ココナッツの栄養と効果効能・調理法・保存法
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ココナッツの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、ココナッツに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ココナッツとは
東南アジアなどの熱帯地方に自生する、ヤシ科の高木ココヤシになる種子(実)が、ココナッツ(coconut)です。ココナツと呼ばれることもあります。
ココナッツは、大きなものだと直径30㎝ほど、重さ4kgほどに成長します。若い果実の外皮は緑色をしていて柔らかいですが、成熟すると硬く茶色くなっていきます。
実の内部には、固形の胚乳と、ココナッツジュースとして飲用される液状の胚乳がつまっています。この2種類の胚乳が、ココナッツの可食部です。若い実の胚乳は柔らかく、果肉として生食することもできます。
海のそばに自生していることの多いココナッツは、海水に含まれるミネラル類を吸収して成長します。そのため、果肉やジュースには、カリウム・マグネシウム・鉄などのミネラル類が豊富。熱帯に暮らす人々の貴重な栄養源となっているのです。
栄養源として重宝されるココナッツは、食材以外にも多様な用途があります。
完熟したココナッツの外皮からは、強靭な天然繊維が採取できます。これはココナッツファイバーと呼ばれ、ロープ・マット・ブラシなどに利用されています。
また、硬くて丈夫な殻は食器や工芸品に加工されることも多いです。ココナッツの殻に華やかな絵柄をペイントした工芸品は、南国のお土産品として人気があります。
ココナッツを原料とする主な食品
ココナッツは果肉を生で食べることもできますが、さまざまな食材に加工されます。代表的な種類をいくつか紹介します。
ココナッツジュース
ココナッツの未熟果には、ミネラルやビタミンが豊富な液状胚乳がたっぷり入っていて、ココナッツジュースとして親しまれています。
ココナッツジュースは透明で、ほんのり甘くすっきりとした味わいが特徴です。新鮮な果実に直接ストローを刺して飲むこともできます。
ナタデココ
1990年代の日本で大ブームを巻き起こしたナタデココは、ココナッツジュースを酢酸菌で発酵させゲル化したものです。
コリコリとした独特な食感が楽しめ、デザートの材料として人気の食材です。ナタデココはほとんどが水分でできていますが、食物繊維も含まれています。
ココナッツオイル
ココナッツオイルは、成熟したココナッツの胚乳を圧搾し、抽出した植物油です。ほかの植物油と比べて酸化しにくく、脂肪の燃焼を助ける飽和脂肪酸が豊富に含まれているのが特徴。
食用だけでなく、肌や髪の保湿剤としても使用できます。気温が20~25℃を下回ると固まる性質を持っています。
ココナッツミルク
ココナッツの固形胚乳を削って水と煮込み、裏ごししたものがココナッツミルクです。
そのまま飲用することもできますが、タイカレーなど東南アジアの料理にもよく利用されます。甘みとコクがあるので、タピオカやプリンなど、デザートの材料としても活躍します。
ココナッツパウダー
ココナッツの胚乳をすりおろし、粉状にしたものがココナッツパウダーです。食物繊維が豊富に含まれています。
パウダーのため長期保存が可能で、さまざまな料理に使いやすいのが特徴です。ココナッツミルクを粉状にしたココナッツミルクパウダーもあります。
ココナッツに含まれる成分・栄養素
ココナッツ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | ココナッツパウダー | ココナッツウォーター | ココナッツミルク | ナタデココ | ココナッツオイル |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 668 | 20 | 150 | 73 | 921 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 2795 | 84 | 628 | 306 | 3853 |
水 分 | g/100 g | 2.5 | 94.3 | 78.8 | 79.7 | 0 |
たんぱく質 | g/100 g | 6.1 | 0.2 | 1.9 | 0 | 0 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | -5.7 | - | -1.8 | - | - |
脂 質 | g/100 g | 65.8 | 0.1 | 16 | Tr | 100 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -64.3 | - | 14.9 | - | 97.7 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -55.25 | - | 13.2 | - | 83.96 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -4.34 | - | 0.76 | - | 6.59 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -1.01 | - | 0.13 | - | 1.53 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
炭水化物 | g/100 g | 23.7 | 5 | 2.8 | 20.2 | 0 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | -6.4 | -7.9 | - | - | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.5 | 0 | 0.2 | Tr | 0 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 13.6 | 0 | 0 | 0.5 | 0 |
食物繊維総量 | g/100 g | 14.1 | 0 | 0.2 | 0.5 | 0 |
灰 分 | g/100 g | 1.9 | 0.4 | 0.5 | Tr | 0 |
ナトリウム | mg/100 g | 10 | 11 | 12 | 2 | 0 |
カリウム | mg/100 g | 820 | 230 | 230 | 0 | 0 |
カルシウム | mg/100 g | 15 | 11 | 5 | 1 | Tr |
マグネシウム | mg/100 g | 110 | 6 | 28 | 1 | 0 |
リン | mg/100 g | 140 | 11 | 49 | Tr | 0 |
鉄 | mg/100 g | 2.8 | 0.1 | 0.8 | 0 | 0 |
亜鉛 | mg/100 g | 1.4 | 0.1 | 0.3 | 0 | Tr |
銅 | mg/100 g | 0.8 | Tr | 0.22 | 0 | 0 |
マンガン | mg/100 g | 1.41 | 0.16 | 0.59 | 0 | 0 |
ヨウ素 | µg/100 g | - | - | - | - | - |
セレン | µg/100 g | - | - | - | - | - |
