タラの栄養と効果効能・調理法・保存法
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タラの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、タラに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
タラとは
タラ(cod)とは、タラ目タラ科に分類される魚の総称です。冷たい水温を好む白身魚で、北海道や東北の沿岸に生息します。タラの原産地は、主に北海道・宮城県・岩手県・青森県です。国内だけでなく、ロシアやアメリカ、アラスカなど寒い地域で水揚げされています。
タラは1年を通して水揚げされますが、旬の時期は11月~1月にかけてです。漢字で「鱈」と書くように、雪の降る冬の時期がとくにおいしいとされています。
似た種類の魚に、銀ダラがあります。「タラ」とつくためタラの仲間だと勘違いされますが、実は銀ダラはカサゴの1種で、まったく違う魚です。
タラの種類
食用として主に流通するのは、スケトウダラ・マダラ・コマイです。見た目と可食部の違いを解説します。
マダラ
マダラは大型のタラの1種で、まだら模様をしていることから名付けられました。
マダラの精巣は白子と呼ばれ、旬の白子は高値で取引されます。マダラの卵巣は、スケトウダラとは呼び名が異なり、「マダラコ」「真子」などと呼ばれ、スケトウダラのタラコよりも、低い価格で流通します。
韓国料理で人気のチャンジャは、マダラの胃袋を使った料理です。日本では、ソテーやムニエルにして食べられます。
スケトウダラ
スケトウダラは、マダラよりも小ぶりなタラの仲間です。2本の縦縞模様が入っている点で、マダラと異なります。
タラコは、スケトウダラの卵巣を塩漬けにしたものです。タラコを唐辛子で漬けたものを明太子と呼びます。一方、精巣はマダラと同様に白子として食べられます。
スケトウダラは、マダラよりも傷みやすいため、すり身にして加工品に使われることの多いタラです。フライにするのにも向いており、イギリスを代表する料理、フィッシュ・アンド・チップスは、スケトウダラの1種を使っています。よい出汁がでるため、鍋や煮込み料理に向いている種類です。
コマイ
コマイもタラの1種ですが、マダラやスケトウダラに比べて、認知度の低い種類です。
見た目はマダラに似ていますが、生で流通することは少なく、主に干物として市販されています。軽くあぶって、マヨネーズ・唐辛子などの調味料をつけ、おつまみとして食べるのがおいしいタラです。
タラに含まれる成分・栄養素
タラ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
焼いたマダラ100gのカロリーは約100kcal、脂質は0.2g。タンパク質は、25.2gも含まれています。低脂質・低カロリーなタラは、ダイエットや筋トレ中のタンパク質補給に役立つ食材です。
食 品 名 | 単位 | すけとうだら 生 | すけとうだら フライ | すけとうだら すり身 | すけとうだら すきみだら | すけとうだら タラこ 生 | すけとうだら タラこ 焼き | すけとうだら からしめんたいこ | まだら 生 | まだら 焼き | まだら しらこ 生 | まだら 塩だら | まだら 干しだら | |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 45 | |
エネルギー | kJ | 304 | 813 | 416 | 700 | 553 | 668 | 511 | 307 | 439 | 253 | 261 | 1271 | |
kcal | 72 | 195 | 98 | 165 | 131 | 158 | 121 | 72 | 103 | 60 | 61 | 299 | ||
水 分 | g | 81.6 | 61.9 | 75.1 | 38.2 | 65.2 | 58.6 | 66.6 | 80.9 | 72.8 | 83.8 | 82.1 | 18.5 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | 14.2 | 16.5 | -13.9 | -32.3 | 21 | -24.2 | - | 14.2 | -19.9 | -7.3 | -12 | -57.8 |
たんぱく質 | g | 17.4 | 19.2 | 17.5 | 40.5 | 24 | 28.3 | 21 | 17.6 | 25.2 | 13.4 | 15.2 | 73.2 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | 0.5 | 11.3 | 0.1 | 0.2 | 2.9 | 3.7 | 2.3 | 0.1 | 0.2 | 0.4 | Tr | 0.6 |
コレステロール | mg | 76 | 89 | 27 | 140 | 350 | 410 | 280 | 58 | 100 | 360 | 60 | 240 | |
