ビーツの栄養と効果効能・調理法・保存法
18004views
ビーツの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、ビーツに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ビーツとは
ビーツ(Beet)は、主に根を食用とするヒユ科フダンソウ属の植物で、砂糖の原材料となるてんさい(甜菜)の近縁種です。テーブルビート・ビート・ビートルート・レッドビート・カエンサイ(火焔菜)・ウズマキダイコンなどと呼ばれることもあります。
ビーツの根は丸く、見た目がかぶやラディッシュに似ていますが、かぶはアブラナ科の野菜でありビーツの仲間ではありません。
「食べる輸血」とも呼ばれるビーツには、ミネラルやビタミン、食物繊維などの栄養素が豊富で、アンチエイジング・血流改善・生活習慣病の予防など、さまざまな健康効果が期待されています。
地中海原産のビーツは、日本ではまだ馴染みの薄い野菜ですが、ロシア料理のボルシチの材料とされるなど、欧米ではごく一般的に使われています。近年では栄養価の高さが注目され、北海道や長野県など日本各地でも生産されるようになってきました。
ビーツの旬は6~7月および11~12月ごろです。レトルトパウチや缶詰、冷凍食品などは年間を通して出回っています。
ビーツには赤紫色のほか、黄色・白・ピンクなどさまざまな色の品種があり、断面が渦巻き模様になる種類も存在します。
また、根だけではなくビーツの葉にも食物繊維やビタミンなどの栄養が豊富で、サラダやおひたしなどとして食べることができます。
ビーツに含まれる成分・栄養素
ビーツ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | ビーツ 根 生 | ビーツ 根 ゆで |
廃 棄 率 | % | 10 | 3 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 41 | 44 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 172 | 184 |
水 分 | g/100 g | 87.6 | 86.9 |
たんぱく質 | g/100 g | 1.6 | 1.5 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | -1 | -1 |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.1 | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.02 | -0.02 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.02 | -0.02 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.04 | -0.04 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 9.3 | 10.2 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | -7.3 | -7.1 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.7 | 0.8 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 2 | 2.1 |
食物繊維総量 | g/100 g | 2.7 | 2.9 |
灰 分 | g/100 g | 1.1 | 1 |
ナトリウム | mg/100 g | 30 | 38 |
カリウム | mg/100 g | 460 | 420 |
カルシウム | mg/100 g | 12 | 15 |
マグネシウム | mg/100 g | 18 | 22 |
リン | mg/100 g | 23 | 29 |
鉄 | mg/100 g | 0.4 | 0.4 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.3 | 0.3 |
銅 | mg/100 g | 0.09 | 0.09 |
マンガン | mg/100 g | 0.15 | 0.17 |
ヨウ素 | µg/100 g | - | - |
セレン | µg/100 g | - | - |
クロム | µg/100 g | - | - |
モリブデン | µg/100 g | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.1 | 0.1 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.05 | 0.04 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.05 | 0.04 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.3 | 0.2 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.07 | 0.05 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 110 | 110 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.31 | 0.31 |
