鶏肉の栄養と効果効能・調理法・保存法
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鶏肉の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、鶏肉に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
鶏肉とは
鶏肉(chiken)は、キジ科の鳥であるニワトリの食肉のこと。牛肉・豚肉と並び、日本でよく食べられる肉のひとつです。関西地方や九州地方では、かしわ(黄鶏)とも呼ばれます。
肉類のなかでは脂質が少なくヘルシーで、健康志向の人から人気が高くダイエット中の食事にも向いています。牛や豚と比較して安価な鶏肉ですが、タンパク質やビタミン類が豊富な栄養価の高い食材でもあります。
鶏肉とたまごの栄養素の違い
ニワトリが産む鶏卵は、たまごとして日々の食卓に登場する機会の多い食材です。たまごは、食物繊維・ビタミンC以外の栄養素を網羅しているため「完全栄養食」と呼ばれることもあるほど栄養価の高い食材です。
ただし、タンパク質やナイアシンなど一部の栄養素の含有量は、たまごより鶏肉のほうが高くなっています。一方で、たまごには鶏肉から摂取することは難しい、眼の健康に作用するルテインなどの成分が含まれています。
栄養バランスに優れたたまごと、タンパク質摂取元として理想的な鶏肉は、片方だけではなくどちらも食べるのが体にとってベストと言えるでしょう。
たまごの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
鶏肉の品種・種類
日本で出回っている鶏肉は「ブロイラー」「地鶏」「銘柄鶏」の3つに大きく分けられます。それぞれの特徴や定義は以下の通りです。
ブロイラー
ブロイラーは、短期間で大きく成長するように改良された食用の品種で、生後数週間で出荷されます。日本で流通している鶏肉の約90%がブロイラーです。若どりとも呼ばれます。
ブロイラーの肉質は、柔らかく食べやすいのが特徴です。
地鶏
地鶏は、在来種の血統が50%以上で、飼育方法や飼育期間の基準をクリアした鶏の総称です。「名古屋コーチン」「比内地鶏」「さつま地鶏」などのブランドが有名です。
地鶏は、鶏肉のなかで最もグレードの高い種類で、適度な歯応えや深い風味が楽しめます。
銘柄鶏
銘柄鶏は、良質なエサを与えたり飼育期間を長くするなど、味を良くするために飼育方法を工夫した種類のこと。
地鶏のような明確な定義はありませんが、ブロイラーより高価でブランド力があります。「南部どり」「大山どり」「赤鶏さつま」などが、銘柄鶏のよく知られた品種です。
鶏肉の部位
鶏肉の主な部位とそれぞれの特徴は以下の通りです。
鶏肉の部位 | 特徴 |
むね肉 | むね肉は、胸の部分の肉です。脂質が少なく、あっさりした淡白な味わいですが、旨味成分のイノシン酸が豊富に含まれています。 |
もも肉 | もも肉は、脚の付け根の部分の肉です。程よい歯応えとコクがあります。遊離アミノ酸やタウリンを多く含んでいます。 |
ささみ | ささみは、むね肉の一部で肋骨に沿って付いている部位です。特に脂質が少なくカロリーが低いため、ダイエット食に向いています。 |
手羽 | 手羽は、翼の部位のことで、根元が手羽元、先端が手羽先と呼ばれます。コラーゲンや脂質が多く、コクのある味わいです。 |
せせり | せせりは、首の筋肉で、脂が多く旨味のある部位です。焼き鳥の具材として人気があります。 |
レバー | レバーは、鶏の肝臓です。鉄・ビタミンA・ビタミンB1・ビタミンB2が豊富な栄養価の高い部位です。 |
鶏肉に含まれる成分・栄養素
鶏肉100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | むね 皮つき 生 | むね 皮なし 生 | もも 皮つき 生 | もも 皮なし 生 | ささ身 生 | もも 皮つき から揚げ | もも 皮なし から揚げ |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 244 | 121 | 253 | 138 | 114 | 313 | 255 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 1021 | 506 | 1059 | 577 | 477 | 1309 | 1068 |
水 分 | g/100 g | 62.6 | 72.8 | 62.9 | 72.3 | 73.2 | 41.2 | 47.1 |
たんぱく質 | g/100 g | 19.5 | 24.4 | 17.3 | 22 | 24.6 | 24.2 | 25.4 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | -15.5 | -19.7 | -17.4 | -18.5 | - | 20 | 20.4 |
脂 質 | g/100 g | 17.2 | 1.9 | 19.1 | 4.8 | 1.1 | 18.1 | 11.4 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 16.5 | 1.5 | 18.3 | 4.2 | 0.8 | 17.2 | 10.5 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 5.19 | 0.4 | 5.67 | 0.99 | 0.23 | 3.26 | 1.62 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 8.2 | 0.62 | 9 | 1.86 | 0.27 | 9.54 | 5.89 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 2.37 | 0.42 | 2.78 | 1.13 | 0.22 | 3.67 | 2.58 |
