0.26 | 0.2 | 0.24 | 0.15 | 0.15 | 0.22 | 0.23 |
ナイアシン | mg/100 g | 5.3 | 7.4 | 6.7 | 6.6 | 8.7 | 6.2 | 7.7 | 7.1 | 6 | 7.2 | 8.5 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.32 | 0.31 | 0.64 | 0.51 | 0.57 | 0.56 | 0.52 | 0.58 | 0.41 | 0.39 | 0.52 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 5.2 | 7.5 | 5.9 | 5.3 | 6 | 6 | 6.3 | 6.9 | 9.4 | 3.8 | 8 |
葉酸 | µg/100 g | 9 | 10 | 20 | 21 | 24 | 24 | 40 | 11 | 13 | 15 | 10 |
パントテン酸 | mg/100 g | 1.37 | 1.65 | 1.27 | 1.21 | 1.67 | 1.45 | 1.8 | 0.95 | 1.23 | 1.49 | 1.5 |
ビオチン | µg/100 g | 4.6 | - | 9 | 10.3 | 12.3 | - | - | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 1 | 1 | 1 | Tr | 1 | 1 | 1 | 1 | Tr | 2 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0.1 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 3 | 2.1 | 1.8 | 0.1 | 0.2 | 3.8 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 78 | - | 83 | 74 | - | 79 | - | - | 78 | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
鮭の効果・効能
鮭に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
眼の疲れや美容に効果的なアスタキサンチン
もともと白身魚である鮭の身が赤いのは、アスタキサンチンというカロテノイド色素によるものです。鮭は、プランクトンからアスタキサンチンを摂取して体内に蓄え、広い海や激流の川を泳ぐためのエネルギーにしています。
カロテノイドのなかでも特に強力な抗酸化作用を持つアスタキサンチンは、眼精疲労や生活習慣病の予防に効果的と考えられています。抗酸化作用とは、体に悪影響を及ぼす活性酸素の働きを抑え、除去する作用のことです。
アスタキサンチンは、眼の新陳代謝や血流を促して眼の疲れを軽減するほか、紫外線により発生した活性酸素を除去してシミ・シワなどの肌トラブルを改善するなど、さまざまな効能が期待できる栄養素です。
なお、アスタキサンチンは赤みの強い紅鮭に特に豊富で、鮭の卵のいくらや筋子にも含まれています。
EPA・DHAなどのオメガ3脂肪酸で血液サラサラに
鮭の脂質には、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といったオメガ3脂肪酸が豊富です。
オメガ3脂肪酸は鮭などの魚類に多く含まれている多価不飽和脂肪酸の一種で、EPAには血栓を出来にくくしたり高脂血症を予防するなど、血液をサラサラにする効果があります。動脈硬化や心筋梗塞など、血管に関連する疾患が気になる方は必見です。
一方、DHAは脳や眼の神経にとって重要な成分で、脳機能を活性化する作用があると考えられているので、特に脳の成長期には積極的に摂っておきたい成分と言えます。
これらのオメガ3脂肪酸は、鮭のなかでも脂質の多い銀鮭に多く含まれています。効率良く栄養を摂りたいときは、脂のりの良い鮭を選ぶようにしましょう。
貧血を予防するビタミンB12や葉酸
疲れやすくなったり、動悸や息切れなどの症状が出る「巨赤芽球性貧血」は、ビタミンB12や葉酸が不足することで起こります。鮭にはビタミンB12や葉酸が多く含まれており、貧血を予防・改善する効果が期待できます。
ビタミンB12は牛レバーや貝にも豊富な栄養素で、神経や血液細胞の健康を維持し、DNAの生成を助けて貧血を予防します。
一方、葉酸は貧血を防ぐとともに、胎児の健康な発育に欠かせないビタミンでもあります。鮭は、妊婦や授乳中の女性にとっても有用な魚と言えるでしょう。
鮭皮に豊富なコラーゲンで肌・関節の健康を維持
たんぱく質の一種であるコラーゲンは、皮膚・腱・軟骨などを構成する栄養素です。体のたんぱく質の約3割を占めている成分で、健康な肌と関節の維持には欠かせません。
また、コラーゲンは肌のうるおいを保持する保湿成分でもあり、ハリや弾力のある美肌づくりにも大切な成分です。
鮭は皮にコラーゲンが豊富に含まれているため、捨ててしまわず食べるようにしましょう。
鮭の食べ方
鮭の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
鮭の調理方法
鮭に含まれるアスタキサンチンやビタミンB群などは、油に溶けやすい脂溶性の成分なので、栄養素の吸収率を高めるには、炒め物や揚げ物など油を使ったレシピがおすすめです。
また、アスタキサンチンはビタミンCと共に摂取することで、お互いが持つ抗酸化作用の相乗効果でより高い効果が得られるとも言われています。レモンなどビタミンCの多い食材と組み合わせて食べてみましょう。
鮭の食べ方
鮭の皮には肌や関節を健康に保つコラーゲンが豊富に含まれているので、皮も捨てずに食べてみてください。また、皮と身の間の脂身には、EPAやDHAなどの栄養素がたっぷりと含まれています。
鮭の骨に含まれるカルシウムを余さず摂取したいときは、骨ごと食べられる水煮缶がおすすめです。
鮭を食べる際の注意点
新巻鮭(あらまきざけ)は、鮭の内臓を取り除き、塩で漬け込んだ加工食品です。塩漬けにしているため、新巻鮭には通常の切り身用の鮭よりも多くの塩分が含まれています。
ナトリウムの摂りすぎは、高血圧やむくみなどの原因にもなります。塩分摂取量が気になる方は、新巻鮭の食べすぎに注意してください。
鮭の保存方法
鮭の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
生鮭の切り身を冷蔵保存する場合、冷蔵庫に入れる前に塩を振って水分を出します。5分ほど置いたら鮭の水分が出てくるので、キッチンペーパーで水気をふき取って、一切れずつラップに包み、密閉できる袋に入れて冷蔵庫に入れてください。
冷凍保存
鮭を長期保存したい場合は冷凍しましょう。冷凍する場合も、冷蔵と同じ手順で塩を振り水分を出してから凍らせることで、より長く新鮮な状態を保てます。
鮭を解凍するときにドリップと呼ばれる液体が出ることがありますが、栄養素や旨味成分も一緒に流出してしまうため注意が必要です。ドリップを出にくくするには、冷蔵庫に移して5~6時間かけてじっくりと解凍しましょう。