クロム | µg/100 g | - | - | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | - | - | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | - | - | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | - | - | 0 | 0 | 0 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | - | - | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | Tr | 0 | 0.3 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.2 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.03 | 0.01 | 0.01 | 0 | 0 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.03 | 0.01 | 0 | 0 | 0 |
ナイアシン | mg/100 g | 1 | 0.1 | 0.4 | 0 | 0 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.09 | 0 | 0.02 | 0 | 0 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 10 | 1 | 4 | 0 | 0 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.25 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビオチン | µg/100 g | - | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - | - |
備考 | 全果に対する割合: 20 % | 試料: 缶詰 | シラップ漬(甘味料、酸味料含む)液汁を除いたもの | 試料: 精製油別名: ココナッツオイル |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ココナッツの効果・効能
ココナッツに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
体脂肪の蓄積を抑えダイエットに効果的
ココナッツオイルに含まれる脂肪酸は、体脂肪になりにくい性質を持っています。
脂肪酸は、油の主成分です。ココナッツオイルに豊富に含まれる中鎖脂肪酸(MCT)は、キャノーラ油やオリーブオイルなどに含まれる脂肪酸より吸収・代謝が早いため、脂肪として蓄積されにくいのです。
中鎖脂肪酸は直接肝臓に届くので、一般的な油に含まれる長鎖脂肪酸の約4倍の吸収力を持ち、約10倍の速さで代謝が行われるとも言われています。
ココナッツオイルには約60%もの中鎖脂肪酸が含まれているため、体脂肪が気になる方におすすめの油と言えるでしょう。
認知機能を改善する
ココナッツオイルは、脳の認知機能にも良い影響があると言われてきました。
ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸が肝臓で分解されるとき、ケトン体という物質が生成されます。このケトン体が脳のエネルギー源として利用されると、認知機能にプラスの作用があると考えられているのです。
実際に、ココナッツオイルを摂取することで、アルツハイマー病が目覚ましく改善した例が論文で発表されています。
便通を整える
ココナッツには、便秘予防に効果的な食物繊維が豊富です。
食物繊維は、胃で消化されることなく大腸まで届き、腸のぜんどう運動を活発にして排便を促します。
腸への作用のほか、脂質・糖・ナトリウムなどを体外に排出する働きも認められています。食物繊維が豊富なココナッツは、肥満など生活習慣病の予防・改善にも効果が期待できる食材です。
むくみを解消する
ミネラルの一種であるカリウムには、ナトリウムを体の外に排出する作用があります。塩分の摂りすぎで起こる、むくみなど諸症状の改善が期待できる成分です。
ココナッツにはカリウムが多く含まれており、むくみが気になるときにぜひ摂取しておきたい食材と言えます。
また、カリウム以外にも、カルシウム・マグネシウム・リン・鉄分など、健康を維持するうえで大切なミネラルをバランスよく含んでいるのもポイントです。
アロマとして甘い香りでリラックス
ココナッツといえば、食品や飲料に添加する香料としても用いられる、独特の甘い香りが印象的なフルーツでもあります。
この甘い香りの正体は、ラクトンという香り成分によるものです。
ラクトンは、若い女性に特有な甘い香りの成分でもあります。製薬会社が行った試験では、ラクトンを含む香料は他のにおいと比較して、女性らしさ・若々しさ・魅力度の印象をアップさせるという結果も出ています。
人にとって魅力的といえるココナッツの甘い香りは、嗅ぐことでリラックス効果も期待できるでしょう。
ココナッツの調理方法
ココナッツの栄養素を損なわない洗い方や調理方法を解説します。
ココナッツの食べ方
「ヤングココナッツ」などの商品名で流通している若い果実は、固形胚乳の部分を果肉として生で食べることができます。
ココナッツの殻は硬いので、マイナスドライバーや鑿(のみ)など金属製の道具を使って、上部に穴を開けます。
中にはココナッツジュースがたっぷり入っていて、穴にストローを刺してそのまま飲むこともできます。コップなどに移して取っておいて、料理の味付けに使ってもいいですね。
ココナッツジュースが無くなったら、皮の内側に付いている固形胚乳を、スプーンでくりぬいて取り出してください。
ココナッツのおすすめ調理方法
果実からくりぬいた固形胚乳は、フルーツのようにそのまま食べることもできますが、わさび醤油や梅肉ソースを付けて刺身にするのもおすすめです。イカ刺しのようなコリコリとした食感が楽しめます。
ココナッツミルク・ココナッツパウダー・ココナッツオイルなどの加工品は、デザートや料理の味付けに使えます。
ココナッツを調理する際の注意点
ココナッツの殻は非常に硬く、割るためにはドライバーやノコギリなどの工具が必要な場合もあります。このときに手をケガしないよう、細心の注意を払ってください。
殻をうまく割れる自信がない場合は、乾燥ココナッツやココナッツパウダーなど、加工された食材が手軽で便利です。
ココナッツの保存方法
ココナッツの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
生の果実は、基本的に冷蔵庫で保存してください。
注意したいのは、ココナッツオイルの保存方法です。20~25℃以下になると固まる性質を持ったオイルなので、冷蔵庫に入れると固まってしまいます。
固形化と液状化を繰り返しても品質に問題はありませんが、用途によっては固形だと使いづらい場合もあるでしょう。
そのため、ココナッツオイルは基本的に常温で、直射日光の当たらない場所で保管するのがおすすめです。
参考文献
脂肪 / 脂質 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
食物繊維 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
カリウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)
100歳までボケない「ココナツオイル」の野菜レシピ|NIKKEI STYLE
中・長鎖脂肪酸トリグリセリドの体脂肪蓄積性に関する研究|J-STAGE
認知症を予防するための食事法|J-STAGE
女性の「若い頃のニオイ」を解明!「若い頃の甘いニオイ」の正体は「ラクトンC10/ラクトンC11」|ロート製薬