スピルリナの栄養と効果効能・調理法・保存法
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スピルリナの原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品であるクロレラとの違い、スピルリナに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
スピルリナとは
スピルリナ(spirulina)とは、藻の一種です。全長は約0.3mm~0.5mmと小さく、らせん状にねじれた形をしています。名前の由来は、「ねじれ」や「らせん状」を意味するラテン語の「Spira」から。
誕生したのはじつに35億年前で、地球に生命が生まれた頃から存在している生物です。古くから姿形がほとんど変わらないことから、「生きる化石」とも呼ばれています。
生息地域は水温が30~35度の強アルカリ性、および高塩分の湖です。今では消滅寸前であるチャド共和国のチャド湖に自生していたのが始まりと言われています。
ほかには同国のヨアン湖やエチオピアのチルチェ湖、メキシコのテスココ湖などが挙げられますが、条件を満たす湖は多くありません。日本では沖縄県をはじめとし、静岡県などで管理栽培されています。
スピルリナは乾燥させて粉末や錠剤(タブレット)などのサプリメントとして販売されることが多い食品です。現在では生食できるタイプもあり、その作用に注目が集まっています。
また、スピルリナに含まれるフィコシアニンは天然色素として有名です。鮮やかな青色はソーダアイスをはじめとして、飲料水やグミなどの着色料として活躍しています。
スピルリナとクロレラの違いとは
スピルリナと混同されやすい食品として、クロレラ(chlorella)があります。スピルリナは藍藻類、クロレラは緑藻類に属し、いくつか違いがありますがひとつは大きさでしょう。
クロレラはスピルリナよりさらに小さく、約0.002~0.01mmの球体です。収穫のしやすさにも影響を及ぼし、スピルリナはろ過法により大量生産ができます。
さらにクロレラに比べ、スピルリナは吸収率が高いことも特徴です。これには細胞壁の違いが関係しており、スピルリナの細胞壁は薄く柔らかいため吸収しやすいと考えられています。
スピルリナの品種・種類
スピルリナには、複数の品種はありません。スピルリナは原核生物のため、交配による品種改良ができないためです。
藻類でありながら、細菌に近い原核生物に分類されるスピルリナは非常に不思議な生命体と言えるでしょう。
スピルリナに含まれる成分・栄養素
スピルリナ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
スピルリナは炭水化物をはじめとし、ビタミン類、タンパク質、ミネラル、脂質の5大栄養素を含有しています。栄養価の高さからスーパーフードとして有名です。
ビタミン類ならビタミンC、ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸、葉酸。ミネラルなら鉄分やカリウム、カルシウムなどが含まれ、栄養素の多さも飛びぬけています。
さらにロイシンやトリプトファン、フェニルアラニンなどの必須アミノ酸も豊富です。さまざまな成分のバランスがよく、現代人に不足しがちな栄養素を一気に補える注目の食材と言えます。
名前 | 単位 | スピルリナ、生 | スピルリナ、乾燥 |
水 | g | 90.67 | 4.68 |
エネルギー | kcal | 26 | 290 |
エネルギー | kJ | 109 | 1213 |
タンパク質 | g | 5.92 | 57.47 |
総脂質(脂肪) | g | 0.39 | 7.72 |
灰 | g | 0.6 | 6.23 |
炭水化物、違いによる | g | 2.42 | 23.9 |
食物繊維 | g | 0.4 | 3.6 |
糖、NLEAを含む合計 | g | 0.3 | 3.1 |
カルシウム、Ca | mg | 12 | 120 |
鉄、鉄 | mg | 2.79 | 28.5 |
マグネシウム、Mg | mg | 19 | 195 |
リン、P | mg | 11 | 118 |
カリウム、K | mg | 127 | 1363 |
ナトリウム、Na | mg | 98 | 1048 |
亜鉛、亜鉛 | mg | 0.2 | 2 |
銅、銅 | mg | 0.597 | 6.1 |
マンガン、マンガン | mg | 0.186 | 1.9 |
セレン、セリウム | µg | 0.7 | 7.2 |
