わらびの栄養と効果効能・調理法・保存法
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わらびの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、わらびに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
わらびとは
わらびとは、シダ科の植物で山菜の一種です。全国各地の山に自生しており、葉が開く前の新芽を食します。しゃきしゃきとした食感と、とろりとした舌触りが特徴の食品です。
地域によっては「わらびな」や「さわらび」とも呼ばれ、日本では万葉集にも登場するほど古くから親しまれてきました。旬時期は春で、3月から7月にかけて各地域で収穫されます。おおよそ3月下旬ごろから九州で旬を迎え、気温の高まりとともに本州や北海道で順に旬が訪れます。
主な生産地は山形県・新潟県・福島県など東日本の地域です。農林水産省の「令和元年特用林産基礎資料」によれば、山形県が全体収穫量の約56%を占めています。わらびの料理はおひたしや煮物が一般的ですが、名産地の山形県ではわらびを細かくたたいた「わらびたたき」が有名です。
また、わらびは若芽が食用されるだけでなく、地下茎も食品として利用されてきました。根元に豊富に含まれるでんぷんはワラビ粉に加工され、わらび餅の材料となっています。
わらびの種類
採れたてのわらびは山菜採りや直売所などで手に入りますが、普段の生活ではスーパーで市販されている加工品が使いやすいでしょう。以下に加工品の種類を紹介します。
乾燥わらび
乾燥わらびは、わらびを天日干しして乾燥させた製品です。あく抜きされていない製品もあるので、水で戻しながら下処理を行ないましょう。
一般的な下処理方法は、水に浸けてから湯がく方法です。乾燥わらびを半日から1日ほど水に浸けたら、たっぷり水を入れた鍋で沸騰直前まで煮て冷まします。その後は、再度水から茹でて冷ますという工程を2回から3回繰り返したら下処理完了です。
水煮わらび
水煮わらびは、あく抜きしたわらびを水で煮た加工品です。生のわらびや一部の乾燥わらびのようにあく抜きをする必要がないので、すぐに調理ができます
ただし加熱処理している分、食感のやわらかい製品が多いようです。
塩蔵わらび
塩蔵わらびは、わらびを塩で漬け込んだ加工品です。塩漬けされた時点であく抜きが完了しているので、塩抜きを行なえばそのまま調理に使えます。
まず水を入れた鍋でわらびを沸騰寸前まで煮たら、落し蓋をして冷ましましょう。冷めたら水を入れ替えて2時間から3時間ほど置いておきます。この状態で食べてみて、まだ塩が残っていればさらに水を替えて様子を見てください。
わらびに含まれる成分・栄養素
わらび100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
わらびは食物繊維が豊富な分、ぜんまいやふきなどに比べると糖質が少なめです。カロリーも山菜類の中では低い傾向にあります。
また、ビタミンE・ビタミンB2・葉酸などのビタミンが多く含まれています。ビタミンAと同様の働きをするβ‐カロテンも含まれているので、栄養価の高い食品と言えるでしょう。
食 品 名 | 単位 | 生わらび 生 | 生わらび ゆで | 干しわらび 乾 | |
廃 棄 率 | % | 6 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 80 | 53 | 888 | |
kcal | 19 | 13 | 216 | ||
水 分 | g | 92.7 | 95.2 | 10.4 | |
タンパク質 | アミノ酸組成によるタンパク質 | g | 1.8 | -1.1 | -14.5 |
タンパク質 | g | 2.4 | 1.5 | 20 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | - | - | - |
コレステロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
脂質 | g | 0.1 | 0.1 | 0.7 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | - | - | - |
g | |||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | - | - | - | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 1 | 0.4 | 8.9 | |
* | * | * | |||
食物繊維総量 | g | 3.6 | 3 | 58 | |
