葉酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
3964views
葉酸の基本情報、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
葉酸とは
葉酸とは、食品に含まれる天然の葉酸塩や、サプリメントや葉酸添加食品に使用される葉酸の総称です。
水溶性ビタミンで、エネルギーの代謝を促進するビタミンB群のひとつでもあり、ビタミンM、ビタミンB9、プテロイルグルタミン酸とも呼ばれます。
1914年にほうれん草の葉から発見されたため、ラテン語で「葉」を意味する「folium」から「folic acid=葉酸」と名付けられました。
名前の通り、植物の葉に比較的多く含まれる栄養素で、ビタミンB12とともに赤血球を作ることから「造血のビタミン」と呼ばれます。
子どもの発育に欠かせないことから、特に妊娠初期から授乳期に意識して摂取したいビタミンのひとつです。
重要なビタミンであることから、アメリカでは1998年に穀類に葉酸を添加して販売することが義務付けられました。
その後、葉酸添加プログラムの動きは世界へ広がっていますが、2020年現在、日本には葉酸添加義務はまだありません。
葉酸の効果・働き
葉酸の持つ効果・効能・働きについて解説します。
胎児の発育リスクを予防する
葉酸を十分に摂取すると、DNAの形成に関わる重要な物質SAM(S-アデノシルメチオン)が増えることで、神経管閉鎖障害などの胎児の発育リスクを予防します。
妊娠前から葉酸を多めに摂取することが推奨されているのは、神経管閉鎖が妊娠初期に起こるためです。
発育リスク予防のためには妊娠後に摂取し始めても遅いことから、妊娠を控えた女性は妊娠前から、サプリメントなどによって十分に葉酸を摂取することが推奨されます。
心不全・心筋梗塞・脳梗塞・認知症のリスクを予防
葉酸は、心不全・心筋梗塞・脳梗塞などさまざまな病気・障害のリスクとなるホモシステインの代謝に関わっており、同じくホモシステインの代謝を促すビタミンB6、ビタミンB12などとともに病気や障害のリスクを予防します。
葉酸が不足・欠乏すると起こる症状
葉酸が欠乏すると、巨赤芽球性貧血を引き起こします。
巨赤芽球性貧血とは、血液細胞が分裂する回数が減り、赤血球1つあたりのサイズが大きくなる代わりに数が少なくなってしまう貧血のことです。
この状態になると、十分に血液が酸素を運搬することができず、疲労・虚弱・息切れなどの症状を引き起こします。この貧血は、葉酸とともに造血のビタミンであるビタミンB12の欠乏症でも同様です。
また妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の先天性異常のリスクが高くなることが分かっており、先述したアメリカでの葉酸添加プログラムでは、新生児の神経管欠損(NTD)の罹患率が有意に減少しました。
その他にも、血液中の葉酸が不足するとホモシステイン濃度が高まることにより、心不全・心筋梗塞・脳梗塞といった心血管疾患のリスクが高まります。
さらに葉酸は脳の発達と機能にも必須の栄養素であることから、加齢に伴って発生する認知機能障害にも関与します。
葉酸が不足・欠乏する原因と対策
葉酸が不足・欠乏する原因として最も多いのは、食事による葉酸塩摂取の不足です。
その他には、アルコールの摂取や喫煙も欠乏の原因となり得ます。
特に妊娠中のアルコール摂取や喫煙は、胎児へ葉酸を届けるのに支障を生じさせるという研究結果もあり、注意が必要です。
葉酸を過剰摂取すると起こる症状
葉酸の過剰摂取で懸念されるのは、サプリメントなどの合成された葉酸の摂取についてのみであり、食品に含まれる天然の葉酸塩摂取については悪影響を心配する必要はまずありません。
またサプリメントなどの合成された葉酸の摂取に関しても、そのものの副作用としては消化不良や不眠などが見られた報告がある程度で、それについても本当に葉酸によるものかどうかははっきりと確認されていないほどです。
ただし、葉酸を過剰に摂取すると、同じく造血のビタミンとして知られるビタミンB12欠乏の発見が遅れる可能性があります。
ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血と、葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血は、症状だけでは見分けがつきません。
そのため葉酸の過剰摂取によって巨赤芽球性貧血を治療すると、ビタミンB12欠乏が治されないままになってしまい、神経性疾患などが進行してしまう恐れがあるのです。
ある程度の葉酸を摂取していても貧血になってしまうような場合には、葉酸をさらに摂取するのではなく、ビタミンB12の欠乏などを疑った方がよいかもしれません。
ビタミンB12欠乏症は妊娠可能な年齢の女性では非常に稀な症状ですが、高齢者ではビタミンB12の欠乏リスクが高まるため、1日の耐容上限量である1000μg(1mg)をしっかり守ることが大切です。