ビオチン | µg/100 g | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 5 | 3 |
食塩相当量 | g/100 g | 0.1 | 0.1 |
アルコール | g/100 g | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | 0.3 | 0.3 |
テオブロミン | g/100 g | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - |
重量変化率 | % | - | 94 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ビーツの効果・効能
ビーツに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
アンチエイジングや生活習慣病予防に効果的なベタシアニン
ビーツに含まれる色素成分のベタレインには、ビタミンCよりも強力と言われる抗酸化作用があり、老化を遅らせたり、がん・動脈硬化などの疾患を予防する効果が期待できます。
ベタレインは、植物四大色素のひとつであり、ヒユ科など一部の植物にのみ含まれています。赤色のベタシアニンと黄色のベタキサンチンに分けられますが、特にベタシアニンに強い抗酸化力があることがいくつかの研究で証明されました。
ベタシアニンを始めとする抗酸化物質には、活性酸素の働きを抑え、除去する作用があります。活性酸素は少量であれば体に良い働きをしますが、増えすぎると老化や生活習慣病の原因となります。
過剰な活性酸素を抑制する抗酸化物質を含む食品の摂取は、健康維持のために大切な習慣です。
血行改善効果のある一酸化窒素(NO)
ビーツには、血行に作用する一酸化窒素(NO)の原料となる硝酸塩が含まれています。一酸化窒素には、血管を拡張して血流を促し、血圧を低下させる作用があります。
ビーツに含まれる硝酸塩は、唾液に含まれる口内細菌により亜硝酸塩に変換され、内臓で一酸化窒素となり、血液と共に体の隅々に運ばれます。
一酸化窒素を発生させる硝酸塩を含むビーツには、高血圧や動脈硬化の予防に加え、血行不良による肩こりや冷えの改善効果も見込めます。
葉酸で貧血の予防・改善
ビーツに多く含まれる葉酸は、ビタミンB群の一種で、血液中の赤血球やヘモグロビンの形成に関わることから「血を作るビタミン」とも呼ばれます。鉄やビタミンB12などと合わせて、貧血の予防・改善には欠かせません。
また葉酸には、DNA、RNA、たんぱく質の生合成を促進する作用があり、細胞の分裂にも関わっています。胎児の健康な発育に必要な成分で、妊娠前から妊娠中にかけては特に意識して摂取したい栄養素です。
葉酸が豊富なビーツは、貧血にお悩みの方や、妊娠を考えている女性にもうれしい野菜と言えるでしょう。
高血圧やむくみの改善に効果的なカリウム
ビーツにはミネラル類が豊富で、高血圧やむくみに効果のあるカリウムが特に多く含まれています。
ビーツに含まれるカリウムにはナトリウムの排出を促す働きがあり、体内の塩分濃度を調節します。カリウムの摂取は、塩分の摂りすぎが原因となる高血圧やむくみの予防・改善に効果的です。
カリウムは水に溶けやすいので、多く摂りたいときは煮汁ごと摂取できるスープなどの料理がおすすめです。
ビーツの食べ方
ビーツの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
栄養素を逃さないためには皮ごと加熱がおすすめ
ビーツは、生で食べる場合を除いて、下処理として火を通してから食べます。鍋で茹でる、電子レンジで加熱、オーブンでローストするなどの方法がありますが、いずれの場合も栄養素の流出を防ぐために皮ごと処理するのがポイントです。
加熱してから皮を剥くことで、ビタミン類・ミネラル類など水に溶けだしやすい栄養素の流出を防ぐことができます。
ビーツを食べる際の注意点①:大量摂取によるビーツ尿
ビーツを食べ過ぎると、尿が赤くなる「ビーツ尿」という現象が起こることがあります。
ビーツ尿は、ビーツに含まれる赤い色素成分のベタシアニンが尿に溶けだして起こる現象です。血尿などの病気ではなく体に害はありませんが、気になる場合はビーツを一度に大量に食べることは控えましょう。
ビーツを食べる際の注意点②:シュウ酸に注意
ビーツには、摂りすぎると尿路結石症を引き起こす可能性があるシュウ酸が含まれています。尿酸値が高い方や尿路結石症を経験したことがある方は、ビーツを食べ過ぎないよう気を付けてください。
ビーツに含まれるシュウ酸は水溶性なので、茹でる・水にさらすといった調理方法で減少させることができます。また、シュウ酸には、カルシウムと一緒に摂取すると体に吸収されにくくなる性質があります。
ビーツの保存方法
ビーツの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
ビーツは、新聞紙などに包んで皮ごと冷蔵庫の野菜室で保存してください。気温が低い季節なら常温保存も可能です。根から葉に栄養素が流出してしまうので、葉が付いているものは葉を切り取ってから保存してください。
根は1週間ほど、葉は1~2日以内に食べきりましょう。
冷凍保存
ビーツを冷凍する場合は、一度加熱処理してから凍らせるのがベターです。皮ごと下処理し、皮を剥いてから冷凍すれば3ヶ月程度は日持ちします。
食べやすい大きさにカットしてから冷凍すると、そのまま料理に使えて便利です。解凍する際は、冷蔵庫に入れて自然解凍してください。