コレステロール | mg/100 g | 86 | 73 | 90 | 77 | 52 | 110 | 100 |
炭水化物 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 13.3 | 12.7 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | - | - | - | - | 14.3 | 14.7 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.2 | 0.2 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.6 | 0.7 |
食物繊維総量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.8 | 0.9 |
灰 分 | g/100 g | 0.7 | 0.9 | 0.7 | 0.9 | 1.1 | 3.2 | 3.4 |
ナトリウム | mg/100 g | 31 | 34 | 42 | 50 | 40 | 990 | 1100 |
カリウム | mg/100 g | 190 | 210 | 160 | 220 | 280 | 430 | 440 |
カルシウム | mg/100 g | 4 | 5 | 8 | 9 | 8 | 11 | 12 |
マグネシウム | mg/100 g | 20 | 26 | 16 | 21 | 21 | 32 | 34 |
リン | mg/100 g | 120 | 150 | 110 | 150 | 200 | 240 | 250 |
鉄 | mg/100 g | 0.3 | 0.4 | 0.9 | 2.1 | 0.6 | 1 | 1 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.7 | 0.7 | 1.7 | 2.3 | 2.4 | 2.1 | 2.3 |
銅 | mg/100 g | 0.05 | 0.05 | 0.07 | 0.09 | 0.09 | 0.07 | 0.07 |
マンガン | mg/100 g | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.01 | - | 0.17 | 0.18 |
ヨウ素 | µg/100 g | - | - | - | - | - | Tr | Tr |
セレン | µg/100 g | - | - | - | - | - | 25 | 25 |
クロム | µg/100 g | - | - | - | - | - | 1 | 1 |
モリブデン | µg/100 g | - | - | - | - | - | 6 | 6 |
レチノール | µg/100 g | 72 | 50 | 47 | 17 | 9 | 28 | 16 |
α-カロテン | µg/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
β-カロテン | µg/100 g | - | - | - | - | - | 5 | 5 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | - | - | - | - | - | 3 | 4 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | Tr | Tr | Tr | Tr | Tr | 6 | 7 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 72 | 50 | 47 | 17 | 9 | 28 | 17 |
ビタミンD | µg/100 g | 0.1 | 0 | 0.1 | 0 | 0 | 0.2 | 0.2 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 2.5 | 2.2 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | Tr |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0 | 0.1 | 0.1 | 0 | 3.6 | 3 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.1 | 0.1 |
ビタミンK | µg/100 g | 50 | 20 | 62 | 38 | 18 | 45 | 33 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.05 | 0.06 | 0.07 | 0.1 | 0.09 | 0.12 | 0.15 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.08 | 0.1 | 0.23 | 0.31 | 0.12 | 0.23 | 0.25 |
ナイアシン | mg/100 g | 7.9 | 8.4 | 3.8 | 4.1 | 11 | 6 | 6.8 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.35 | 0.47 | 0.17 | 0.22 | 0.66 | 0.21 | 0.23 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0.3 | 0.2 | 0.5 | 0.6 | 0.1 | 0.3 | 0.4 |
葉酸 | µg/100 g | 5 | 5 | 6 | 7 | 7 | 23 | 22 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.97 | 1.13 | 1.57 | 2.15 | 1.68 | 1.19 | 1.11 |