葉酸の1日の摂取目安量
葉酸の1日の摂取目安量は、成人男性・成人女性ともに200μgですが、食品からの摂取については過剰摂取の心配はありませんので、ぜひ推奨量である240μgを目指したいところです。
日本人の食事摂取基準(2020 年版)では、妊娠を計画している女性(いわゆる妊活中の女性)、および妊娠初期の妊婦は、表で示す推奨量に加えて、強化食品やサプリメントなどによって400µg/日の葉酸を摂取することを推奨しています。
これは、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のためです。
成人の葉酸摂取推奨量を満たすには、焼きブロッコリーおよそ50g、鶏レバーでおよそ20g弱の摂取が必要になります。
葉酸の食事摂取基準(μg/日)※1
性 別 | 男 性 | 女 性 | ||||||
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 2 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 2 |
0 ~ 5 (月) | ─ | ─ | 40 | ─ | ─ | ─ | 40 | ─ |
6 ~11(月) | ─ | ─ | 60 | ─ | ─ | ─ | 60 | ─ |
1 ~ 2 (歳) | 80 | 90 | ─ | 200 | 90 | 90 | ─ | 200 |
3 ~ 5 (歳) | 90 | 110 | ─ | 300 | 90 | 110 | ─ | 300 |
6 ~ 7 (歳) | 110 | 140 | ─ | 400 | 110 | 140 | ─ | 400 |
8 ~ 9 (歳) | 130 | 160 | ─ | 500 | 130 | 160 | ─ | 500 |
10~11(歳) | 160 | 190 | ─ | 700 | 160 | 190 | ─ | 700 |
12~14(歳) | 200 | 240 | ─ | 900 | 200 | 240 | ─ | 900 |
15~17(歳) | 220 | 240 | ─ | 900 | 200 | 240 | ─ | 900 |
18~29(歳) | 200 | 240 | ─ | 900 | 200 | 240 | ─ | 900 |
30~49(歳) | 200 | 240 | ─ | 1,000 | 200 | 240 | ─ | 1,000 |
50~64(歳) | 200 | 240 | ─ | 1,000 | 200 | 240 | ─ | 1,000 |
65~74(歳) | 200 | 240 | ─ | 900 | 200 | 240 | ─ | 900 |
75 以上(歳) | 200 | 240 | ─ | 900 | 200 | 240 | ─ | 900 |
妊婦(付加量)3,4 | +200 | +240 | ─ | ─ | ||||
授乳婦(付加量) | +80 | +100 | ─ | ─ |
※2 通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(狭義の葉酸)に適用する。
※3 妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(狭義の葉酸)を 400 µg/日摂取することが望まれる。
※4 付加量は、中期及び後期にのみ設定した。
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)
葉酸を多く含む食品
葉酸を多く含む食べ物を、「全食品ランキング」「肉類ランキング」「野菜ランキング」「果物ランキング」「豆類ランキング」の順で紹介します。
全食品中で葉酸を多く含む食品ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 調味料及び香辛料類/酵母/パン酵母、乾燥 | 3800 |
2 | 調味料及び香辛料類/<その他>/酵母/パン酵母、圧搾 | 1900 |
2 | 藻類/あまのり/焼きのり | 1900 |
4 | 藻類/あまのり/味付けのり | 1600 |
5 | 藻類/いわのり/素干し | 1500 |
6 | 調味料及び香辛料類/パセリ/乾 | 1400 |
7 | 肉類/にわとり/[副生物]/肝臓/生 | 1300 |
7 | し好飲料類/(緑茶類)/せん茶/茶 | 1300 |
9 | 藻類/かわのり/素干し | 1200 |
9 | 藻類/あまのり/ほしのり | 1200 |
9 | し好飲料類/(緑茶類)/抹茶 | 1200 |
全食品の中で葉酸を最も多く含むのはパン酵母ですが、毎日の食事への取り入れやすさから鑑みると、焼きのり・味付けのり・せん茶などの方が優秀です。
毎朝1gの焼きのりか味付けのりを食べるだけでも、およそ16μg、推奨量に対して7%ほどの葉酸を摂取することができます。
