油揚げの栄養と効果効能・調理法・保存法
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油揚げの基本情報、含まれる栄養とその効果効能、カロリーを抑える調理法や、長期保存に適した保存法などを紹介します。
油揚げとは
油揚げ(fride-tofu,Abura-age)は、薄く切った豆腐を油で揚げた加工食品です。
味噌汁の具や炒め物などに用いられるほか、いなり寿司の袋、中に餅などを入れて巾着にするなどして食されます。いなり揚げ、あるいは単に揚げ(お揚げ)とも呼ばれます。
油揚げにするための豆腐は、一般的な豆腐とは違う製法でつくられます。凝固剤には、ニガリ(塩化マグネシウム)より凝固力の強い塩化カルシウムを用い、通常の木綿豆腐よりも固い木綿豆腐をつくります。
その豆腐をさらに圧搾して水分を少なくした状態で、低温の油と高温の油で二度揚げることで、表面の水分を蒸散させます。
なお最近では絹ごし豆腐を使用して作る絹厚揚げや、食感をもっちりとさせたものなども見られます。
油揚げに熱湯をかけて油分を洗い流す調理方法を、「油抜き」と呼びます。油抜きによって、およそ30%ほどの脂質を取り除くことができます。(「油揚げに含まれる成分・栄養素」の表を参照)
油揚げと厚揚げの違い
厚揚げは、豆腐を薄く切ってつくる油揚げと違い、厚めに切ることで中身に生の状態の豆腐を残したものです。生揚げとも呼ばれます。
地方によっては、厚揚げのことを油揚げと呼び、油揚げのことを薄揚げと呼ぶこともあります。
油揚げの用途が多岐に渡るのに対し、厚揚げの用途は比較的少なく、煮物やおでんの種にする以外には、焼いて生姜醤油で食べるのがポピュラーです。
油揚げに含まれる成分・栄養素
油揚げ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。なお比較のため、絹ごし豆腐100gに含まれる成分表を並記しています。
カリウムは絹ごし豆腐の方が多く含まれていますが、その他のカルシウム・リン・鉄・亜鉛・銅・マンガンなどの各種ミネラルは、油揚げに多く含まれています。
またビタミンB1は絹ごし豆腐が豊富で、ビタミンEや葉酸、ビオチンなどの一部ビタミンは油揚げの方が豊富です。
なお、豆腐に含まれる成分は製法によっても大きく異なります。各種豆腐の成分については、「豆腐」記事をご確認ください。
食品名 | 単位 | 油揚げ 生 | 油揚げ 油抜き 生 | 油揚げ 油抜き 焼き | 油揚げ 油抜き ゆで | 生揚げ(厚揚げ) | 絹ごし豆腐 |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 410 | 288 | 398 | 177 | 150 | 56 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 1715 | 1203 | 1664 | 742 | 628 | 234 |
水 分 | g/100 g | 39.9 | 56.9 | 40.2 | 72.6 | 75.9 | 89.4 |
たんぱく質 | g/100 g | 23.4 | 18.2 | 24.9 | 12.4 | 10.7 | 4.9 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 22.4 | 17.5 | 24.1 | 12 | 10.1 | 4.8 |
脂 質 | g/100 g | 34.4 | 23.4 | 32.2 | 13.8 | 11.3 | 3 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 31.2 | 21.3 | 28.8 | 12.5 | -10.7 | -2.7 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 3.89 | 2.74 | 3.73 | 1.68 | -1.61 | -0.48 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 12.44 | 8.07 | 10.77 | 4.34 | -3.07 | -0.56 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 13.56 | 9.6 | 13.01 | 5.98 | -5.51 | -1.58 |
コレステロール | mg/100 g | (Tr) | (Tr) | (Tr) | (Tr) | Tr | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 0.4 | Tr | 0.7 | 0.3 | 0.9 | 2 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 0.5 | 0.3 | 0.4 | 0.1 | 1.2 | 0.9 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.5 | 0.4 | 0.5 | 0.2 | 0.2 | 0.1 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0.8 | 0.5 | 0.7 | 0.4 | 0.5 | 0.2 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.3 | 0.9 | 1.2 | 0.6 | 0.7 | 0.3 |
灰 分 | g/100 g | 1.9 | 1.4 | 2 | 0.9 | 1.2 | 0.7 |
ナトリウム | mg/100 g | 4 | 2 | 4 | Tr | 3 | 14 |
カリウム | mg/100 g | 86 | 51 | 74 | 12 | 120 | 150 |
カルシウム | mg/100 g | 310 | 230 | 320 | 140 | 240 | 57 |
マグネシウム | mg/100 g | 150 | 110 | 150 | 59 | 55 | 55 |
リン | mg/100 g | 350 | 280 | 380 | 180 | 150 | 81 |
鉄 | mg/100 g | 3.2 | 2.5 | 3.4 | 1.6 | 2.6 | 0.8 |
亜鉛 | mg/100 g | 2.5 | 2.1 | 2.7 | 1.4 | 1.1 | 0.5 |
銅 | mg/100 g | 0.22 | 0.16 | 0.22 | 0.07 | 0.22 | 0.15 |
マンガン | mg/100 g | 1.55 | 1.22 | 1.65 | 0.73 | 0.85 | 0.31 |
ヨウ素 | µg/100 g | 1 | Tr | Tr | 0 | - | - |
セレン | µg/100 g | 8 | 6 | 8 | 4 | - | - |
