パパイヤの栄養と効果効能・調理法・保存法
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パパイヤの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、パパイヤに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
パパイヤとは
パパイヤ(papaya)は、中南米などの熱帯・亜熱帯地域を原産地とするフルーツです。冬でも葉が落ちない常葉樹になった実を食べます。
実が熟したものをフルーツパパイヤ、熟す前の青い状態のものを青パパイヤと呼びます。日本ではフルーツパパイヤのイメージが強いですが、原産地である中南米では野菜として青パパイヤを料理に入れて食べています。
パパイヤは世界で年間約1300万トン生産されており、そのうちの約45%はインドです。次いでブラジル、メキシコと中南米での生産量が多く、日本でも沖縄や宮城、鹿児島など暖かい地域で生産されています。
パパイヤの旬は5月~9月です。熱帯地域では通年で収穫されており、輸入品は年間を通してスーパーマーケットに並びます。
パパイヤの熟し具合の目安
パパイヤを選ぶときは、果皮の張りと色、重さに注目しましょう。果皮に張りがあり、ずっしりと実が重いものを選びます。
また、パパイヤは果皮の色で熟度を知れます。果皮が黄色いものを選べばすぐに食べることができ、青みの強いものを選ぶと熟したものより長く保存が可能です。
パパイヤとマンゴーと違い
パパイヤと見た目が似ているフルーツにマンゴーがあります。マンゴーはウルシ科のフルーツで、パパイヤと異なり種が1つで果皮が薄いことが特徴です。
マンゴーの方が酸味と甘味が強く、フルーツとして生食やお菓子に利用されます。また、実から甘い香りがする点がパパイヤとの違いです。
パパイヤの品種・種類
パパイヤは熱帯・亜熱帯の地域で栽培されており、それぞれの土地に適応するように品種改良されています。大きさや形、色の異なる複数種のパパイヤが国内に流通しています。
カポホソロ
カポホソロは、ハワイ島東部・プナ地区のカポホを発祥とするソロ種のパパイヤです。パパイヤらしい黄色い果肉をしており、独特のにおいが強くさっぱりとした味わいをしています。
サンライズソロ
サンライズソロの特徴は、赤みの強いオレンジ色の果肉です。糖度が高く、においが少ないので食べやすいパパイヤといえます。ハワイで多く生産されているハワイの伝統品種ですが、日本でも宮崎や鹿児島で栽培されています。
レインボー
レインボーは、リングスポットウイルスに耐性を持つ遺伝子組み換えパパイヤとして注目されているパパイヤです。
リングスポットウイルスに感染すると果実にリング状の斑ができ、糖度が下がったり収穫量が落ちたりする原因となります。パパイヤ栽培で大きな脅威となるウイルスで、対策としてレインボーが開発されました。
ハワイでは約80%がレインボー種とされ、日本では2009年に食品安全委員会が安全性を確認し、2011年から国内でも流通し始めました。
ウイルスに強いだけでなく、黄色に熟した果実は糖度も高く味がよいことが人気の理由です。また、パパイヤ独特のにおいが少なく、香りが甘いとされています。
カミヤ
カミヤはハワイ諸島にあるオアフ島で栽培される品種で、ハワイ市場だけに流通している希少なパパイヤです。
果皮は黄色みが強く、果肉はオレンジ色をしています。他の品種は果皮の色で熟度を確認できますが、果皮で判断できないカミヤ種は果皮の柔らかさで確認します。
地元ハワイでは人気のパパイヤで、大ぶりで肉厚の果肉がおいしいと評判です。
レッドレディ
レッドレディはその名のとおり、果皮も濃いオレンジになるパパイヤです。矮性(わいせい)品種と呼ばれ、他の品種に比べて樹木の背丈が大きくなりません。そのため家庭でも栽培しやすく、苗としても流通しています。
フルーツとして食べるのが一般的で、果肉がしっかりとしていて甘いのが特徴です。
石垣珊瑚
石垣珊瑚は種なしのパパイヤで、沖縄県石垣島で栽培されています。果実は大きく食べごたえがあり、果皮や果肉はオレンジ色をしています。
大ぶりですが酸味が少なく糖度が高いのが特徴です。パパイヤの独特なにおいも少なく、甘い香りがします。
パパイヤに含まれる成分・栄養素
パパイヤ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
パパイヤにはβ-クリプトキサンチンと呼ばれるβ-カロテンの一種が豊富に含まれています。緑黄色野菜の基準であるβ-カロテン含有量600μgには及ばないものの、完熟パパイヤのβ-カロテン含有量は480μgと非常に多いのが特徴です。
パパイヤはミネラルも豊富で、特にカリウムを多く含みます。カリウムは、ナトリウムとともに体内のバランスを整える役割をするミネラルです。
また、生の完熟パパイヤ100gに含まれているビタミンCは50mgです。これは成人に必要なビタミンCの1日量100mgの半分にあたります。
