プラムの栄養と効果効能・調理法・保存法
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プラムの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、プラムに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
プラムとは
プラム(すもも)は、バラ科スモモ属の木になる果実です。プラムは原産地によって大きく「日本すもも」と「西洋すもも」の2つに分類され、「日本すもも」は英語名で「Japanese Plum」と表記するため「プラム」、「西洋すもも」はフランス語で「prune」と表記することから、「プルーン」とも呼ばれています。
プラムもプルーンもどちらもすももに分類されますが、日本国内では一般的に、生食として親しまれるのがプラム(日本すもも)、ドライフルーツやペースト状に加工されるのが「プルーン(西洋すもも)」と使い分けられています。
日本すももの原産地は中国で、観賞用として弥生時代に日本へ伝わりました。江戸時代に入ってから食用として注目されるようになり、明治時代以降に本格的に栽培が始まったとされています。
日本すももが「プラム」と呼ばれている理由として、19世紀後半に日本すももがアメリカに渡り、アメリカの品種と交配した後に逆輸入されたことが挙げられます。
西洋すももの原産地はヨーロッパのコーカサス地方です。ローマ帝国の書物に登場するほど歴史は深く、紀元前にはヨーロッパ各地で栽培されていました。大航海時代にアメリカに渡り、19世紀ごろにカリフォルニアで大量生産されるようになりました。
プラムは品種によって旬の時期が異なります。一般的に早生種は6月中旬ごろから出回りはじめ、8月にかけて最盛期を迎え、晩生種は9月中旬から下旬に出回るものが多い傾向があります。
プラムの品種・種類
プラムは、時期によって店頭に並ぶ品種が変わります。以下では、代表的な品種を紹介します。
早生種
まずは、6月中旬ごろから出回り始める早生種の代表的な品種です。
大石早生(おおいしわせ)
大石早生は、日本でもっとも栽培されているプラムです。サイズは50~70gほどで、頭の部分が少し尖った形をしています。
淡い黄色でやわらかい果肉とほどよい甘酸っぱさが特徴です。ハウス栽培されている大石早生は5月初旬から、露地ものは6月〜7月中旬ごろまで出回ります。
紅りょうぜん
紅りょうぜんは、「大石早生」と「マンモス・カージナル」という品種を交配させて誕生したプラムです。大きめのサイズで100~120gと重量感があり、ハートの形をしています。
果肉は淡い黄色で果皮は全体的に鮮やかな紅紫色。強い甘み、たっぷりの果汁、やわらかい果肉が特徴です。旬は7月中旬から下旬にかけて。主に山形県や福島県で栽培されています。
中生種
続いて、7月ごろから旬を迎える中生種の代表的な品種です。
サンタローザ
サンタローザは、アメリカ生まれのプラムで、日本でも人気の品種です。1個当たりの重量は100gほどで、熟すと赤色の果肉になります。果肉は黄色でしまっており、甘みと酸味のバランスが良い品種です。
晩生種
9月中旬から下旬に出回ることの多い晩生種です。
ソルダム
ソルダムは、「大石早生」の次に多く栽培されているプラムです。アメリカで交配されて誕生した日本すももで、明治時代後期から対象時代初期にアメリカより導入されました。
1個当たりの重量は80~150gと重量感があって果実は大きめ。果皮は緑色の部分が多く、ブルーム(果粉)におおわれています。旬は7月中旬ごろです。
太陽
太陽は、山梨県で発見され、全体の半分以上を山梨県で生産されているプラムです。1個当たりの重量は120~150gほどで、鮮やかな紅色〜紫紅色の果皮、しっかりとした果肉、多めの果汁が特徴。ハウスものは6月中旬〜7月中旬、露地ものは8月下旬に収穫されます。
貴陽(きよう)
貴陽は山梨県で育成されるプラムです。1個当たりの重量は平均で200g、大きいものだと300gと大玉で、栽培に手間がかかること・味が良質であることから、高級すももとして扱われています。
果肉は柔らかくジューシーで、強い甘みの中にほのかな酸味があります。旬は8月上旬です。
秋姫
秋姫は、秋田県で発見されたプラムです。形は楕円形や頭が尖ったものなどさまざまで、サイズは大玉で、150g~200gと重量感があります。
果皮は黄色に赤みが入ったような色で、果肉は鮮やかな黄色。糖度が高く、酸味や渋みはほとんど感じられません。9月中旬から末まで出回ります。
プラムに含まれる成分・栄養素
プラム100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | プラム(日本すもも) | プルーン(西洋すもも) |
廃 棄 率 | % | 7 | 5 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 44 | 49 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 184 | 205 |
水 分 | g/100 g | 88.6 | 86.2 |
たんぱく質 | g/100 g | 0.6 | 0.7 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 0.4 | -0.5 |
脂 質 | g/100 g | 1 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | - | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | - | -0.01 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | - | -0.05 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | - | -0.02 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 9.4 | 12.6 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | -10.8 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.4 | 0.9 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1.2 | 1 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.6 | 1.9 |
灰 分 | g/100 g | 0.4 | 0.4 |
ナトリウム | mg/100 g | 1 | 1 |
カリウム | mg/100 g | 150 | 220 |
カルシウム | mg/100 g | 5 | 6 |
マグネシウム | mg/100 g | 5 | 7 |
リン | mg/100 g | 14 | 14 |
鉄 | mg/100 g | 0.2 | 0.2 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.1 | 0.1 |
