アルギニンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法

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栄養素

アルギニンの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。

アルギニンとは

アルギニン(Arginine)はアミノ酸の一種です。人間の体内でも合成される成分なので、非必須アミノ酸に分類されます。しかし合成量がほかの非必須アミノ酸に比べて少ないため、準必須アミノ酸と呼ばれることもある栄養素です。

特に、アルギニンの合成量が減る原因のひとつが加齢です。40代では、10代の約半分以下まで合成量が減ってしまうと言われています。アルギニンは成長ホルモンの分泌や、体の疲労回復に作用する栄養素なので、不足分を食品から摂取するのが好ましいです。

ほかにも成長期や運動時、ケガや病気などで体力を消耗すると、合成量が足りなくなる恐れがあるので注意しましょう。また、うつ病患者はアルギニンの合成量が減ることが研究でも明らかになっています。

アルギニンとタウリンの違い

アルギニンと類似する栄養素として挙げられるのが、タウリンです。

タウリンもアルギニンと同じくアミノ酸の一種で、疲労回復作用を持ちます。肝臓の働きを活発にする働きを活かし、医薬部外品の栄養ドリンク剤によく含まれている成分です。これには天然成分ではなく、化学合成されたタウリンが含まれています。

タウリンとアルギニンの違いは食薬区分です。

アルギニンは食品に分類される成分なので、健康食品からスポーツ飲料まで幅広く活用されています。一方、タウリンは日本でもともと医薬品として使用されてきた歴史があることから、化学合成されたタウリンは医薬部外品にしか使用できません

ただし日本以外の国では合成タウリンは食品に分類されているため、エナジードリンクをはじめとした清涼飲料水やサプリメントにもタウリンを配合できます。

そのため海外製のエナジードリンクを日本で販売する場合は、合成タウリンを同じ作用を持つアルギニンに変えて販売しています。

アルギニンの効果・働き

アルギニンの効果・効能について解説します。

成長ホルモンの分泌促進

アルギニンは、脳下垂体を刺激して成長ホルモンの分泌を促す作用があります。成長ホルモンは体の成長に関わる大事な物質です。体内で十分な量が分泌されることで、筋肉増強のサポートや代謝アップにつながると考えられます。

成長ホルモンの分泌量は、加齢・運動不足・ストレス・睡眠不足などで減少することがわかっているので、年齢が重ねた人や生活習慣が乱れている人ほど意識的にアルギニンを摂取したほうがよいでしょう。

一方で近年、アルギニンがもつ成長ホルモンの分泌促進作用に関連して、身長を伸ばす効果をうたったサプリメントが散見されます。しかし、アルギニンをはじめとする成長ホルモン分泌促進作用をもった成分を配合したサプリメントの効果については、日本小児内分泌学会が科学的立場からの評価をおこなった見解の中で、明確に否定されています。

資料によれば、低身長の子どもたちを対象に、1年間にわたって成長ホルモン分泌促進薬を投与したところ、偽薬(プラセボ)群、低用量群、高用量群の平均成長率には統計的に全く差がなく、もともとの成長率以上には身長が伸びないことが科学的に証明されたとのことです。

参考:「身長を伸ばす効果がある」と宣伝されているサプリメント等に関する学会の見解(2013年3月29日公表)|日本小児内分泌学会

疲労回復

疲労の原因のひとつは、人間の体内で起こるTCAサイクルの不調と言われています。TCAサイクルは体内でエネルギーを生み出すシステムで、炭水化物・脂質・タンパク質を分解してエネルギーに変えています。

このTCAサイクルを阻害する要因は、体内で発生するアンモニアです。運動中やエネルギーを消費する過程で多く発生しますが、アルギニンはこのアンモニアを除去する働きがあります。加えてアルギニンから代謝されるクレアチンリン酸がエネルギー貯蔵物質となり、活力アップもサポートしてくれるのです。

さらに肝機能を活性化させる作用があるので、脳の疲労回復にも役立ちます。なお、疲労回復に役立つおすすめの食べ物や飲み物については、下記記事もご覧ください。

疲労回復におすすめの食べ物・飲み物と疲労をためない生活習慣|NANIWA SUPLI MEDIA

免疫力アップ

アルギニンは、免疫細胞であるマクロファージの活性化を促進してくれます。マクロファージは白血球の一種で、細菌やウイルスを処理する働きがある物質です。

さらにアルギニンの摂取は、体内で一酸化窒素の生成を促します。一酸化窒素には細菌やウィルスに対する抵抗力アップ作用があり、免疫力アップをサポートしてくれるでしょう。

下記記事では、その他の免疫力を高める食べ物・飲み物について解説しています。風邪やインフルエンザなどの予防にお役立てください。

免疫力を高める食べ物・飲み物と心がけたい生活習慣|NANIWA SUPLI MEDIA

スムーズな血流の促進

アルギニンは一酸化窒素を増やし、血管を拡張させる作用を持ちます。ある研究では、アルギニンを経口摂取したあとに、被験者の収縮期血圧と拡張期血圧が低下しました。

この研究からアルギニンの摂取は動脈硬化の予防に期待でき、心筋梗塞や脳梗塞などの生活習慣病も防ぐと考えられます。また、血流アップによって毛細血管まで温かい血液を送ることができるので、冷え性予防にも役立つでしょう。

