ししとうの栄養と効果効能・調理法・保存法
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ししとうの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、ししとうに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ししとうとは
ししとうはナス科トウガラシ属の果実で、ピーマンや唐辛子の仲間です。
青唐辛子・赤唐辛子などの辛味種に対し、辛味の少ないししとうは甘味種にあたります。別名で「甘とうがらし」とも呼ばれる野菜です。
日本におけるししとうの正式名称は「獅子唐辛子(ししとうがらし)」。凹凸のある見た目が獅子の顔を想像させることから名づけられたと言われています。
旬時期は6月から8月にかけての夏です。中南米が原産地と言われており、比較的温かい地域のほうが栽培に向いています。日本で特に栽培が盛んなのは高知県で、全国収穫量の40%近くを誇る名産地です。
ピーマンと同じく、成熟させる前に収穫されるため緑色の見た目が一般的ですが、熟すと赤いししとうになります。
ししとうの品種・種類
ししとうと同じ甘とうがらしの品種をいくつか紹介します。
山科とうがらし
山科とうがらし(やましなとうがらし)は京都の伝統野菜のひとつです。京都市山科地区で主に栽培されていたことから「山科」の名がつきました。
外見はししとうに似ていますが、先端がとがっているのが特徴。辛味が少なく食べやすい品種です。
ひもとうがらし
ひもとうがらしは、奈良の伝統野菜である大和野菜に指定されている品種です。
細長い形状が特徴で、見た目から「水引とうがらし(みずひきとうがらし)」とも呼ばれます。辛味はほとんどありません。
万願寺とうがらし
万願寺とうがらし(まんがんじとうがらし)は、「とうがらしの王様」とも呼ばれるほどサイズが大きく味の良い品種です。京野菜のひとつで、京都府の満願寺地区における固定種になります。
万願寺とうがらしを熟成させて、赤く色づかせた赤万願寺とうがらしもあります。
伏見甘とうがらし
古くから京都の伏見地区で栽培されてきたのが、伏見甘とうがらし(ふしみあまとうがらし)です。京都の伝統野菜に指定されています。辛味がなく、甘いため食べやすい品種です。
京都では伏見甘とうがらしの葉も、煮物や佃煮にして食べる風習があります。
ししとうに含まれる成分・栄養素
ししとう100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
ししとうは、β-カロテンがとりわけ多く含まれています。ビタミンC・ビタミンB6・カリウムなどの栄養素も豊富なので、ビタミンとミネラルの多い野菜のひとつと言えるでしょう。
また、フラボノイドと呼ばれるポリフェノールの一種も含まれています。近年、ポリフェノールはその健康作用が注目されているため、ししとうは食生活にうまく取り入れたい食品です。
食 品 名 | 単位 | ししとう 生 | ししとう 油いため | |
廃 棄 率 | % | 10 | 0 | |
エネルギー | kJ | 102 | 210 | |
kcal | 25 | 51 | ||
水 分 | g | 91.4 | 88.3 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | 1.3 | -1.3 |
たんぱく質 | g | 1.9 | 1.9 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | -0.1 | -2.9 |
コレステロール | mg | 0 | 0 | |
脂質 | g | 0.3 | 3.2 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | 1.2 | -1.2 |
g | ||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | 1.2 | -1.2 | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 2.6 | 2.8 | |
* | * | |||
食物繊維総量 | g | 3.6 | 3.6 | |
糖アルコール | g | - | - | |
炭水化物 | g | 5.7 | 5.8 | |
有機酸 | g | 0.3 | 0.3 | |
灰分 | g | 0.7 | 0.8 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 1 | Tr |
カリウム | mg | 340 | 380 | |
カルシウム | mg | 11 | 15 | |
マグネシウム | mg | 21 | 21 | |
リン | mg | 34 | 39 | |
鉄 | mg | 0.5 | 0.6 | |
亜鉛 | mg | 0.3 | 0.3 | |
銅 | mg | 0.1 | 0.1 | |
マンガン | mg | 0.18 | 0.18 | |
ヨウ素 | μg | 0 | 0 | |
セレン | μg | 4 | 4 | |
クロム | μg | 1 | 1 | |
モリブデン | μg | 4 | 4 | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | 0 | 0 | |
β|カロテン | μg | 530 | 540 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 0 | 0 | |
β|カロテン当量 | μg | 530 | 540 | |
レチノール活性当量 | μg | 44 | 45 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 1.3 | 1.3 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | |
ビタミンK | μg | 51 | 52 | |
ビタミンB1 | mg | 0.07 | 0.07 | |
ビタミンB2 | mg | 0.07 | 0.07 | |
ナイアシン | mg | 1.4 | 1.5 | |
ナイアシン当量 | mg | 1.8 | -1.9 | |
ビタミンB6 | mg | 0.39 | 0.4 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | |
葉 酸 | μg | 33 | 34 | |
パントテン酸 | mg | 0.35 | 0.36 | |
ビ オ チ ン | μg | 4.2 | 3.7 | |
ビタミンC | mg | 57 | 49 | |
アルコール | g | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
ししとうの効果・効能
ししとうに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
カリウムで高血圧症予防
ミネラルの一種であるカリウムは、塩分の摂りすぎを調整してくれる栄養素です。カリウムは細胞内液の浸透圧を調整する過程で、余分なナトリウム(塩分)の排出を促します。
過剰な塩分は高血圧との関係が深いと言われているため、カリウムの豊富な食品を摂取することは高血圧症の予防につながるでしょう。
豊富な抗酸化物質が老化を予防
抗酸化物質とは抗酸化作用を持つ栄養素のことで、体内で発生する活性酸素の働きを抑制する作用があります。過剰な活性酸素はがんや動脈硬化などの疾患だけでなく、身体の老化を招く危険性がある物質です。
ししとうにはβ-カロテン・ビタミンC・フラボノイドなどの抗酸化物質が多く含まれているので、身体の老化を防ぐには向いている食品と言えます。
ビタミンB6で貧血予防
ししとうにはビタミンB群のなかでも、とくにビタミンB6が多く含まれています。ビタミンB6は赤血球に存在するヘモグロビンの合成に関わっている栄養素です。貧血予防をサポートする成分として期待できるでしょう。
カプサイシンで冷え性改善をサポート
ししとうには辛味成分のカプサイシンが含まれています。体内での主な働きは、脂肪燃焼作用や新陳代謝を促進する作用です。
さらにカプサイシンを摂取すると、アドレナリンが分泌されます。血流アップにつながるので身体を温め、冷え性改善を助けてくれるでしょう。
カプサイシンは妊婦が摂取しても問題ないと言われるので、栄養価の高いししとうは妊娠中に取り入れたい野菜のひとつです。
ししとうの食べ方や注意点
ししとうの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
ししとうの選び方
ししとうはへたから劣化していくので、新鮮なものを選ぶにはへたの状態を確認しましょう。へたが黒ずんでいるものは鮮度が落ちている証拠なので、へたがしっかりしていて色の鮮やかなししとうを選ぶと良いでしょう。
実がつややかでハリのある状態や、実の先端部分がくぼんでいるものも鮮度が高いししとうと言えます。
なぜ辛いししとうがあるの?
通常よりカプサイシンが多く含まれてしまうと、辛いししとうができあがります。天候の変化や栽培時の栄養不足などでストレスが加わると、辛くなってしまうことがあるようです。
辛いししとうを見分ける方法は諸説ありますが、形がいびつだったり、種が少なくへこんでいたりするししとうは辛味が強い傾向があると言えます。辛味のあるししとうを避けたい場合は、なるべく形がきれいなししとうを選びましょう。
まるごと食べられるししとう
ししとうは実だけでなく、種にも栄養が豊富に含まれています。種までまるごと食べられる野菜なので、栄養素を効率よく摂取するには種を取り除かないようにしましょう。
ただし、へたの部分はほかの部位より辛い傾向があるので、食べないようにしてください。
調理方法のコツ
ししとうには水溶性の栄養素が豊富に含まれているため、茹でたときに成分が溶けだしてしまう可能性があります。長時間水にさらすのも避けた方が良いでしょう。
また、油を使って炒めたり揚げたりする場合は、水溶性の栄養素が損なわれる可能性がありますが、脂溶性の栄養素は効率よく摂取できます。β-カロテンをメインに摂取したいときは、栄養素との相性が良い油を使うようにしてください。
もちろん生のまま食べれば調理による栄養の損失は防げますが、生食は加熱したものに比べ辛味が強くなる傾向があります。生食する場合はなるべく新鮮なものを選びましょう。
加熱調理の注意点
ししとうは炒め・揚げなど加熱調理する際まれに破裂する場合がありますので、しっかりと下処理を行ないましょう。
へたを切り落としたら、つまようじや竹串などで実に穴をあけます。包丁で切り込みを入れても構いません。
ひと手間加えることで、形がきれいなまま安全に調理ができます。
ししとうの保存方法
ししとうの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
保存する場合はへたを取り除かないのがポイントです。へたをカットしてしまうと断面から劣化してしまうので、茎を取り除く程度にしておきましょう。
ししとうは水で洗って水気を拭き取ったら、まとめてキッチンペーパーに包みます。そのまま保存袋に入れて野菜室で保存しましょう。ししとうは寒さに弱い野菜ですが、野菜室で保存することで栄養素の損失をある程度防げます。
約1週間は持ちますが、鮮度が高いうちに食べきってしまうのがおすすめです。
冷凍保存
ししとうは冷凍保存も可能です。冷凍する場合もへたは取り除かず、茎をカットするだけにしましょう。
水でよく洗って水気を拭き取ったあとに、そのまま保存袋に入れます。冷凍庫での保存期間は1ヶ月程度が目安です。
使う際はしばらく常温に置いて解凍すると、包丁が通るようになります。へたを取り除いたり、破裂防止の切り込みを入れたりしてから加熱調理してください。