オートミール(オーツ麦)の栄養と効果効能・調理法・保存法
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オートミールの基本情報や種類、含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
オートミールとは
オートミール(oatmeal)は、オーツ麦を脱穀して、調理しやすいように潰して乾燥させたものです。オーツ麦は英語名のOatから来ており、日本語では、燕麦(えんばく)と呼びます。
オーツ麦は、小麦・大麦・ライ麦などと同じくイネ科の穀物で、カラスムギ属に分類される一年草です。発芽玄米などと同じ全粒穀物なので、米などの精白した穀類に比べて、糠・種皮・胚芽などに含まれる栄養素を豊富に含んでいます。
オートミールにはさまざまな種類があり、外皮を取り除いただけのもの、押し麦と同じように吸水性を高めたもの、加工してシリアルとして食べられるようにしたものなどが、すべてまとめてオートミールと呼ばれます。
オートミールの種類
オートミールは、精製の段階によっていくつかの種類に分けられます。
オートグローツ
オートグローツ(whole oat groats)は、オーツ麦からもみ殻のみを取り除いたもののこと。白米に対する玄米の関係に当たります。
もみ殻を取り除いただけなので、玄米と比べても非常に調理しづらいオートミールです。そのため、日本でオートグローツの状態で販売されていることはほぼありません。
なお、オーツ麦を調理しやすいように加工したものがオートミールであることから、オートグローツはオートミールの一種とは呼べないと考える場合もあります。
スティールカットオーツ
スティールカットオーツ(steel cut oats)は、オートグローツを食べやすくするため、1粒あたり2~3個に切り刻んだもののこと。カットオーツ、アイリッシュオーツ、ピンヘッドなどとも呼ばれます。
もみ殻以外の部位を一切精麦しておらず、オーツ麦を割っただけのものなので、栄養素を豊富に含んでいます。
ただし、シリアルのように牛乳や豆乳と合わせてそのまま食べるのには向きません。煮るなどの加熱調理に適しています。
スコティッシュオーツ
スコティッシュオーツ(scottish oats)は、スティールカットオーツをより細かく分割したものです。日本ではあまり市販されていません。
ロールドオーツ
ロールドオーツ(rolled oats)は、オートグローツを蒸して柔らかくして、ローラーでプレスしてさらに調理しやすくしたオートミールです。大麦を圧ぺん加工する押し麦と同様の加工が施されています。
日本でオートミールといった場合は、大抵ロールドオーツか、次で紹介するクイックオーツ、インスタントオーツのいずれかを指します。
クイックオーツ
クイックオーツ(quick rolled oats)は、ロールドオーツをさらに火が通りやすくするために細かく砕いたもののことです。
調理が容易な点はメリットですが、ロールドオーツに比べると噛みごたえがなくなるため、食感を活かしたグラノーラにしたい場合は、粒の残っているロールドオーツの方が適しています。
インスタントオーツ
インスタントオーツ(instant rolled oats)は、ロールドオーツを一度加熱してから再度乾燥させたもののことです。一度加熱することで、オーツ麦のデンプンがアルファ化され、消化しやすくなっています。
病人、子ども、老人など、消化に不安のある方に向いている一方で、ロールドオーツの特徴である食感が弱くなっているため、あまり好んで食べられるオートミールではありません。
オーツフラワー(えん麦粉)
オーツフラワー(oat flour)は、オーツ麦を小麦粉などと同じように粉状に加工したものです。
全粒のオーツフラワーは魅力的な栄養価を持っていますが、日本ではほとんど市販されておらず、手に入れるためには海外から取り寄せる必要があります。
オーツブラン(オートブラン)
オーツブラン(oats bran)は、オーツ麦をオーツ粉に精麦したときに、実についている外皮(ふすま:bran)が粉末状になったものです。白米に対する米ぬかに当たります。
食物繊維やミネラルなど、外皮に含まれる栄養素をふんだんに持つ一方で、通常の調理には向きません。パン生地などに混ぜて栄養を添加したり、加工してサプリメントとして利用されたりします。
オートミールに含まれる成分・栄養素
オートミール100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
参考として、大麦・玄米・白米の成分表をそれぞれ並記しています。
食品名 | 単位 | オートミール | 押し麦(大麦) | 玄米 | 白米(うるち米) |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 380 | 340 | 353 | 358 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 1590 | 1423 | 1476 | 1498 |
水 分 | g/100 g | 10 | 14 | 14.9 | 14.9 |
たんぱく質 | g/100 g | 13.7 | 6.2 | 6.8 | 6.1 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 12 | 5.4 | 5.9 | 5.2 |