糖アルコール | g | - | - | - | |
炭水化物 | g | 4 | 3 | 61.4 | |
有機酸 | g | - | - | - | |
灰分 | g | 0.8 | 0.2 | 7.5 | |
無機質 | ナトリウム | mg | Tr | Tr | 6 |
カリウム | mg | 370 | 10 | 3200 | |
カルシウム | mg | 12 | 11 | 200 | |
マグネシウム | mg | 25 | 10 | 330 | |
リン | mg | 47 | 24 | 480 | |
鉄 | mg | 0.7 | 0.6 | 11 | |
亜鉛 | mg | 0.6 | 0.5 | 6.2 | |
銅 | mg | 0.13 | 0.06 | 1.2 | |
マンガン | mg | 0.14 | 0.08 | 1.63 | |
ヨウ素 | μg | - | - | - | |
セレン | μg | - | - | - | |
クロム | μg | - | - | - | |
モリブデン | μg | - | - | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | 6 | 5 | 55 | |
β|カロテン | μg | 210 | 160 | 1300 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 4 | 3 | 31 | |
β|カロテン当量 | μg | 220 | 160 | 1300 | |
レチノール活性当量 | μg | 18 | 13 | 110 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 1.6 | 1.3 | 4.6 | |
β-トコフェロール | mg | 0.1 | 0.1 | 0.2 | |
γ-トコフェロール | mg | 0.1 | 0.1 | 1.7 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンK | μg | 17 | 15 | 180 | |
ビタミンB1 | mg | 0.02 | Tr | 0.12 | |
ビタミンB2 | mg | 1.09 | 0.05 | 0.46 | |
ナイアシン | mg | 0.8 | 0.4 | 5.1 | |
ナイアシン当量 | mg | 1.3 | -0.7 | -9.3 | |
ビタミンB6 | mg | 0.05 | 0 | 0.06 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | 0 | |
葉 酸 | μg | 130 | 33 | 140 | |
パントテン酸 | mg | 0.45 | 0 | 2.7 | |
ビ オ チ ン | μg | - | - | - | |
ビタミンC | mg | 11 | 0 | 0 | |
アルコール | g | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0 | 0 | |
備 考 | 廃棄部位: 基部硝酸イオン: Tr | 基部を除いたものゆでた後水冷し、水切りしたもの硝酸イオン: 0 g | 硝酸イオン: Tr |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
わらびの効果・効能
わらびに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
ビタミンB2は発育のビタミン
わらびに含まれるビタミンB2は皮膚や髪の発育を促す作用があるため、発育のビタミンと呼ばれます。とくに成長期の子どもにとっては重要な栄養素で、欠乏すると成長障害を引き起こすと言われています。
また、肌荒れやニキビを抑制する働きから、美容のビタミンとしての一面も。大人にとっても大切な栄養素と言えるでしょう。
ビタミンB2の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
食物繊維の整腸作用
わらびには食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維は胃で消化・吸収されず、大腸まで到達する栄養素です。腸のぜん動運動を促したり、腸内細菌のエサになったりすることで、整腸作用が期待できます。
また、脂質や糖などを吸着して体外へ排出する働きもあることから、肥満や糖尿病予防としても注目されている成分です。
食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンEやβ‐カロテンの抗酸化力