一酸化窒素は運動不足やストレスなどで生産量が減ると言われているので、アルギニンを効率よく摂取するのが大切です。

高血圧の予防・改善に役立つ食べ物の詳細は、下記記事でご確認ください。

高血圧の予防・改善におすすめの血圧を下げる食べ物 | NANIWA SUPLI MEDIA

肌荒れ予防

肌が乾燥する原因は、角質層の水分不足です。角質層の潤いはNMF(Natural Moisturizing Factor)と呼ばれる天然保湿成分によって保たれており、その約40%をアミノ酸が占めていると考えられています。

アミノ酸の一種であるアルギニンは角質層を保湿する効果が期待され、乾燥による肌荒れを防いでくれるでしょう。

肌荒れ予防に役立つ食べ物・飲み物の詳細は、下記記事からご覧ください。

肌荒れの予防・改善におすすめの食べ物・飲み物 | NANIWA SUPLI MEDIA

妊娠をサポート

アルギニンは男女双方において、不妊治療への効果が期待されています。

女性にとっては子宮内膜の増加や、血流アップ作用があると考えられています。研究で子宮内膜が薄く、子宮放射状動脈抵抗値が高い患者にL-アルギニンを服用してもらったところ、いずれの数値も改善が見られました。また、卵母細胞や胚の増加作用も研究で明らかになっています。

一方、男性にとってはアルギニンの血流改善作用によって、男性ホルモンの分泌低下に伴って起きるEDの症状の改善に役立つと考えられています。

アルギニンが不足・欠乏すると起こる症状

アルギニンは成長ホルモンの分泌促進や、一酸化窒素の増やす働きがあるため、不足することで体の成長阻害や生活習慣病のリスクが高まると考えられます。

アルギニンは体内で生成できるアミノ酸ではありますが、加齢や運動によって減ってしまいます。健康的な体を維持できるよう、意識的に摂取するのが望ましいと言えるでしょう。

アルギニンを過剰摂取すると起こる副作用

アルギニンを過剰摂取すると起こる症状は次の通りです。

  • 下痢
  • 胃痛
  • 血圧の低下
  • アレルギー症状の悪化

アルギニンはアルカリ性の成分なので、過剰摂取は消化器官に影響を及ぼす場合があります。血圧を低下させる作用もあるため、低血圧の人は摂取量に気をつけましょう。

ただし通常の食事でアルギニンの過剰摂取が起きることはほとんどないと考えられます。サプリメントやドリンク剤の場合は、摂り過ぎてしまうケースがあるため注意が必要です。

また、アミノ酸はバランスよく摂取することで、体内で効率よく働いてくれます。特定のアミノ酸だけを摂取しすぎるのは避けましょう。

アルギニンの1日の摂取目安量

アルギニンの摂取量は厚生労働省で明確に定められていませんが、体内で効率よく働くには1日あたり2000~4000mg程度摂取するのが望ましいと考えられています。

アルギニンを多く含む食品

アルギニンを多く含む食品は次の通りです。

順位食品名成分量100gあたりg
1ぶた [その他] ゼラチン8100
2だいず [その他] 大豆たんぱく 分離大豆たんぱく 塩分無調整タイプ6900
3とびうお 煮干し5000
4とびうお 焼き干し4600
5だいず [豆腐・油揚げ類] 凍り豆腐 乾4400
6(かつお類) 加工品 かつお節4400
7(かつお類) 加工品 削り節4400
8だいず [その他] 湯葉 干し 乾4300
9あさ 乾3700
10うし [加工品] ビーフジャーキー3500
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ただし、食事だけで1日に必要なアルギニンを摂取しようとすると、カロリーオーバーやエネルギーの摂り過ぎを招く恐れがあるので注意しましょう。サプリメントやドリンク剤なども併用して、足りない分を補う方法がおすすめです。

アルギニンを効率よく摂取する方法

最後にアルギニンの摂取タイミングや、効率よく摂取するための方法について解説します。

おすすめの摂取タイミング

アルギニンを摂取するタイミングは、寝る前の空腹時がおすすめです。成長ホルモンは睡眠中にもっとも分泌が盛んになるため、この時間帯に栄養素を取り込むことで効率よく体の中で作用してくれます。

また、アルギニンは運動によって体内の生成量が減ってしまうため、筋トレ前後のタイミングも効果的です。

シトルリンとの相乗効果

アルギニンと合わせて摂取する栄養素は、同じくアミノ酸の一種であるシトルリンがおすすめです。シトルリンはスイカやきゅうりなどウリ科の植物に多く含まれます。アルギニンと同様、体内で一酸化窒素を増やす働きのある栄養素です。

この2つの成分は体内で互いに転換と再合成を繰り返すため、同時摂取することで一酸化窒素の合成サイクルをさらに早めてくれます。 1:1 の摂取量がもっとも効果的と言われており、研究でも2つの成分を同量摂取したあとに体内の一酸化窒素の増加が確認されました。

参考文献

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