脂 質 | g/100 g | 5.7 | 1.3 | 2.7 | 0.9 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -5.1 | -1.1 | 2.5 | 0.8 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.94 | -0.36 | 0.62 | 0.29 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -1.8 | -0.12 | 0.83 | 0.21 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -2.09 | -0.56 | 0.9 | 0.31 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 69.1 | 77.8 | 74.3 | 77.6 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 63.1 | 71.2 | 78.4 | 83.1 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 3.2 | 6 | 0.7 | Tr |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 6.2 | 3.6 | 2.3 | 0.5 |
食物繊維総量 | g/100 g | 9.4 | 9.6 | 3 | 0.5 |
灰 分 | g/100 g | 1.5 | 0.7 | 1.2 | 0.4 |
ナトリウム | mg/100 g | 3 | 2 | 1 | 1 |
カリウム | mg/100 g | 260 | 170 | 230 | 89 |
カルシウム | mg/100 g | 47 | 17 | 9 | 5 |
マグネシウム | mg/100 g | 100 | 25 | 110 | 23 |
リン | mg/100 g | 370 | 110 | 290 | 95 |
鉄 | mg/100 g | 3.9 | 1 | 2.1 | 0.8 |
亜鉛 | mg/100 g | 2.1 | 1.2 | 1.8 | 1.4 |
銅 | mg/100 g | 0.28 | 0.4 | 0.27 | 0.22 |
マンガン | mg/100 g | - | - | 2.06 | 0.81 |
ヨウ素 | µg/100 g | 0 | 0 | Tr | 0 |
セレン | µg/100 g | 18 | 1 | 3 | 2 |
クロム | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
モリブデン | µg/100 g | 110 | 8 | 64 | 69 |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | - | - | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | - | - | 1 | 0 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | - | - | 0 | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 | 0 | 1 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 0 | 0 | Tr | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.6 | 0.1 | 1.2 | 0.1 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0 | 0.1 | Tr |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0.1 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.2 | 0.06 | 0.41 | 0.08 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.08 | 0.04 | 0.04 | 0.02 |
ナイアシン | mg/100 g | 1.1 | 1.6 | 6.3 | 1.2 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.11 | 0.14 | 0.45 | 0.12 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 30 | 9 | 27 | 12 |
パントテン酸 | mg/100 g | 1.29 | 0.46 | 1.37 | 0.66 |
ビオチン | µg/100 g | 21.7 | 2.6 | 6 | 1.4 |
ビタミンC | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - |
備考 | 別名: オート、オーツ | 歩留り: 玄皮麦45~55 %、玄裸麦55~65 % | うるち米 | うるち米歩留り: 90~91 % |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
オートミールの効果・効能
オートミールに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
食物繊維:腸内環境を改善
オートミールには、食物繊維が玄米の3倍以上、白米の20倍近く含まれています。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれており、腸内環境改善にうってつけです。
水溶性食物繊維は水に溶けるとゲル状になり、便を柔らかくして便秘の予防・改善に効果を発揮します。
不溶性食物繊維は水に溶けず、便のかさを増やして腸のぜん動運動を促すことで、消化吸収や便通を改善します。
鉄:貧血予防
オートミールには、玄米の約2倍、白米の約5倍の鉄が含まれています。
鉄は、血液中のヘモグロビンの一部となって全身に酸素を運ぶという重要な働きを持っており、不足すると鉄欠乏性貧血による疲れ・だるさ・頭痛・眠気などの症状に繋がります。
また酸素を運ぶだけでなく、酸素を利用したエネルギーの代謝サイクル、呼吸・DNAの合成と修復・異物の代謝など、細胞内でのエネルギー代謝にも関わっています。
特に酸素は脳のエネルギーとなるブドウ糖を代謝するのに必要なため、酸素の供給が不足すると脳が正常に働きにくくなり、めまいや頭痛、眠気といった症状が現れてしまいます。
カルシウム:骨の健康維持、抗ストレス
玄米の5倍、白米の10倍近くのカルシウムが含まれています。
カルシウムは、骨や歯の形成に大きく関わる人体に必須のミネラルのひとつです。
体重の1~2%の量(成人でおよそ1kg)が体内に存在していて、人間の身体にもっとも多く含まれるミネラルでもあります。
十分なカルシウムの摂取は、骨量を維持することに繋がるとともに、骨粗しょう症やそれを原因とする骨折の予防につながります。
ビタミンB1:疲労回復
オートミールには、押し麦や白米の2~3倍のビタミンB1が含まれています。
ビタミンB1はブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素であり、疲労回復のビタミンとも呼ばれます。
ビタミンB群は、糖質・脂質・タンパク質の代謝をサポートするために必須の栄養素です。そんなビタミンB群のなかでも、特に糖質の代謝を助ける補酵素として働くのがビタミンB1です。
摂取した糖質がエネルギーとして無駄なく変換されるためにはビタミンB1が必須であり、糖質が十分にエネルギーに変換されることで疲労回復をサポートするほか、消化不良の改善などにも繋がります。
ビタミンB1が十分に摂取されると糖質の代謝が促進され、糖質を主要なエネルギー源とする神経や脳の働きを正常に維持することができます。
低GI:ダイエットに効果的
オートミールは、代表的な低GI食品のひとつでもあります。
GIはグライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、GI値が低いほど食後の血糖値が上昇しにくいことを示しています。
オートミールのような低GI食品は、肥満・メタボリックシンドロームの予防・改善に効果があると考えられています。
オートミールの調理方法
オートミールは水分を加えてふやかして食べるのが一般的で、欧米では牛乳をかけたものを電子レンジなどで加熱して食されます。
ここでは、ひと手間加えてよりおいしく、より栄養を豊富にオートミールを食べるための方法を解説します。
ヨーグルト+はちみつでスイーツ風
牛乳の代わりにヨーグルトをかけて、はちみつやシナモンで味付けをし、ブルーベリー・バナナ・イチゴなどのフルーツをあしらえば、スイーツ風のオートミールが味わえます。
フルーツを加えることで、オートミールだけでは補えないビタミン類を補給することができます。
ただし、カロリー制限中の方は甘味を加えすぎないよう注意しましょう。
お茶漬け風
洋風の朝食のイメージが強いオートミールですが、和風だしにもよくマッチするので、粥やお茶漬けのようにして、米の代用として使うことも十分に可能です。
オートミールを食べる際の注意点
オートミールは健康に良いといっても、食べ過ぎれば当然カロリー過多になってしまいます。
過度な味付けも同様で、甘い味付けでも塩辛い味付けでも、濃い味付けに慣れてしまわないよう注意しましょう。
また暑い季節に、温かいオートミールを食べづらいからと前日ふやかしたものを冷蔵庫で冷やして食べる「オーバーナイトオートミール」という食べ方もありますが、冷えたものを食べ過ぎると内臓の働きが低下してしまいます。
夏バテなどで食が進まないときのアシストとして利用する程度にとどめ、普段の食事は温かいものを食べるようにしましょう。
オートミールの保存方法
オートミールは乾燥した穀類なので、一般的な食品と比べると長期保存がききやすい食品です。しかし、保存場所を誤ればすぐに劣化してしまいます。
オートミールの保管に向いている場所は、高温多湿や直射日光を避けた冷暗所です。白米と同じく、容器に虫が混入する可能性があるため、密閉容器でしっかり封をすることも忘れずに。
セールなどで大容量のオートミールを購入し、数ヵ月以内に食べ切ることが困難な場合には、冷凍保存することも可能です。
キャニスターなどの密閉容器に入れて冷凍保存すれば、長期間劣化を防ぐことができます。