脂質 | g | 1 | 11.9 | 0.2 | 0.3 | 4.7 | 6.1 | 3.3 | 0.2 | 0.2 | 0.8 | 0.1 | 0.8 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | -0.1 | 7.2 | - | -0.1 | -0.4 | -0.5 | - | -0.1 | -0.2 | -0.2 | (Tr) | -0.1 |
g | * | |||||||||||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | (Tr) | 6.5 | - | -0.1 | -0.4 | -0.5 | - | -0.1 | -0.2 | -0.2 | (Tr) | -0.1 | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 2.6 | 9.1 | 10.2 | 8.4 | 5.2 | 7 | 4 | 3.5 | 5.5 | 6.6 | 3.2 | 15.7 | |
* | * | * | * | * | * | * | * | * | * | * | ||||
食物繊維総量 | g | 0 | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
糖アルコール | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
炭水化物 | g | 0.1 | 5.7 | 6.6 | 0.1 | 0.4 | 0.5 | 3 | 0.1 | 0.2 | 0.2 | Tr | 0.1 | |
有機酸 | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
灰分 | g | 1.1 | 1.2 | 0.6 | 20.9 | 5.7 | 6.5 | 6.1 | 1.2 | 1.6 | 1.8 | 2.6 | 7.4 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 100 | 140 | 120 | 7400 | 1800 | 2100 | 2200 | 110 | 140 | 110 | 790 | 1500 |
カリウム | mg | 350 | 340 | 130 | 540 | 300 | 340 | 180 | 350 | 480 | 390 | 290 | 1600 | |
カルシウム | mg | 13 | 34 | 7 | 130 | 24 | 27 | 23 | 32 | 48 | 6 | 23 | 80 | |
マグネシウム | mg | 24 | 27 | 21 | 54 | 13 | 15 | 11 | 24 | 33 | 23 | 22 | 89 | |
リン | mg | 180 | 190 | 130 | 340 | 390 | 470 | 290 | 230 | 280 | 430 | 170 | 840 | |
鉄 | mg | 0.2 | 0.4 | 0.1 | 1.9 | 0.6 | 0.7 | 0.7 | 0.2 | 0.4 | 0.2 | 0.3 | 0.1 | |
亜鉛 | mg | 0.5 | 0.7 | 0.3 | 0.1 | 3.1 | 3.8 | 2.7 | 0.5 | 0.9 | 0.7 | 0.4 | 1.8 | |
銅 | mg | 0.03 | 0.05 | 0.03 | 0.09 | 0.08 | 0.1 | 0.08 | 0.04 | 0.05 | 0.03 | 0.02 | 0.16 | |
マンガン | mg | 0 | 0.08 | 0.01 | 0.02 | 0.04 | 0.05 | 0.04 | 0.01 | 0.02 | 0.01 | 0.01 | 0.03 | |
ヨウ素 | μg | 160 | - | - | - | 130 | - | - | 350 | - | - | - | - | |
セレン | μg | 25 | - | - | - | 130 | - | - | 31 | - | - | - | - | |
クロム | μg | 0 | - | - | - | 1 | - | - | 0 | - | - | - | - | |
モリブデン | μg | 0 | - | - | - | Tr | - | - | 0 | - | - | - | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 10 | 18 | 5 | Tr | 24 | 34 | 37 | 10 | 9 | 8 | Tr | Tr |
α|カロテン | μg | 0 | 0 | 0 | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | |
β|カロテン | μg | 0 | 0 | 0 | - | 0 | 0 | 37 | 0 | 0 | 0 | - | - | |
β|クリプトキサンチン | μg | 0 | 1 | - | - | 0 | 0 | 18 | - | - | - | - | - | |
β|カロテン当量 | μg | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 46 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
レチノール活性当量 | μg | 10 | 18 | 5 | (Tr) | 24 | 34 | 41 | 10 | 9 | 8 | (Tr) | (Tr) | |
ビタミンD | μg | 0.5 | 0.4 | 1 | 1 | 1.7 | 1.6 | 1 | 1 | 0.7 | 2 | 3 | 6 | |
α-トコフェロール | mg | 0.9 | 3.2 | 0.6 | 1.1 | 7.1 | 8.1 | 6.5 | 0.8 | 1.3 | 1.8 | 0.7 | 0.3 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 0 | 4.5 | 0 | 0 | Tr | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンK | μg | 0 | 18 | 0 | 0 | Tr | Tr | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンB1 | mg | 0.05 | 0.05 | 0.03 | 0.13 | 0.71 | 0.77 | 0.34 | 0.1 | 0.09 | 0.24 | 0.13 | 0.2 | |
ビタミンB2 | mg | 0.11 | 0.13 | 0.05 | 0.18 | 0.43 | 0.53 | 0.33 | 0.1 | 0.12 | 0.13 | 0.2 | 0.3 | |
ナイアシン | mg | 1.4 | 1.5 | 0.4 | 2.2 | 50 | 57 | 20 | 1.4 | 1.4 | 1.5 | 2 | 4 | |
ナイアシン当量 | mg | 4.4 | 5 | -3.4 | -9.2 | 54 | -62 | -24 | 4.4 | -5.6 | -2.2 | -4.6 | -16 | |
ビタミンB6 | mg | 0.09 | 0.08 | 0.01 | 0.1 | 0.25 | 0.27 | 0.17 | 0.07 | 0.09 | 0.01 | 0.11 | 0.34 | |
ビタミンB12 | μg | 2.9 | 2.5 | 0.6 | 2.5 | 18 | 23 | 11 | 1.3 | 3.9 | 3.1 | 1.4 | 8.6 | |
葉 酸 | μg | 12 | 19 | 4 | 7 | 52 | 50 | 43 | 5 | 7 | 11 | 6 | 22 | |
パントテン酸 | mg | 0.2 | 0.31 | 0.19 | 0.43 | 3.68 | 3.68 | 2.16 | 0.44 | 0.53 | 0.68 | 0.26 | 1.37 | |
ビ オ チ ン | μg | 2.5 | - | - | - | 18 | - | - | 2.5 | - | - | - | - | |
ビタミンC | mg | 1 | Tr | 0 | 0 | 33 | 21 | 76 | Tr | Tr | 2 | Tr | 0 | |
アルコール | g | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0.3 | 0.4 | 0.3 | 18.8 | 4.6 | 5.3 | 5.6 | 0.3 | 0.4 | 0.3 | 2 | 3.8 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
タラの効果・効能
タラに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
タンパク質が筋肉を作る
タラはタンパク質が豊富なため、筋肉増強におすすめの食材です。
タンパク質は、筋肉など身体の形成に欠かせません。成人(18~64歳)に必要な1日のタンパク質推奨量は、男性65g・女性50g(体重1kgあたり1g)です。
スケトウダラのフライ100gには19.2g、焼いたマダラ100gには25.2gものタンパク質が含まれています。
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンDで骨を健康に
ビタミンDは、腸や肝臓におけるカルシウムの吸収を促進するビタミンの1つです。6種類のビタミンDが存在し、そのうちビタミンD3は、タラなどの魚介類に多く含まれます。
