マッシュルームの栄養と効果効能・調理法・保存法
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マッシュルームの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、マッシュルームに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
マッシュルームとは
マッシュルームは、ヨーロッパ原産のキノコの一種です。和名はツクリタケ。日本には明治時代に伝わり、大正時代に本格的な栽培が始まりました。
現在の主な生産地は、千葉県・岡山県・山形県など。農林水産省の「地域特産野菜生産状況調査」によれば、千葉県だけで全国収穫量の約40%を占めています。
マッシュルームはほとんどが人工栽培で作られているため、どの季節でも手に入りやすい食品ですが、もっともおいしい旬の時期は秋です。スーパーでは、10月から12月にかけて多く出回ります。
マッシュルームの品種・種類
マッシュルームはカサの色によって種類が分かれます。
ホワイト種
全体が白いマッシュルームは、ホワイト種と呼ばれます。なめらかな表面のカサと、弾力のある食感が特徴です。
味に癖がない分さまざまな料理に活用でき、生でも食べられます。白い見た目を活かして、サラダのトッピングにもぴったりです。
ブラウン種
ブラウン種は、茶色っぽい見た目のマッシュルームです。ホワイト種に比べて日持ちしやすく、肉質は硬め。
香りや風味が強いため、煮込み料理や炒め物に適しています。ただし、生の状態では食べられませんので、必ず加熱するようにしましょう。
マッシュルームに含まれる成分・栄養素
マッシュルーム100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
マッシュルームは、カロリーの低さに反して多くの栄養素を含んでいます。とくに、食物繊維・カリウム・パントテン酸・銅・ビタミンB2などが豊富です。
また、うまみ成分のひとつであるグルタミン酸やグアニル酸が含まれているので、加熱するとだしがよく出ます。
食 品 名 | 単位 | マッシュルーム 生 | マッシュルーム ゆで | マッシュルーム 油いため | マッシュルーム 水煮缶詰 | |
廃 棄 率 | % | 5 | 0 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 62 | 82 | 236 | 76 | |
kcal | 15 | 20 | 57 | 18 | ||
水 分 | g | 93.9 | 91.5 | 86.4 | 92 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | 1.7 | -2.2 | -2.1 | -1.9 |
たんぱく質 | g | 2.9 | 3.8 | 3.6 | 3.4 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | 0.1 | -0.1 | -4.2 | -0.1 |
コレステロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | |
脂質 | g | 0.3 | 0.2 | 4.5 | 0.2 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | 0.1 | -0.2 | -0.2 | -0.2 |
g | * | * | * | |||
利用可能炭水化物(質量計) | g | 0.1 | -0.2 | -0.2 | -0.2 | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 0.2 | 0.3 | 0.9 | 0 | |
* | ||||||
食物繊維総量 | g | 2 | 3.3 | 3.4 | 3.2 | |
糖アルコール | g | 1.3 | 1.8 | 2 | 1.7 | |
炭水化物 | g | 2.1 | 3.7 | 4.5 | 3.3 | |
有機酸 | g | - | - | - | - | |
灰分 | g | 0.8 | 0.8 | 1 | 1.1 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 6 | 6 | 8 | 350 |
カリウム | mg | 350 | 310 | 450 | 85 | |
カルシウム | mg | 3 | 4 | 4 | 8 | |
マグネシウム | mg | 10 | 11 | 12 | 5 | |
リン | mg | 100 | 99 | 120 | 55 | |
鉄 | mg | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 0.8 | |
亜鉛 | mg | 0.4 | 0.6 | 0.5 | 1 | |
銅 | mg | 0.32 | 0.36 | 0.4 | 0.19 | |
マンガン | mg | 0.04 | 0.05 | 0.05 | 0.04 | |
ヨウ素 | μg | 1 | 0 | - | 1 | |
セレン | μg | 14 | 11 | - | 5 | |
クロム | μg | 0 | 0 | - | 0 | |
モリブデン | μg | 2 | 2 | - | 2 | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β|カロテン | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β|カロテン当量 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | |
レチノール活性当量 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンD | μg | 0.3 | 0.5 | 0.8 | 0.4 | |
α-トコフェロール | mg | 0 | 0 | -0.6 | 0 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | 0 | (Tr) | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | -1.3 | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | (Tr) | 0 | |