クロム | µg/100 g | 5 | 4 | 6 | 3 | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 97 | 68 | 92 | 22 | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | - | - | - | - | - | - |
β-カロテン | µg/100 g | - | - | - | - | - | - |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | - | - | - | - | - | - |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 1.3 | 0.9 | 1.1 | 0.5 | 0.8 | 0.1 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.1 | 0.1 | Tr |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 12 | 9.6 | 12.4 | 5 | 5.6 | 2.1 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 5.6 | 4.5 | 5.8 | 2.4 | 2 | 0.9 |
ビタミンK | µg/100 g | 67 | 48 | 65 | 26 | 25 | 12 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.06 | 0.04 | 0.04 | 0.01 | 0.07 | 0.1 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.04 | 0.02 | 0.03 | 0.01 | 0.03 | 0.04 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0 | 0.1 | 0.2 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.07 | 0.04 | 0.06 | 0.01 | 0.08 | 0.06 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 18 | 12 | 14 | 3 | 23 | 11 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.07 | 0.04 | 0.04 | 0.02 | 0.17 | 0.09 |
ビオチン | µg/100 g | 7.1 | 4.8 | 6.8 | 3.3 | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | Tr |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 140 | 99 | 210 | - | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
油揚げの効果・効能
油揚げに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
タンパク質
油揚げの原料である豆腐には、大豆タンパク質が豊富に含まれています。
大豆タンパク質は、その他のタンパク質高含有食品に比べて、低糖質かつ低脂質なため、筋肉増強に限らず運動をしていない人のタンパク質補給としても利用しやすい点が特徴です。
タンパク質は、骨や歯、皮膚、血管、内臓、髪の毛など、人体のあらゆる部位に利用されているため、不足するとさまざまな不調につながります。
グリシニン
大豆タンパク質の主要成分のひとつであるグリシニンには、血中のコレステロール値を低下させる働きがあります。
体に取り込まれた大豆タンパク質の一部は、腸管のなかで胆汁と結合して体外へと排出されます。排出された分の胆汁を作るために血中のコレステロールが利用され、コレステロール値が下がるのです。
β-コングリシニン
大豆タンパク質には、コレステロール値を低下させる働きだけでなく、中性脂肪を低減させる効果もあります。
大豆タンパク質の成分でこの働きを担っているのが、もうひとつの主要成分であるβ-コングリシニンです。β-コングリシニンは、大豆に含まれるタンパク質のうち、20%ほどを占めています。
大豆イソフラボン
大豆イソフラボンは、大豆に含まれるイソフラボンの総称です。大豆イソフラボンは、主にダイゼイン、ゲニステイン、グリシステインの3種があります。
大豆イソフラボンは、女性ホルモン「エストロゲン」と似た働きをすることで、女性ホルモンの低下が原因で起こるしわ・たるみ、さらに更年期に起こりがちな骨密度の低下などを予防します。
またイソフラボンには血小板の凝集を抑制する働きがあり、これによって血液をサラサラにして血流の改善効果も期待できます。
サポニン
大豆に含まれる大豆サポニンには、抗酸化作用があります。その他にも、免疫力向上、肥満予防、血流改善、肝機能向上などに効果を発揮します。
ただし、大豆の摂取が直接的にそれらの効果を発揮するかどうかは、まだ十分な研究が行われておらず判断できません。
各種ミネラル
油揚げに多く含まれる、カルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛・リンなどの各種ミネラルは、骨を強く維持する働きがあります。
その他に、鉄・マグネシウム・亜鉛は互いに働き合って貧血を予防する働きも。これらのミネラルは偏らずバランスよく摂取することが大切なため、まとめて摂取できる豆腐は貧血予防に効果的です。
ビタミンE
ビタミンEは強い抗酸化作用を持っており、脂溶性の抗酸化成分として、食品以外に医薬品や化粧品にも配合されています。
ビタミンEを摂取することで、血行が促進され、血液が滞ることで起こるくすみやクマ、肌荒れによる毛穴の開きを改善する効果があります。
油揚げの調理方法
油揚げの栄養素を損なわない洗い方や調理方法を解説します。
油揚げのおすすめ調理方法
油揚げは油分をたっぷり含んでいるため、栄養が豊富な一方、日常的に相当量を食べるとなるとカロリーが気になります。
そこで、油揚げを食べる際はなるべく油抜きをしましょう。油抜きすることで、カロリーをおよそ70%まで抑えることができます。
油揚げを油抜きする方法
油抜きする方法はいくつかあります。
沸かした熱湯をたっぷりかける、湿らせたキッチンペーパーで包んで電子レンジで加熱する、鍋に張ったお湯にくぐらせるなどの方法があります。
なお湯を使って油抜きする際は、調理する前に余分な水気を拭きとりましょう。
油揚げの保存方法
油揚げは、冷蔵保存すると傷みやすいため、長期保存するなら冷凍保存が適しています。
冷凍保存する前に油抜きをしておくことで、より長期保存が可能になります。短期的な保存であれば、そのままラップに包んで冷凍するだけでも構いません。