ビタミンC、総アスコルビン酸 | mg | 0.9 | 10.1 |
チアミン | mg | 0.222 | 2.38 |
リボフラビン | mg | 0.342 | 3.67 |
ナイアシン | mg | 1.196 | 12.82 |
パントテン酸 | mg | 0.325 | 3.48 |
ビタミンB-6 | mg | 0.034 | 0.364 |
葉酸、合計 | µg | 9 | 94 |
葉酸 | µg | 0 | 0 |
葉酸、食品 | µg | 9 | 94 |
葉酸、DFE | µg | 9 | 94 |
コリン、合計 | mg | 6.5 | 66 |
ビタミンB-12 | µg | 0 | 0 |
ビタミンB-12を追加 | µg | - | 0 |
ビタミンA、RAE | µg | 3 | 29 |
レチノール | µg | 0 | 0 |
カロチン、ベータ | µg | 33 | 342 |
カロチン、アルファ | µg | 0 | 0 |
クリプトキサンチン、ベータ | µg | 0 | 0 |
ビタミンA、IU | IU | 56 | 570 |
リコピン | µg | 0 | 0 |
ルテイン+ゼアキサンチン | µg | 0 | 0 |
ビタミンE(アルファ-トコフェロール) | mg | 0.49 | 5 |
ビタミンE、追加 | mg | - | 0 |
ビタミンD(D2 + D3)、国際単位 | IU | 0 | 0 |
ビタミンD(D2 + D3) | µg | 0 | 0 |
ビタミンK(フィロキノン) | µg | 2.5 | 25.5 |
脂肪酸、総飽和 | g | 0.135 | 2.65 |
4:0 | g | - | 0 |
6:0 | g | - | 0 |
8:0 | g | - | 0 |
10:0 | g | - | 0 |
12:0 | g | - | 0 |
14:0 | g | 0.004 | 0.075 |
16:0 | g | 0.127 | 2.496 |
18:0 | g | 0.004 | 0.077 |
脂肪酸、総モノ不飽和 | g | 0.034 | 0.675 |
16:1 | g | 0.017 | 0.328 |
18:1 | g | 0.018 | 0.347 |
20:1 | g | - | 0 |
22:1 | g | - | 0 |
脂肪酸、総多価不飽和 | g | 0.106 | 2.08 |
18:2 | g | 0.064 | 1.254 |
18:3 | g | 0.042 | 0.823 |
18:4 | g | - | 0 |
20:4 | g | - | 0 |
20:5 n-3(EPA) | g | - | 0 |
22:5 n-3(DPA) | g | - | 0 |
22:6 n-3(DHA) | g | - | 0 |
脂肪酸、総トランス | g | 0 | 0 |
コレステロール | mg | 0 | 0 |
トリプトファン | g | 0.096 | 0.929 |
トレオニン | g | 0.306 | 2.97 |
イソロイシン | g | 0.331 | 3.209 |
ロイシン | g | 0.509 | 4.947 |
リジン | g | 0.312 | 3.025 |
メチオニン | g | 0.118 | 1.149 |
シスチン | g | 0.068 | 0.662 |
フェニルアラニン | g | 0.286 | 2.777 |
チロシン | g | 0.266 | 2.584 |
バリン | g | 0.362 | 3.512 |
アルギニン | g | 0.427 | 4.147 |
ヒスチジン | g | 0.112 | 1.085 |
アラニン | g | 0.465 | 4.515 |
アスパラギン酸 | g | 0.597 | 5.793 |
グルタミン酸 | g | 0.864 | 8.386 |
グリシン | g | 0.319 | 3.099 |
プロリン | g | 0.245 | 2.382 |
セリン | g | 0.309 | 2.998 |
アルコール、エチル | g | 0 | 0 |
カフェイン | mg | 0 | 0 |
テオブロミン | mg | 0 | 0 |
スピルリナの効果・効能
スピルリナに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
豊富なアミノ酸
スピルリナは高タンパク質で、アミノ酸が多く含まれています。アミノ酸20種類のうち18種類を含有しているだけでなく、バランスよく配合されているのが特徴です。