骨や歯は、カルシウムの沈着によって作られており、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収量が低下して骨形成異常を起こします。骨粗しょう症や骨折の原因にもなるため、骨の健康に必要な栄養素です。
ビタミンDの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ|NANIWA SUPLI MEDIA
タウリンがコレステロールを低減
タウリンは、タンパク質が分解される途中で生成される栄養素です。魚介類に多い栄養素で、タラにも豊富に含まれています。
体内で胆汁酸と結合したタウリンは、コレステロールを消費する役割をもっています。コレステロールを減らし、心臓・肝臓の機能を高める成分です。高血圧の予防に効果的な栄養素と考えられています。
またタウリンは、母乳にも多く含まれていて、乳児の発育に働きます。体内で合成される栄養素ですが、微量のため、食べ物から摂取することが必要です。
グルタチオンで美容効果を期待
グルタチオンとは、抗酸化物質の1種で、アミノ酸から構成される栄養素です。活性酵素から細胞を守り、体内を健康に保つ働きをしています。
活性酵素が過剰に作られると一部が過酸化脂質へと変化し、体内に蓄積することで、動脈硬化やがん、老化を引き起こすと考えられています。グルタチオンは、活性酵素が健康な細胞へ攻撃するのを防ぐ物質です。
老化を予防するグルタチオンは、美容効果も期待できます。
タラの食べ方
タラの栄養素を損なわない調理方法・食べ方・選び方などを解説します。
タラの選び方
タラは傷みが早い魚のため、より新鮮なものを選びましょう。
新鮮なタラは、身に透明感があり、赤みの入っているほうがより新鮮です。また、タラの皮は光沢があるものを選びます。
鮮度が落ちたタラは、ぬめりが多くなります。パックの中に水がたまっているものは避け、見た目がみずみずしいものを選びましょう。
身が締まったマダラの切り身はソテーで
淡白で身の引き締まったマダラは、バターで焼いてソテーにするのがおすすめです。
味にクセがないので、バターやオリーブオイルで味付けすると、タラの旨味を引き出せます。レモンをかけて、味にアクセントをつけてもおいしく食べられます。
スケトウダラタラはフライがおすすめ
イギリスのフィッシュ・アンド・チップスにも使われるスケトウダラは、フライにするとよいでしょう。サクサクの衣と、ふわふわなタラの身を楽しめます。フライには、タルタルソースをかけるのがおすすめです。
フライの衣に、粉チーズを混ぜてチーズフライにすれば、子どもでも食べやすいでしょう。
白子の食べ方
濃厚な味と、ぷりぷりとした食感が特徴の白子は、旬の時期である冬に流通量が増えます。白く光沢があり、水分がパックに出ていないものを選びましょう。
白子は、一口大にカットし、血筋や余分な脂肪を切り落とします。つぎに塩水で洗ってぬめりをとり、鍋で2~3分茹でます。茹でたあとは、すぐに氷水でしめましょう。
ネギや紅葉卸を乗せ、ポン酢をかけて食べると、白子の食感を楽しめます。
妊娠中にタラを食べるときに知っておきたい知識
厚生労働省は、妊婦がタラを食べても、水銀の影響は少ないと報告しています。
妊娠中の水銀摂取は、胎児に大きな影響を与えるため、水銀含有量の多い魚類は摂取を控えるべきと考えられています。水銀含有量が多い魚類は、キンメダイやマグロ類などです。
一方タラは、水銀含有量が少ないとの検査結果があり、厚生労働省はとくに注意事項の対象にしていません。ただし、タラもリスクがないとは言えませんので、食べすぎには注意し、一般的な食事量を心がけましょう。
タラの生食は寄生虫感染のリスクも
タラは、アニサキスと呼ばれる寄生虫が寄生しているリスクの高い魚です。
アニサキスは、体長2~3cmの寄生虫で、飲み込むと胃に食いつき、激しい腹痛や吐き気を引き起こします。胃に食いついたアニサキスを除去するには、内視鏡を使って物理的に取り除くしかありません。
死んだアニサキスを食べても、症状は現れないため、タラを食べるときは加熱しましょう。
タラの保存方法
タラの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
傷みやすいので下処理してから冷蔵庫へ
タラを冷蔵保存する場合は、切り身に塩を振り、キッチンペーパーで水分を拭き取ります。しっかりと水分を取った切り身をラップに包んで、冷蔵庫へ入れましょう。
下処理するのは、タラの切り身を購入後にパックのまま、冷蔵庫に入れると痛みが早くなるからです。下処理すれば、冷蔵庫でも数日保存できます。
長持ちさせたいなら冷凍保存がおすすめ
タラをより長く保存したいなら、冷凍保存がおすすめです。
ただしそのまま冷凍すると、解凍したときに身が崩れてしまい、栄養が損なわれてしまいます。冷凍保存するときも、塩を振って水分を拭き取ることを忘れないでください。
冷凍したタラは数週間保存でき、解凍の際は自然解凍がおすすめです。全体をゆっくり溶かすすると、栄養素を損なわずに解凍できます。