葉酸を多く含む肉類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | にわとり/[副生物]/肝臓/生 | 1300 |
2 | うし/[副生物]/肝臓/生 | 1000 |
3 | ぶた/[副生物]/肝臓/生 | 810 |
4 | ぶた/[その他]/スモークレバー | 310 |
5 | うし/[副生物]/じん臓/生 | 250 |
6 | がちょう/フォアグラ/ゆで | 220 |
7 | ぶた/[その他]/レバーペースト | 140 |
8 | ぶた/[副生物]/じん臓/生 | 130 |
9 | いなご/つくだ煮 | 54 |
10 | うし [乳用肥育牛肉] かた 脂身つき 焼き | 50 |
肉類の中では、鶏レバー・牛レバー・豚レバーの順に葉酸を豊富に含んでいます。ただしレバーペーストになるとぐっと含有量が減るため要注意です。
葉酸を多く含む野菜ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | ブロッコリー 花序 焼き | 450 |
2 | きく/菊のり | 370 |
3 | なばな類/和種なばな/花らい・茎、生 | 340 |
3 | ブロッコリー 花序 油いため | 340 |
5 | えだまめ/生 | 320 |
6 | からしな/葉、生 | 310 |
6 | えだまめ/冷凍 | 310 |
8 | えだまめ/ゆで | 260 |
9 | モロヘイヤ/茎葉、生 | 250 |
10 | なばな類/洋種なばな/茎葉、生 | 240 |
10 | めキャベツ/結球葉、生 | 240 |
10 | みずかけな/葉、生 | 240 |
10 | なばな類/洋種なばな/茎葉、ゆで | 240 |
野菜の中で葉酸を最も多く含むのは、ブロッコリーです。続いて枝豆やモロヘイヤ・芽キャベツなどがランクインします。
ちなみに葉酸が発見されたほうれん草は、100gあたり210μgを含んでおり、日ごろから摂取しやすい野菜としてはかなり豊富に含まれていると言える水準です。
なお、葉酸は豆類にも豊富に含まれていて、枝豆にいたってはほうれん草よりも葉酸を豊富に含んでいます。
葉酸を多く含む果物ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | マンゴー/ドライマンゴー | 260 |
2 | ドリアン/生 | 150 |
3 | なつめ/乾 | 140 |
4 | ライチー/生 | 100 |
5 | くこ、実、乾 | 99 |
6 | チェリモヤ/生 | 90 |
6 | いちご/生 | 90 |
8 | パッションフルーツ/果汁、生 | 86 |
9 | アボカド/生 | 84 |
9 | マンゴー/生 | 84 |
果物の中でもっとも葉酸を豊富に含むのはドライマンゴーでした。2位以降は大きく含有量が減り、比較的豊富で手に入れやすいいちごやアボカドは100μg未満です。
葉酸を効率よく摂取する方法
葉酸は水に溶けやすく熱に弱い性質があるため、効率よく摂取するためには、煮汁まで一緒に食べられる調理法を選ぶか、あるいは焼き・油炒めなど調理時間が短く済む方法を選択する必要があります。
なお、葉酸は食品から摂るポリグルタミン葉酸よりも、サプリメントなどから摂るモノグルタミン葉酸の方が利用率が高いため、特に妊娠を控えた女性にはサプリメントによる摂取が推奨されます。
ポリグルタミン葉酸の利用率がおよそ半分ほどであるのに対して、モノグルタミン葉酸の利用率は約85%です。
しかしサプリメントに頼りすぎると葉酸以外の栄養が不足してしまうため、推奨量である240μgは食品から摂取し、残りをサプリメントから摂る、といったバランスが大切になります。
また葉酸はビタミンB2と一緒に摂ることで、よりホモシステイン濃度を効率的に下げることができるという報告も。
さらにビタミンCと一緒に摂ることで、葉酸が胃で分解される割合を減らし、より利用効率を上げられるという報告もあるため、それぞれの栄養素と合わせて摂取することを意識するとよいでしょう。
参考文献
1. Stark KD, Pawlosky RJ, Sokol RJ, Hannigan JH, Salem N, Jr. Maternal smoking is associated with decreased 5-methyltetrahydrofolate in cord plasma. Am J Clin Nutr. 2007;85(3):796-802. (PubMed)
2. Hutson JR, Stade B, Lehotay DC, Collier CP, Kapur BM. Folic acid transport to the human fetus is decreased in pregnancies with chronic alcohol exposure. PLoS One. 2012;7(5):e38057. (PubMed)