ビオチン | µg/100 g | - | - | - | - | - | 4.8 | 5.6 |
ビタミンC | mg/100 g | 1 | 1 | 1 | 1 | Tr | 2 | 2 |
食塩相当量 | g/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 2.5 | 2.7 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - | - | 65 | 70 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
鶏肉の効果・効能
鶏肉に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
免疫力を高め丈夫な体をつくるタンパク質
タンパク質は、筋肉・内臓・皮膚・髪の毛などを構成する重要な栄養素です。タンパク質が不足すると、免疫力や体力の低下を引き起こします。
人が生きていくうえで欠かせないタンパク質は、食事から摂取する必要があります。良質な動物性タンパク質がたっぷりと含まれる鶏肉は、タンパク質の摂取元として理想的な食材です。
ささみと皮なしむね肉は、鶏肉のなかでも特に多くのタンパク質を含んでいます。筋トレの効率を高めるためにタンパク質を摂りたいときは、高タンパク低脂肪のささみや皮なしむね肉がおすすめです。
ビタミンA(レチノール)が眼の健康を維持
鶏肉に豊富なビタミンAは、眼や皮膚の粘膜の健康維持に必要なビタミンです。ビタミンAを摂取することで、視力低下・ドライアイ・暗いところで眼が見えにくくなる夜盲症などの改善効果が期待できます。
また、ビタミンAは、眼だけでなく喉や鼻の粘膜にも作用するため、免疫力の向上にも役立ちます。
ビタミンAが特に豊富なのはむね肉で、鶏レバーにもビタミンAが多く含まれています。ただし、ビタミンAには体内に蓄積されやすい性質があり、食べ過ぎると過剰症を引き起こす可能性があります。鶏レバーなど、特にビタミンAが豊富な食材の食べ過ぎには気を付けましょう。
メンタルの不調に作用するナイアシン(ビタミンB3)
ナイアシンは、ビタミンB群の一種で神経細胞に作用する栄養素です。幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの減少を抑える効果があり、うつ・不眠・不安など心の不調に効果的です。
ナイアシンを多く含む鶏肉は、気分が落ち込みがちなときにもおすすめの食材です。ナイアシンが特に豊富な部位はささみで、もも肉の約3倍のナイアシンが含まれています。
睡眠の質を高めるトリプトファン
鶏肉のタンパク質中には、必須アミノ酸の一種であるトリプトファンが多く含まれています。
トリプトファンは、精神を安定させる作用のあるセロトニンの材料です。鶏肉からトリプトファンを摂取することで、気分を向上させたり、精神状態を安定させる効果が期待できます。
また、セロトニンは、夜になると睡眠ホルモンのメラトニンになり、睡眠の質を高めて眠りにつきやすくする作用を発揮します。トリプトファンが豊富な鶏肉は、不眠にお悩みの方にもおすすめの食材です。
鶏肉の食べ方
鶏肉の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
ダイエット中に食べるならささみ・皮なしのむね肉
鶏肉は、脂質が少なく淡白でダイエットに適した食材です。特にカロリーが低くダイエット中におすすめなのは、ささみ(100gあたり114kcal)と皮なしのむね肉(100gあたり121kcal)です。
ヘルシーな鶏肉ですが、鶏皮には多くの脂質が含まれているので要注意。低カロリーなむね肉でも、皮付きだと100gあたり244kcaとカロリーが2倍近くになります。摂取カロリーを抑えたいときは、皮なしのむね肉を選ぶか自分で皮を除去するようにしましょう。
脂質が少ないささみやむね肉は、調理方法によってはパサパサとした食感になってしまいます。パサつきがちなささみやむね肉を調理するときは、水に対し5%の砂糖と塩を溶かした「ブライン液」に漬け込んでから火を入れると、保水性がアップしてジューシーな食感に仕上がります。
ビタミンB6を摂取するとタンパク質の利用効率アップ
ビタミンB6は、皮膚や髪の毛を健康にする作用があり、タンパク質からエネルギーを生成するのに役立つ栄養素です。
タンパク質を多く含む鶏肉は、ビタミンB6を含む食材と一緒に食べることで栄養素の吸収効率が高まります。ビタミンB6が豊富な食材は、かつお・まぐろ・牛レバー・バナナ・納豆などです。
カンピロバクター菌による食中毒に注意
生や加熱が十分でない鶏肉を食べると、カンピロバクター食中毒を引き起こす恐れがあります。カンピロバクター菌は、ニワトリやウシなどの腸管に生息している細菌です。
カンピロバクター食中毒になると、下痢・腹痛・発熱などの症状が起こり、まれにギラン・バレー症候群を引き起こすこともあります。
カンピロバクター食中毒の予防には、肉の中心部を75度以上で1分以上加熱することが効果的です。また、生の鶏肉が触れた調理器具や手の消毒を徹底するなど、二次汚染を防ぐ対策も行いましょう。
鶏肉の保存方法
鶏肉の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
水分を多く含む鶏肉は、豚や牛よりも傷みやすい食材です。冷蔵で生の鶏肉を保存できる期間の目安は2~3日ですが、なるべく早く加熱調理するようにしましょう。
冷蔵保存する場合、鶏肉をパックから取り出し、臭みの原因となるドリップや水分をキッチンペーパーなどでふき取ってからラップで包み、冷蔵庫に入れてください。
冷凍保存
鶏肉を長期間保存する場合は、冷凍がおすすめです。鶏肉を冷凍するときは、冷蔵する場合と同じくドリップや水分をしっかりふき取ってから冷凍保存用袋に入れてください。
冷凍の鶏肉は、1ヶ月程度なら問題なく保存できます。空気に触れている部分の多いひき肉は、2週間以内に使い切るのがおすすめです。