特に、体内で作ることのできない必須アミノ酸は9種類すべて揃っています。
アミノ酸は1種類でも不足すると体内でタンパク質を合成することができません。タンパク質は人間の体の20%を占める要素なので、アミノ酸は生きていくために欠かせない栄養素と言えます。
すぐれた抗酸化作用
スピルリナには、抗酸化物質のβ‐カロテンやクロロフィル、フィコシアニンなどの栄養素が多く含まれています。なかでも抗酸化作用にすぐれているのが、天然色素のひとつであるフィコシアニンです。
2014年の論文では、シュウ酸塩によって酸化ストレスを受けた細胞が、フィコシアニンによって活性酸素の生成が抑制されることがわかりました。
また、フィコシアニンを経口投与したマウスでは空腹時の血糖値低下がみられ、糖尿病予防としての活用も期待されています。
生理活性作用に注目のγ-リノレン酸
必須脂肪酸であるγ-リノレン酸は、不足すると皮膚異常や脱毛を引き起こすと言われています。
γ-リノレン酸の生理的作用はいくつかありますが、特に注目されているのがコレステロールの低下機能です。ラットにγ-リノレン酸を与えたところ、コレステロール合成系律速酵素の活性を低下させたという論文が公表されています。
さらに関心が高まっている作用は、PMS(月経前症候群)の症状緩和です。2000年に発表された論文では混合食用油脂を摂取したグループと比較すると、γ-リノレン酸を摂取したグループは有意に症状が緩和しました。
多様なビタミンがバランスよく
スピルリナは、ビタミン類の多さも特徴です。水溶性ビタミンから脂溶性ビタミンまで多種多様に含まれています。
水溶性ビタミンとして顕著なのはナイアシンです。通常は魚介類や肉類、穀物類に多く含まれる栄養素で、不足すると皮膚炎や神経障害などを引き起こすペラグラを発症する危険性があります。
脂溶性ビタミンとしては、ビタミンAが豊富です。免疫機能や細胞の成長に大きく関わっています。
ミネラルの生理活性機能
スピルリナにはカルシウムをはじめとし、カリウムやマグネシウム、鉄分などのミネラル類も多く含まれています。
骨の形成に役立つカルシウムやマグネシウム、筋肉の収縮に関わりのあるカリウムは、生命活動のうえで欠かせない栄養素です。
特に鉄の割合が多く、貧血を起こしやすい女性にとっては重宝するでしょう。鉄はビタミンCと一緒に摂取すると吸収しやすくなるため、ビタミンを多く含むスピルリナは理想的な食材と言えます。
スピルリナの食べ方
スピルリナの栄養素を損なわない洗い方や調理方法を解説します。
スピルリナの洗い方
スピルリナは粉末状や錠剤など、すでに加工されているので特別洗う必要はありません。そのまま摂取しましょう。
調理する場合は、粉末状のスピルリナが使いやすいでしょう。続いておすすめの食べ方を紹介しますので、参考にしてみてください。
スピルリナのおすすめ調理方法
スピルリナはそのまま食べると、昆布のような藻の味や独特の青臭い香りがあります。苦手な方は、ヨーグルトやスムージーなどと混ぜ合わせるとまろやかになり食べやすくなりますよ。
長時間の加熱は栄養素が損なわれる可能性もありますが、多少の加熱ならば問題ありません。和食と相性がいいので、お味噌汁にといて入れるのもおすすめです。
味や色味の濃いカレーやシチューなどに混ぜ合わせれば、スピルリナの独特の風味も気にならず気軽に摂取できます。
スピルリナを食べる際の注意点
スピルリナは、摂取量に注意が必要です。
2017年にフランス食品環境労働衛生安全庁は、スピルリナのサプリメントを摂取した人の中に、アレルギーや消化器障害、肝障害などの有害作用が出たと報告しています。実際に有害作用が出た際の摂取量は未だ不明です。
成人であれば、1日数グラム程度の低用量であれば健康へのリスクはないと考えられています。ただし、アレルギー体質の方や、フェニルケトン尿症の患者は摂取を控えたほうがよいでしょう。
さらに生育状況によっては、スピルリナは水銀やヒ素などの重金属、またはミクロシスチンの汚染リスクがあります。
関係するのは生産時の水や土壌の質で、消費者は管理をしっかりおこなっていて信頼のおけるメーカーを選定するのが重要です。
スピルリナの保存方法
スピルリナの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
スピルリナの栄養素は熱に弱いため、高温多湿や直射日光は避けて保存するようにしましょう。常温や涼しい場所での保存がおすすめです。
いずれにせよ商品により保存方法や保存日数は異なりますので、メーカーが推奨する方法をしっかり確認するようにしてください。