Book review|『すべての不調は口から始まる』
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今回紹介する書籍は、唾液の作用を分かりやすく解説したことで話題になった、江上一郎作の『すべての不調は口から始まる』をご紹介させていただきます。感染症は口で止めるという触れ込みの通り、口腔のありようが全身の健康状態をいかに決定しているかを理解することが出来る本です。
歯や口臭に悩みがある方だけでなく、健康意識の高い方は必読の一冊です。
書籍情報
書籍名:すべての不調は口から始まる
著書名:江上一郎
出版社:集英社
出版日:2020年5月15日
ページ数:256ページ
すべての不調は口から始まる
この本の目次
第一章 口腔ケアのカギは「唾液力」
第二章 大人の「口腔トレ」をすぐ実践!
第三章 大人のむし歯は痛みが鈍い理由
第四章 大人の口のための「唾液重視歯磨き法」
第五章 唾液活用で口臭ケアを
第六章 歯の黄ばみは唾液で防ぐ -自分でケアする方法
第七章 本当に怖い歯周病の正体 -体と脳を壊す
第八章 新しく健康保険が適用された歯周病、むし歯の治療
この本の要約(ざっくり言うと)
- 口腔のありようが全身の健康状態を決定する。口腔ケアで万病を防ぐことが可能だということがわかってきた。
- 唾液には、口腔をウイルスや細菌、傷害から守る多様な作用がある。
- 歯学的根拠に基づいたセルフケア法、唾液と内臓の働き、全身の健康との関連性などを紹介。
- 口腔ケアの健康に保つためのエクササイズが満載。
この本の必読ポイント
前半は、口腔を健康に保つために大事な「唾液」その役割や作用を、歯科学の理屈に即して解説しています。その中でも特に「腔内フローラ」という「腸内フローラ」と類似の考えを用いて、如何に「腔内フローラ」を健康に保つべきかを解説しています。唾液には多様な作用があります。再石灰化作用(歯の修復)、緩衝作用(酸の中和)、洗浄作用、抗菌作味覚作用、殺菌作用、粘膜保護作用、潤滑作用、嚥下作用、粘膜修復作用、消化作用、消臭作用、排泄作用、などなど。前半をさらっと読むだけでも、唾液のありがたみを知ることが出来ます。唾液の分泌量が減る理由や、減ると引きおこる体の不調なども、ロジカルに書かれていて必読です。口内炎の原因と直し方も理解することが出来ます。
また前半にして最大の見どころは、口腔ケアを健康に保つためのエクササイズの紹介です。「あによべ体操」や「舌回し体操」など8種類のすぐできるエクササイズが紹介されています。このエクササイズは唾液の分泌が改善されるだけでなく、口元が引き締まり、表情が若返ることにもつながりますので、是非習慣化しておきたいエクササイズになっています。
中盤からは、「腔内フローラ」を美しく保つプラークコントロールの実践として、歯磨きの正しい取り組み方が紹介されています。エクササイズに加え、正しい歯磨きのお作法をマスターすれば、美しい「腔内フローラ」を維持することが出来るでしょう。
さらに口臭の種類と原因、その対策方法や、セルフケアも紹介されています。エチケットはもちろんですが、口臭は口腔トラブルの一つです。歯周病や体の不調のサインなので、予防のためにも唾液分泌への意識を高める必要があります。その他、歯の黄ばみの原因解説や、セルフケアでの改善方法等も紹介されています。
後半は歯周病の原因と対策、そして、歯周病の怖さを解説しいます。歯周病は最近による感染症であり歯ぐきの毛細血管に侵入するため、「全身の健康」に悪影響を及ぼします。糖尿病や、心筋梗塞、脳卒中や腎臓病、アルツハイマーや大腸がんなどに始まり、様々な病気と関連性があります。
特に糖尿病と歯周病の関連性は深く、糖尿病予防は、歯周病予防からと言われるほどです。糖尿病とその予備軍は厚生労働省の発表では2000万人と言われていますが、高齢化社会の今後は4000万とも言われています。プラークコントロールすることで、事前に予防することの大切さが記載されています。
この本のキラーフレーズ
ここではこの本を読んで、メモに残したい箇所、座右の銘にしたいほどの名言、刺激的で誰かに教えてあげたい内容を引用します。あなたの明日からの行動を変えるキッカケとなる名フレーズがあるかもしれません。
“口腔を清潔にして、唾液の分泌を促すこと”
“口腔の情報は全身に伝わり、全身の情報は口腔に伝わる”
“口をケアすれば全身の病気も防げる”
“唾液には口の中を洗う「洗浄作用」と、乾燥から守る「保湿作用」がある”
“唾液には「抗菌・殺菌作用」があるだ”
“口呼吸はNG、鼻呼吸を”
“歯磨きの目的は、食べかすより、歯垢を取り除こと”
“歯磨きのゴールデンタイムは、「寝る前」次に「起床後すぐ」”
“日本人が歯を失う原因の第一位は、歯周病”
“糖尿病予防は、歯周病予防から”