甘酒の栄養と効果効能・調理法・保存法
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甘酒の歴史や主要な品種などの基本情報、甘酒に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
甘酒とは
甘酒(Amazake)は、米・米麹・酒粕を原料とした甘味飲料です。「酒」という名前がついていますが、基本的にはアルコールがほとんど含まれません。市販の甘酒は、アルコール度数が1%未満のソフトドリンクに分類されます。
甘酒の歴史は古く、日本では古墳時代から飲まれていました。「日本書紀」には、甘酒の起源と考えられる「天甜酒(あまのたむざけ)」について記載があります。作り方が容易で、すぐに完成するため「一夜酒(ひとよさけ)」とも呼ばれたそうです。
伝統的な飲み物である甘酒は、主に初詣の際に振舞われるため冬のイメージが強いかもしれません。しかし江戸時代には、夏バテ予防として甘酒を飲む習慣があり、俳句では夏の季語として数えられています。
近年は栄養価の高さから海外でも注目され、オーガニックの玄米から作られた甘酒が流行しています。
甘酒の品種・種類
甘酒は製造方法によって、種類が異なります。
酒粕甘酒
酒粕を水で溶いて、砂糖を加えて作られるのが酒粕甘酒です。
微量ですがアルコールが含まれるので、子供や妊婦、車を運転する前などは注意しましょう。市販品の場合は、原料表示を確認してから購入すると安心です。
米麹甘酒
米麹甘酒は、麹菌の発酵作用を用いて米から作られる甘酒です。発酵の過程で米のデンプンが糖分に変わるため、砂糖を加えずとも優しい甘みがあります。
近年、健康やダイエット面で注目を浴びているのは酒粕甘酒ではなく、この米麹甘酒です。栄養価の高さから「飲む点滴」とも呼ばれています。
甘酒に含まれる成分・栄養素
甘酒100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
甘酒にはビタミンB群や食物繊維、ミネラルが豊富に含まれています。
成分表には記載されていませんが、アミノ酸やブドウ糖も豊富です。とくに体内で生成できない9種類の必須アミノ酸をすべて含んでいるので、甘酒は健康面でも大いに役立つでしょう。
食 品 名 | 単位 | 甘酒 | 米麹 | 酒粕 | |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 322 | 1106 | 904 | |
kcal | 76 | 260 | 215 | ||
水 分 | g | 79.7 | 33 | 51.1 | |
タンパク質 | アミノ酸組成によるタンパク質 | g | -1.3 | 4.6 | -14.2 |
タンパク質 | g | 1.7 | 5.8 | 14.9 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | - | 1.4 | - |
コレステロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
脂質 | g | 0.1 | 1.7 | 1.5 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | -18.3 | 60.3 | - |
g | * | * | |||
利用可能炭水化物(質量計) | g | -16.9 | 55.9 | - | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 18.3 | 59.3 | 19.3 | |
* | |||||
食物繊維総量 | g | 0.4 | 1.4 | 5.2 | |
糖アルコール | g | - | - | - | |
炭水化物 | g | 18.3 | 59.2 | 23.8 | |
有機酸 | g | - | - | - | |
灰分 | g | 0.2 | 0.3 | 0.5 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 60 | 3 | 5 |
カリウム | mg | 14 | 61 | 28 | |
カルシウム | mg | 3 | 5 | 8 | |
マグネシウム | mg | 5 | 16 | 9 | |
リン | mg | 21 | 83 | 8 | |
鉄 | mg | 0.1 | 0.3 | 0.8 | |
亜鉛 | mg | 0.3 | 0.9 | 2.3 | |
銅 | mg | 0.05 | 0.16 | 0.39 | |
マンガン | mg | 0.17 | 0.74 | - | |
ヨウ素 | μg | - | 0 | - | |
セレン | μg | - | 2 | - | |
クロム | μg | - | 0 | - | |
モリブデン | μg | - | 48 | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | - | - | - | |
β|カロテン | μg | - | - | - | |
β|クリプトキサンチン | μg | - | - | - | |
β|カロテン当量 | μg | 0 | 0 | 0 | |
レチノール活性当量 | μg | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | Tr | 0.2 | 0 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンK | μg | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンB1 | mg | 0.01 | 0.11 | 0.03 | |
ビタミンB2 | mg | 0.03 | 0.13 | 0.26 | |
ナイアシン | mg | 0.2 | 1.5 | 2 | |