わらびには、強い抗酸化作用を持つビタミンEやβ‐カロテンが多く含まれています。抗酸化作用とは体内で発生する活性酸素の働きを抑えたり、活性酸素そのものを除去したりする働きのことです。
活性酸素は過剰に発生すると脂質の酸化を促進し、動脈硬化を引き起こす過酸化脂質の原因となります。ほかにもガンや老化の原因となる物質なので、抗酸化物質の摂取は健康にとってとても大切です。
ビタミンEの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
葉酸が神経管閉鎖障害を抑制
わらびに含まれる葉酸はDNAの合成に関わり、細胞増殖を促進する物質です。妊娠初期に葉酸が不足すると胎児の神経管閉鎖障害を招くので、妊婦は積極的に葉酸を摂取する必要があります。
ただし、わらびには発がん性物質のプタキロサイドが含まれているので、あく抜きが欠かせません。水溶性のプタキロサイドは水に溶けやすく熱に弱い性質があるため、わらびを水に浸したり茹でたりすれば安心して食べることができます。
ただし妊婦が食べれるからと言って、わらびの食べ過ぎには注意しましょう。基本的にあらゆる食品から栄養素をまんべんなく摂取することが理想です。
葉酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
わらびの食べ方や注意点
わらびの栄養素を損なわないあく抜き方法・調理方法・食べ方などを解説します。
わらびの選び方
新鮮なわらびを見分けるには、産毛の有無が重要です。産毛がたくさんついているものは鮮度が高いと言われています。
茎は緑色ものを選びましょう。茶色く変色しているものは鮮度が落ちてしまっています。さらに切り口が茶色に変色していないかも、新鮮さを見極めるポイントです。茎が太く短いわらびもやわらかく、よりおいしく食べられるでしょう。
また、新芽を採るわらびは穂先がU字型に曲がった状態で収穫されます。首が上を向いたものは育ちすぎているため、食感が硬く味が落ちている可能性があります。
わらびのあく抜き方法
わらびは毒性のあるプタキロサイドが含まれているため、十分なあく抜きが必要です。毒性物質を多く摂取すると中毒症状に見舞われ、最悪の場合は命に関わりますので注意しましょう。以下の手順に沿って、しっかりあく抜きを行なえば安全に食べることができます。
まず鍋にたっぷりの水を沸騰させ、重層か木炭とともにわらびを入れます。その状態で一度加熱し、沸騰寸前で火を止めましょう。落し蓋をして、冷めたら一度水を取り替えます。その状態でひと晩置いたら完了です。
または重曹を振りかけたわらびに熱湯を注ぐ方法もあります。その場合はお湯をかけた後に落し蓋をしてひと晩置き、黒っぽい水が出なくなるまで適宜水を取り替えます。つまんでみて、わらびがやわらかければあく抜きができている証拠です。
加熱しすぎないのがコツ
わらびは生食できないので必ず加熱する必要がありますが、熱しすぎないことがおいしく食べるコツです。加熱しすぎるとわらび特有の食感が失われてしまいます。あく抜きをする際は、沸騰させないように注意しましょう。
油を使った料理がおすすめ
わらびにはビタミンEやβ‐カロテンなど、脂溶性の栄養素が多く含まれています。これらの栄養素を効率よく摂取するには、油を使うのがおすすめです。脂溶性の栄養素は油に溶けやすく、油と一緒に摂取すると吸収効率が高まります。
ビタミンEやβ‐カロテンを積極的に摂取したいときは、茹でるより油で炒めるほうがよさそうです。わらびの代表的な料理であるナムルはごま油で和える料理なので、栄養摂取に適した調理方法と言えるでしょう。
わらびの保存方法
わらびの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
購入した日にあく抜きが基本
生のわらびは足が早いので、なるべく早く食べきるようにしましょう。また、購入したその日のうちにあく抜きをするのが基本です。
あく抜き後は冷蔵庫で2日から3日ほど日持ちます。それより長期保存したい場合は以下の方法をおすすめします。
冷蔵保存
冷凍保存で長持ちさせる場合は、あく抜きしたわらびを水に入れた状態で保存します。適宜水を取り替えながら保存すると、約1週間ほど持ちます。
調理する前はよく洗ったあとで、水に20分程度さらしてから使いましょう。
冷凍保存
冷凍保存する場合もあく抜きする必要があります。保存容器にわらびと水を一緒に入れて冷凍しましょう。または食べやすい大きさに切ってから保存袋に入れて冷凍する方法もあります。この場合は空気をよく抜いて真空状態にしておくと、冷凍焼けを防ぐことができます。
いずれの場合も保存期間は2ヶ月から3ヶ月程度です。水に浸けた状態で保存したわらびは自然解凍してから調理に使いましょう。保存袋に入れたわらびはそのまま加熱調理に利用できます。