食品名 | 単位 | パパイア 完熟 生 | パパイア 未熟 生 |
廃 棄 率 | % | 35 | 25 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 38 | 39 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 159 | 163 |
水 分 | g/100 g | 89.2 | 88.7 |
たんぱく質 | g/100 g | 0.5 | 1.3 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | - | - |
脂 質 | g/100 g | 0.2 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.2 | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.06 | -0.03 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.06 | -0.03 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.04 | -0.02 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 9.5 | 9.4 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | -7.1 | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.7 | 0.4 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1.5 | 1.8 |
食物繊維総量 | g/100 g | 2.2 | 2.2 |
灰 分 | g/100 g | 0.6 | 0.5 |
ナトリウム | mg/100 g | 6 | 5 |
カリウム | mg/100 g | 210 | 190 |
カルシウム | mg/100 g | 20 | 36 |
マグネシウム | mg/100 g | 26 | 19 |
リン | mg/100 g | 11 | 17 |
鉄 | mg/100 g | 0.2 | 0.3 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.1 | 0.1 |
銅 | mg/100 g | 0.05 | 0.03 |
マンガン | mg/100 g | 0.04 | 0.02 |
ヨウ素 | µg/100 g | 0 | - |
セレン | µg/100 g | Tr | - |
クロム | µg/100 g | 0 | - |
モリブデン | µg/100 g | 1 | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 67 | 45 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 820 | 140 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 480 | 120 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 40 | 10 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.3 | 0.1 |
β-トコフェロール | mg/100 g | Tr | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0.3 | 0.6 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.02 | 0.03 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.04 | 0.04 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.3 | 0.3 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.01 | 0.01 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 44 | 38 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.42 | 0.55 |
ビオチン | µg/100 g | 0.2 | - |
ビタミンC | mg/100 g | 50 | 45 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - |
重量変化率 | % | - | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
パパイヤの効果・効能
パパイヤに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
ビタミンCが動脈硬化を予防
ビタミンCは、皮膚や血管のコラーゲン繊維を作るために必要なビタミンです。ビタミンCが不足すると、コラーゲンを作れなくなり血管がもろくなります。
ビタミンCには、心臓血管系の病気を予防する効果があります。そのために必要なビタミンCは1日83.4mgです。生の完熟パパイヤには約50mgのビタミンCが含まれており、必要量の約60%に相当します。
また、抗酸化作用により皮膚の炎症を抑え、老化を予防する働きがあることから、美容にもよいと考えられます。
カリウムで高血圧を改善
カリウムは、体液のバランスを正常に保つ重要な役割をするミネラルです。カリウムには食塩に多く含まれるナトリウムの排出を促し、血圧を下げる効果があります。
β-クリプトキサンチンが骨粗しょう症を予防
β-クリプトキサンチンは、パパイヤの他にミカンなどの柑橘類や唐辛子に多く含まれるカロテノイドの一種です。体内でビタミンAに合成されるβ-クリプトキサンチンは、皮膚や目を正常に維持する役割を持っています。
その他にもβ-クリプトキサンチンには、筋肉や骨の健康を維持する働きがあり、特に骨粗しょう症を予防する効果があるとして注目されています。
タンパク質分解酵素・パパインには美容効果も
パパインとは、パパイヤに含まれるタンパク質分解酵素です。体液と同じ中性の酵素で、角質汚れを落とす効果があるとされ、化粧品に利用されています。
パパインのタンパク質を分解する性質を利用して、肉を柔らかくするために使われることもあります。
パパイヤの食べ方
パパイヤの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
パパイヤの洗い方
パパイヤの果皮に農薬が残っている可能性があるため、食べる前にしっかりと流水で洗いましょう。一般的な果物の洗い方で問題ありません。
青パパイヤの下ごしらえ
熟す前の青パパイヤの場合は、下ごしらえが必要です。
洗ったパパイヤを半分に切り、種を取り除きます。ピーラーや包丁で皮を剥いだら、料理に使うサイズに切って水に浸します。10分~15分浸け置き、数回水を取り換えるとよいでしょう。
香りが苦手ならジャムやお菓子がおすすめ
パパイヤを食べる際、生のままなら栄養を損なわずに食べられます。しかし、パパイヤの香りが苦手で生のままでは食べにくい方は、ジャムに加工したりお菓子に利用したりするのがおすすめです。
青パパイヤはシャキシャキ食感を活かして炒め物やサラダに
青パパイヤの場合は、細切りにして炒め物にするとシャキシャキとした食感を楽しめます。また、完熟前でも甘味があるため、サラダにするのもおすすめです。
パパインを活用して肉を柔らかくする方法
パパイヤに含まれるパパインには、肉のタンパク質を分解して柔らかくする効果があります。
パパインは酵素の一種で熱に弱いため、火にかける前に肉と一緒に漬け込みましょう。漬け込む時間は肉の厚さに合わせて調節が必要ですが、一般的には30分~数時間漬け込むと柔らかく仕上がります。
パパイヤを調理する際の注意点
パパイヤを切ると、白い液体が出てきます。これが前述したパパインで、タンパク質を溶かす作用があります。
人の皮膚もタンパク質でできているため、触れると痒みが出ることがあります。洗いながら切るか、ビニールの手袋をしてパパイヤを切るとよいでしょう。
パパイヤを食べる際の注意点
パパイヤに含まれるパパインは、アレルギーを引き起こすアレルゲンとなる可能性があります。パパイヤを食べたときに口の中が痒くなるなどの症状が出たら、すぐに食べるのをやめましょう。
パパイヤの保存方法
パパイヤの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
熟すまでは常温保存
パパイヤは常温で保存すると熟しやすくなります。実が青い場合は、熟すまで時間を置く追熟が必要です。
パパイヤの食べごろは、果皮の色で見分けます。黄緑色の果皮全体が黄色に変わったら食べごろです。また、果実を指で押してへこむくらいの柔らかさなら熟していると判断できます。
パパイヤに含まれる酵素は熱に弱いため、生で食べる方が栄養を損ないません。実が熟したら、冷蔵庫に入れて冷やしてから食べるのがおすすめです。
青パパイヤは冷蔵保存して熟す前に食べる
常温保存したパパイヤは、数日すると熟してきます。熟す前の青パパイヤを食べたい場合は、冷蔵保存すると熟す速度を落とせます。
青パパイヤのまま料理に使いたいときは、冷蔵保存して果皮が黄色くなる前に食べましょう。
完熟パパイヤは冷凍保存も可能
完熟パパイヤは冷凍保存もできます。生で食べるより栄養を保ちにくくなりますが、冷凍パパイヤは夏のデザートにぴったりです。冷凍パパイヤは1カ月以内に食べきるようにしましょう。