ナイアシン当量 | mg | -0.6 | 2.8 | -5.3 | |
ビタミンB6 | mg | 0.02 | 0.11 | 0.94 | |
ビタミンB12 | μg | - | 0 | 0 | |
葉 酸 | μg | 8 | 71 | 170 | |
パントテン酸 | mg | 0 | 0.42 | 0.48 | |
ビ オ チ ン | μg | - | 4.2 | - | |
ビタミンC | mg | 0 | 0 | 0 | |
アルコール | g | - | - | 8.2 | |
食塩相当量 | g | 0.2 | 0 | 0 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
米麹甘酒の効果・効能
ここからは、栄養価の高さで注目を集める米麹甘酒について、含まれる栄養素やその効果・効能・働きを解説します。
豊富な栄養素でエネルギー補給
米麹甘酒が「飲む点滴」と呼ばれる由縁は、その栄養価の高さにあります。甘酒には、ブドウ糖・9種類の必須アミノ酸・ビタミン・ミネラルなど、点滴と同様の成分が含まれています。
米麹甘酒に含まれるブドウ糖は麹菌によって分解されているため、吸収効率が良い点も魅力。体内ですぐエネルギー源となり、身体を動かす活力を生み出してくれます。風邪を引いたときの栄養補給などにも活躍します。
ビタミンB群がダイエットに効果的
甘酒に多く含まれるビタミンB群は、体内の代謝をサポートする栄養素です。
例えばビタミンB1はブドウ糖をエネルギーに変えたり、ビタミンB2やナイアシンは糖と脂質の代謝を促したりなど、体内で栄養素を効率よく変換してくれます。
糖や脂質が余すことなくエネルギーに使われれば、余分な脂肪の蓄積を抑えることにもつながります。
酵素がダイエットをさらに後押し
米麹甘酒に含まれる麹菌には、さまざまな酵素が含まれています。なかでもダイエットに役立つと考えられるのがリパーゼです。
リパーゼには中性脂肪を分解する作用があります。分解された脂肪はFFA(遊離脂肪酸)となり、体内でエネルギー源として活用されるため、ダイエットに効果的と言えるでしょう。
ビオチンが美肌と美髪をサポート
甘酒に含まれるビタミンの中でも、とくに注目したいのがビオチンです。
ビオチンは皮膚疾患の治療薬としても使われる成分でもあり、アレルギー症状の緩和や正常な免疫機能維持に役立つと考えられています。花粉症やアトピー性皮膚炎の緩和作用も期待されている栄養素です。
また、髪や頭皮用のサプリメントにもよく配合されているため、健やかな頭皮環境の維持をサポートしてくれるでしょう。
食物繊維とオリゴ糖で便秘解消
米麹甘酒には、食物繊維やオリゴ糖も豊富に含まれています。どちらも腸内で善玉菌のエサとなるため、継続摂取することで腸内環境の改善が期待できるでしょう。
また、善玉菌の割合を増やすことで、免疫力アップにもつながります。
米麹甘酒の飲み方や注意点
米麴甘酒の栄養素を損なわない調理方法や効果的な飲み方、注意点などを解説します。
温めるときは人肌程度で
米麴甘酒は温度が高くなりすぎると、含まれる酵素の働きが失われてしまいます。温める場合は人肌程度を目安にすると良いでしょう。
ほかにも氷を入れてロックで飲んだり、ソーダで割ったりなど、甘酒はいろいろな飲み方で楽しむことができます。
米麹甘酒の作り方
今やコンビニでも手軽に手に入る甘酒ですが、自宅でも簡単に作ることができます。用意するのは、米麹・炊いた米・水です。
まず炊きたての米に水を混ぜて60度以下に冷ました後、米麹を加えます。麹菌は熱に弱いので、温度は55度から60度程度を維持するのがポイントです。その状態で6時間ほど保温すれば、米麹甘酒の完成です。
また、米麹とお湯を混ぜて作る簡易的な甘酒レシピもあります。この場合も酵素の働きが損なわれないよう、55度から60度の温度をキープすることが大切です。
甘酒を飲むタイミングは朝がおすすめ
ダイエット中なら、朝に飲むのがおすすめです。または朝食の代わりとして取り入れても良いでしょう。
ビタミンB群が豊富に含まれる米麴甘酒は、早い時間帯に飲むことで基礎代謝アップをサポートしてくれます。また、すばやくエネルギー源になってくれるので、身体の活性化に役立つでしょう。
甘酒の飲み過ぎには注意
健康に良いとされる甘酒ですが、糖分が多いため過剰摂取には注意しましょう。
砂糖を加えて作られる酒粕甘酒だけでなく、米麹甘酒も糖分が多く含まれます。米麹甘酒のブドウ糖は吸収されやすい状態になっているので、飲みすぎると血糖値の急上昇を招きます。
1日の摂取量目安はコップ1杯(200ml)程度。これはお茶碗1杯分のご飯とだいたい同じカロリーになります。ダイエット目的の人は、夜遅い時間帯に飲むのは避けたほうが無難でしょう。
調味料として活用
米麹甘酒の味が苦手な人は、調味料として使う方法もあります。甘みを活かして、みりんや砂糖の代わりとして活用してみましょう。アリシンを含む玉ねぎやにんにくと合わせると、ビタミンB1の吸収を高められるのでおすすめです。
また、米麹甘酒に肉や魚を漬け込む調理方法も。酵素の力でコクが増すだけでなく、身もやわらかくなります。
米麹甘酒の保存方法
甘酒の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
市販の甘酒は、開封前は常温で保存が可能です。開封したら冷蔵保存か冷凍保存するようにしましょう。
冷蔵保存の場合
開封後に冷蔵庫で保存する場合は、菌の繁殖を防ぐため口をしっかり閉じるのがポイントです。甘酒は庫内の臭いを吸収しやすいため、臭い移りも同時に防げます。
保存期間の目安はだいたい1週間程度です。また、火入れされている甘酒はさらに保存期間が長く、3週間ほど持ちます。
冷凍保存の場合
甘酒を冷凍保存するなら、製氷皿が手軽です。製氷皿に甘酒を注ぎ、そのまま凍らせましょう。
保存期間の目安はおおよそ2ヶ月ほどです。飲むときは冷蔵庫で時間をかけて自然解凍させると、味も栄養も損ないません。