銅 | mg/100 g | 0.03 | 0.06 |
マンガン | mg/100 g | 0.07 | 0.09 |
ヨウ素 | µg/100 g | 0 | - |
セレン | µg/100 g | 0 | - |
クロム | µg/100 g | 1 | - |
モリブデン | µg/100 g | 1 | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 76 | 450 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 6 | 54 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 79 | 480 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 7 | 40 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.6 | 1.3 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | Tr |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | Tr |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.02 | 0.03 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.02 | 0.03 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.3 | 0.5 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.04 | 0.06 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 37 | 35 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.14 | 0.22 |
ビオチン | µg/100 g | 0.2 | - |
ビタミンC | mg/100 g | 4 | 4 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - |
重量変化率 | % | - | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
プラムの効果・効能
プラムに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
葉酸:貧血予防・胎児の発育リスクを軽減する
プラムには葉酸が多く含まれています。葉酸は「造血のビタミン」と呼ばれ、赤血球を作る働きがあります。
また、DNAの形成に関わる物質SAM(S-アデノシルメチオン)を増やし、神経管閉鎖障害などの胎児の発育リスクを軽減する効果もあり、特に妊娠前・妊娠初期には、葉酸を十分に摂取することが推奨されています。
カリウム:血圧を下げる・むくみを改善する
ミネラルの一種であるカリウムには、細胞の浸透圧を調整したり、水分を保持・排出する働きがあります。
この働きにより、血液を下げて心血管疾患や脳卒中など高血圧が起因となる病気を予防したり、体内の過剰な水分排出してむくみを改善したりする効果が期待できます。
食物繊維:便秘を予防・解消する
プラムは、不溶性と水溶性の食物繊維を豊富に含んでいます。不溶性食物繊維は、胃や腸まで届いて水分を吸収し、便のカサを増やすことで腸のぜん動運動を促します。
また、プラムの果皮にはペクチンという水溶性食物繊維が多く含まれています。ペクチンには腸の働きを正常に整えることで便秘や下痢を改善する効果があります。
クエン酸:疲労回復・食欲増進
プラムの酸味成分であるクエン酸は、運動後などに筋肉に蓄積される乳酸の生成を抑えることで、疲労回復を促す効果があります。
また、クエン酸は酸味によって唾液や胃液の分泌を促し、食欲を増進させる効果もあります。夏バテや疲労による食欲不振に良いでしょう。
ビタミンE:アンチエイジング効果・冷え解消
ビタミンEは強い抗酸化力を有しており、老化を防ぐ「若返りのビタミン」として知られています。
具体的には、ビタミンEを摂取することで、細胞をサビつかせる活性酸素を除去し、動脈硬化やがんといった生活習慣病を予防したり、肌を若々しく保ったりといった効果が期待できます。
また、血行を促進して冷えや頭痛など、血流不良によるトラブルを改善するのにも効果的です。
アントシアニン:疲れ目の改善・眼病予防
アントシアニンはポリフェノールの一種で、プラムの果皮に含まれています。
アントシアニンはブルーベリーに豊富に含まれていることで知られており、目のしょぼつきやぼやけなど疲れ目を改善する、白内障などの眼病を予防する、といった効果があります。
プラムの食べ方
プラムの栄養素を損なわない食べ方や注意点などを解説します。
プラムの食べ方
プラムを生で食べる際は、まず水洗いして汚れやブルーム(果粉)を洗い流しましょう。皮付きのままかぶりつくこともできますが、実の真ん中に種があるので注意してください。
完熟プラムの見極め方
生のプラムは収穫されて間もないと熟成が足りず、酸味が強い場合があります。数日、常温で置いて完熟するまで追熟させましょう。
熟成度の目安としては、果皮のシワが役立ちます。未熟なプラムは、果皮がピンと張っていてぷりっとしています。熟成すると水分が抜けて皮にシワができるので、軽く押すと柔らかさを感じるようになったら食べごろです。
プラムを食べる際の注意点
プラムの皮や皮の周辺の果肉には、ポリフェノールが多く含まれています。そのため果肉だけでなく、皮もいっしょに食べることで、より多くのポリフェノールを摂取することができます。
プラムの保存方法
プラムの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
プラムの保存に適した温度は5〜10℃です。完熟したプラムは新聞紙に包んで乾燥を防ぎ、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。
冷蔵保存での保存期間はおよそ3日です。
冷凍保存
追熟が終わったプラムをすぐに食べきれない場合は、冷凍保存します。
冷凍保存する際は、まずプラムを水洗いしてキッチンペーパーで水気を丁寧に拭き取ります。プラムを薄めの串切りにカットしたら、保存容器に1枚1枚重ならないように並べましょう。
このとき金属製のバットなどを用いれば、プラムを急速に冷凍し、鮮度を保つことができます。凍ったプラムは冷凍用保存袋に入れて、冷凍庫で保存します。冷凍保存の保存期間はおよそ1ヶ月です。
解凍方法
凍ったプラムを解凍するときは、自然解凍します。室温で少しずつ溶かしていきましょう。
冷凍保存すると、解凍した際に実が崩れやすくなります。また、カリウムなど水溶性の栄養素が流れやすくなってしまうため、解凍したプラムはジャムなどにすると良いでしょう。