ビタミンK | μg | 0 | 0 | -5 | 0 | |
ビタミンB1 | mg | 0.06 | 0.05 | 0.08 | 0.03 | |
ビタミンB2 | mg | 0.29 | 0.28 | 0.38 | 0.24 | |
ナイアシン | mg | 3 | 2.7 | 3.8 | 1 | |
ナイアシン当量 | mg | 3.6 | -3.5 | -4.5 | -1.7 | |
ビタミンB6 | mg | 0.11 | 0.08 | 0.12 | 0.01 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | |
葉 酸 | μg | 28 | 19 | 23 | 2 | |
パントテン酸 | mg | 1.54 | 1.43 | 1.67 | 0.11 | |
ビ オ チ ン | μg | 11 | 12 | - | 10 | |
ビタミンC | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | |
アルコール | g | - | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0 | Tr | 0.9 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
マッシュルームの効果・効能
マッシュルームに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
不溶性食物繊維の整腸作用
マッシュルームは食物繊維が豊富です。とくに不溶性食物繊維を多く含んでおり、整腸作用が期待できます。
不溶性食物繊維は保水性が高いため、水分を吸収し腸内で便の体積を増やします。腸のぜん動運動が刺激されることにより、便秘解消が見込めます。
カリウムで高血圧予防
ミネラルの一種であるカリウムは、体内のナトリウム(塩分)を排出する働きがあります。ナトリウムの摂取量が増えると血圧が上がりやすくなるため、カリウムは高血圧症予防に役立つ栄養素です。
生活習慣病を予防する観点からも、塩分の摂り過ぎを調節してくれるカリウムは、積極的に摂取する必要があります。
銅は健康維持に重要
銅の摂取にはさまざまなメリットがあり、そのひとつが貧血予防です。銅はヘモグロビンの合成に必要な補酵素として作用し、身体のすみずみまで酸素を運ぶ働きをサポートします。
そのほか骨の形成を助けたり、体内で発生した活性酸素を除去したりといった、多くの場面で必要になる栄養素です。
ビタミンB2がダイエットに役立つ
ビタミンB群のひとつであるビタミンB2には、摂取した糖質や脂質の代謝を促す作用があります。
ダイエットを成功させるには、体内の代謝が重要です。糖質や脂質がうまくエネルギーに変換されないと、余った分が脂肪として身体に蓄積されてしまいます。
減量中の人は、意識してビタミンB2を摂取すると、効率のよいダイエットが目指せるでしょう。
パントテン酸が身体の機能をサポート
パントテン酸は水溶性ビタミンの一種です。善玉コレステロールを増やしたり、副腎の機能を高めてストレスを緩和したりなど、体内でさまざまな働きを発揮します。
また、補酵素としてタンパク質や脂質などの代謝を促す作用もあり、身体には欠かせない栄養素です。
マッシュルームの食べ方や注意点
マッシュルームの栄養素を損なわない選び方・調理方法・食べ方などを解説します。
新鮮なマッシュルームの選び方
マッシュルームはふっくらとしていてみずみずしいものを選びましょう。カサがきゅっと締まっているものや、軸が太いものも、状態のよいマッシュルームと言えます。
カサが開いているものや、黒く変色しているものは、鮮度が落ちている証拠です。
とくにホワイトマッシュルームを生で食す場合は、よく見比べて新鮮なものを選ぶようにしてください。
マッシュルームは洗わず調理が正解
マッシュルームは、調理前の水洗いが不要です。水に浸けると風味や香りが損なわれてしまうため、ふきんやキッチンペーパーなどで軽く拭く程度にとどめましょう。
どうしても汚れが気になる場合は、固く絞ったふきんで拭いてください。
ホワイト種を生食する際の注意点
ホワイトマッシュルームは、収穫してから3日から4日程度のものが生で食べられます。スーパーで買う際はなるべく新鮮なものを選んで、その日のうちに食べるようにしましょう。
生で食べる場合は、薄くスライスするのがおすすめです。カットした面にレモン汁またはお酢をかけておくと、変色を防げます。
生食は加熱しない分、水溶性のミネラルやビタミンを効率よく摂取できるので、新鮮なホワイトマッシュルームを見かけたら試してみましょう。
加熱する際の注意点
マッシュルームの栄養素をなるべく損なわずに摂取したいときは、調理方法に工夫が必要です。
マッシュルームには水溶性の栄養素が多く含まれるため、加熱すると流れ出てしまいやすいというデメリットがあります。
汁ごと食べられるスープにすれば、溶け出た水溶性の栄養素も余すことなく摂取できるのでおすすめです。
マッシュルームの保存方法
マッシュルームの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
マッシュルームはあまり日持ちしないため、購入後は早めに食べるのがベターです。比較的長持ちするブラウンマッシュルームも、日が経つにつれ風味や香りが損なわれてしまいますので、なるべく早く消費しましょう。
冷蔵保存
マッシュルームを冷蔵保存する場合は、空気に触れないようラップに包むか保存袋に入れます。湿気に弱いため、保存前の水洗いは控えてください。
保存期間の目安は3日から4日程度ですが、おいしさが失われないうちに使い切りましょう。
冷凍保存
マッシュルームは冷凍保存すると長持ちするうえに、旨味が増すのでおすすめです。そのままの状態でもカットする方法でも構いません。スライスした場合はレモン汁をかけると変色を防げます。
保存袋に入れたら、空気をしっかり抜いて冷凍庫へ入れてください。保存期間の目安は1ヶ月程度です。
解凍すると水分が多く出るため、調理するときは凍ったまま加熱しましょう。